賃金の源 [給料袋メッセージ 73]

【賃金の源】
月給袋のメッセージ。

今月は社員のご家族の話題から書き起こし、かつて父がつぶやいた一言の重みを再び実感。

そして仕事をする上での原理原則に思いを致しました。
(通算73号)

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

うららかな春になりました。今年は新入社員を迎えることはありませんでしたが、社員のご家庭でさまざまな話題がありました。
 (中略)

ご家族のお話をお聞きするのは私にとってとても意義深いことです。

朝礼の自分の持ち時間(講話)の折にでも、触れてもらえれば嬉しいものです。

 

さて先日、私の学んでいる経営塾の仲間十数名が全国から我が社に集ってくれました。

その時に私は自分の生い立ち、そして3代目を継いで以来の経営体験をまとめて報告しました。
 

父の病と逝去、安値競争のこと、ツイスターの成功、レーザー導入、リーマンショック後の赤字、そして経営改革、新人の採用と育成、業績の回復など今につながる歴史です。
そのプレゼンの準備をさせていただく中で、先代社長である私の父がかつて言った言葉を思い出しました。

それは私がまだ大学生で、家業に目をくれずに新聞記者を目指していたころのことです。

 

「いずれは会社の後継ぎに」と私のことを考えていた父が、何を考えているかわからない若い私に向かって、ぼそっと言いました。
「こんな小さな会社でもな、社員の家族を入れたら五十人がメシを食っているんやぞ」

 

当時は気ままで能天気な学生だった私でしたが、この父親の言葉はそのときの周りの情景とともに、はっきりと覚えています。
いま会社は社員15人態勢。

ご家族を含めると、その倍以上の方々が坂元鋼材の稼ぐ利益によってご飯を食べています。

あらためて父がかつてつぶやいた言葉の重みを実感します。

だから会社がきっちりと利益を確保することは大前提。そして少しでも多くの賃金を持って帰っていただけるよう、これからも社長として全力を尽くします。 

 

また今回の講演をまとめるに当たって、3年前にこの勉強会が福島県郡山市で行われた時のレポートを久しぶりに読み直してみました。

大震災と原発事故で苦しむ福島県ですが「福島で1,2を争うくらいに元気な社長」が登場されました。

 

株式会社青木商店CEO青木信博氏(当時65)。

イオンなど大型ショッピングセンターで果物ジュース・バーの全国展開を行っておられる社長です。

54歳からこの業態を立ち上げて快進撃。
 

青木氏は新卒採用にあたって学生たちに常にこんな質問をするそうです。
「あなた方が入社して、いただくお給料は誰からもらっていますか」

 

答えは「会社」や「社長」ではない。

「お客様」です。お客様が買ってくださる商品に含まれる利益からお給料が支払われていること、お客様に生かさせていただいていること。

青木氏はそのことを学生たちに伝え続けておられます。

 

この質問には続きがあります。
「では、今まで勉強させてもらった学費。これは誰が払っていますか」

 

この答えも「お父さん」「お母さん」ではありません。
ご両親のお給料ももとをただせば社会からいただいたもの。

学費だけでなく十八歳や二十二歳まで育ててもらったのは、すべて世の中に食べさせてもらったから、育ててもらったから。だから恩返しの気持ちが大事。

 

では、どんなことで世の中に恩返しをするのか。
それが仕事であり事業である――。

久しぶりに福島県で教えてもらった貴重な学びを復習し、感動しました。

いい学びの仲間に恵まれたものだと、改めて感謝しています。
 

さてその意味で、こうして毎日ご飯を食べたり、服を着たり、仕事に専念できたり、勉強したり、自由に過ごせること。

それは私の父がつぶやいたように会社の利益によるものですが、さらにもとをただせば、お客様が支払ってくれたお代金によるものだと、改めて思います。

 

「お客様の方を向いて仕事をすることが、会社を守ること」
「その行動は、お客様の求めるものに合致するか。自分中心、自社中心になっていないか」

 

繁盛している会社が大事にしている原理原則です。

読み返すたびに、反省の気持ちになります。

 

社員のご家族の皆さんの話題をお聞きして、そんなことを考えました。
今月も社業への貢献、ありがとうございます。

 

二〇一五年四月二十四日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

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