事業を上手く出来て50%、ちゃんと承継出来て100% [給料袋メッセージ 187]

【事業を上手く出来て50%、ちゃんと承継出来て100%】

きょうは給料袋メッセージを書きました。
この度、持ち株会社を作ります。

その経緯についてお伝えしました。

父の後を継いで23年目、会社も次の段階に進んだ気がします。
[通算187号]

 

 

 

 

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
 

今月は会社のシステムにかかわる大きな話題です。
先日お伝えさせていただいたように、

 

当社(坂元鋼材株式会社)の株主が変わります。
 

 

現在は私・坂元正三(84%)と親族3人(16%)です。

このたび持ち株会社(ホールディングス=HD)を新設し、

HDが4人から株式を買い取ります。個人株主がなくなり、

株主は法人(HD)1社のみになります(HDの株主は私1人)。
 

 

目的は当社の永続と繁栄をバックアップすることです。

 

 

 

 

 

 

 

■ 自己資本が増えて、抱いた不安

 

 

この構想を考え始めたのは5年前、

そして発端は14年前にさかのぼります。

 

2008年のリーマンショック、そして翌2009年に

会社始まって以来の大赤字を出し、経営が揺らぎました。
 

 

「どんな不況でもビクともしない会社を作りたい!」

という思いから、数々の経営セミナーを受けました。

その一つが木村塾(故・木村勝男会長)でした。

 

BS(バランスシート)を重視した経営で

「しっかり儲けて税金を払って

自己資本(返さなくてよい自分のお金)

を貯めなさい」という教えでした。

 

当時の会社は自己資本5,000万円(自己資本比率10%)。

社員1人当たりでは400万円程度でした。これでは心細い。

 

木村会長の教えは

「返さなくてもよいお金(自己資本)が

会社の中に多ければ多いほど、会社は不況に強くなる。

中小企業は社員1人当たり1,000万円の自己資本を持て!」

でした。

目指しました。

 

経営改革を進めると毎年の利益が蓄積し、

自己資本が増えました。

1億円、2億円、3億円を超えていきました。

社員1人当たりでも1,000万円、

そして2,000万円を超えました。

嬉しかった。

 

60歳で10億円、70歳で20億円、80歳で30億円の

自己資本を作る、とシンプルな目標を持ちました。

 

自己資本が厚いと信用力も高まる。

将来の工場拡大の時に銀行の支援を得やすい。

自己資本を貯めることが最大の経営目標になりました。

 

その一方で、別の不安が頭をよぎりました。

自己資本が貯まると企業価値が高まります。

株価が値上ります。

 

 

自己資本と言ってもキャッシュ(現金)ばかりではない。

子供に相続する時、相続税を払えるのだろうか? 
 

 

 

■ 株式を分散させてはならない

 

 

そんな不安を覚え始めたときに出会ったのが

事業承継専門のコンサルタント・児玉靖彦先生でした。

 

先生は税金とは別の視点から「持ち株会社」

を作ることを勧めました。

それは「株の分散防止」です。

 

当社は私が84%を持っていますから

ほぼ自由に経営が出来ます。

しかし世の中の企業では、

経営者の持ち株比率が小さい例が少なくない。

 

このころ実際に知り合った経営者

(40代、老舗企業5代目)は、

会社の歴史が長いために

株式が創業者一族に散らばっており、

社長である彼の持ち分はわずか数%でした。

 

「株主総会のたびに顔も見たことのない親族から

あれこれ要求される。

経営していても何も面白くない」

と、暗い顔でした。

 

株式は親から子へ、子から孫へ相続され、

そのたびに関係の薄い人(経営責任を持たない人)が

株主として影響力を持つのです。

 

我々のような中小企業・零細企業のオーナー社長は

全責任を負っています。

借入金には個人補償をし、会社が倒産すれば自己破産し、

場合によっては自殺する経営者もいます。

 

命がけで経営しているのが中小企業経営者であり、

24時間・365日、会社に責任を負っています。

 

私はほぼ100%オーナーなので自由をほぼ100%有し、

責任も100%負っています。
 

 

けれどもその5代目の経営者は、

自由は数%しか有していないのに責任は100%負っている

というわけです。

だから浮かない顔なのです。

 

その彼と一緒に受けたセミナーの講師が児玉先生でした。

我々の課題にダイレクトに響く中身でした。
 

 

 

■ 会社は株主の物

 

 

児玉先生の論理はシンプルで、一つ一つが明快でした。
 

 

・ 会社は株主(株主名簿に載っている人)の物。

 社員「のため」、社会「のため」の物であるが

 法的には株主の物。
 

 

・ 経営責任者は1人で2/3以上の株を支配すること。

 分散すると自由な経営ができなくなる。

 経営をしない株主は、経営責任を取らないが

 権利は持っている。
 

 

・ 個人株主には、いつか必ず相続が発生する。

 法人には相続がない(死なない)。

 だから持ち株会社(法人)を株主にする。

 分散防止の安定株主になる。

 

・ 経営者の仕事は「会社を守ること」「社員を守ること」

 そして「家族をもめさせないこと」。
 

 

 

■ HDへ株式を移動する

 

 

坂元鋼材のいまの個人株主(4名)から、

持ち株会社(HD)が坂元鋼材株式を買い取ります。

坂元鋼材の株主は1名(HD)になります。

法人(HD)は死なないから相続がなく、株は分散しません。

 

HDの株主は私1人だけ。

子供のどちらかが後継者と決まった段階で、

その1人にHDの株式を移す。

経営責任を取るものがHDを引き継ぎます。

 

このHDを作るには、大きな税金がかかります。

株主4人は株の売却益に対して約20%が課税されます。

私の分だけで納税額は数千万円になります(!)

 

「そんなに税金を払うのか!」

という驚きもありました。

 

 

しかし、じっくり考えると

税金はいつかどこかで誰かが払うもの。

いま払わなかったとしても、将来の相続の時に

子供たちが払います。

 

ならば、いま自分で払っておいて

将来的にも安定した経営システムを作る方が良い

と判断しました。

 

目先の損得だけを考えないこと。

税金目線(節税目線)だけでは経営判断を誤る。

大きな目的に沿って、適正な納税をして

安定したシステムを作ること。

それが児玉先生から教わった極めて重要な考え方でした。

 

 

■ 相続税の心配は無用

 

 

先生に相談する中で、相続税の不安も消えました。

業績が右肩上がりでも大丈夫。

すべては資金繰りであり、適正な納税を続けて

自己資本を増やして強い経営基盤を作っておけば、

キャッシュはまかなえることもわかりました。

 

過去23年間の経営人生で

会社にそれだけの蓄えをしており、

万が一の時への備えを(とくに保険で)

十分にしていることもわかりました。

 

児玉先生は、こう明言しました。

「究極の節税は経営破綻。

そんなことを望む経営者はいない。

経営者は会社を強くすることを目指すもの。

しっかり税金を払ってしっかり自己資本を増やす、

という坂元社長の経営姿勢はまったく正しく、

心配することはない」

 

「相続税は払えれば何の問題もない」
 

 

「自分の相続税は自分で蓄えておく」
 

 

それが児玉先生の教えです。

株式を分散させず、納税を果たし、

次世代に経営権をつなぎます。

それが私の責任です。

 

 

 

 

 

 

 

■ 株式会社SKZホールディングス、12月27日に設立へ

 

 

新しく設立する持ち株会社の社名は

「株式会社SKZホールディングス」です。

設立日は2022年12月27日。

これは当社(坂元鋼材)の設立日

1952年(昭和27年)12月27日から数えて

ちょうど70年です。

 

祖父母が作った坂元鋼材株式会社の永続と繁栄を

バックアップすることがHDの使命です。

これから新工場の土地を買ったり、

もし他社をM&Aで買収したりする場合も、

この持ち株会社を使います。

 

 

■ 万が一の時の人材を考える

 

 

「もし私に生命の危機が訪れたら」という前提で、

この数年間いろいろ手を打ってきました。

HDはその目玉です。

株式はオーナー家でしっかりと受け継ぎます。
 

 

しかし、それだけでは会社は守れません。

経営する人材(司令塔)が必要です。
 

そのためにも社内から経営できる人材を

輩出することに一歩を踏み出します。

 

 

私が12年間学んでいるアチーブメントの本講座を、

まず幹部社員4人が1月から順次受講します。
 

 

4人は現場や事務所の実務は超優秀です。

しかし経営者としての能力は別に養う必要があります。

まずこの4人が先発として学び、ものの考え方を鍛えます。
 

 

私の万が一の時には、この4人と中上さん(取締役)が

集団指導部として一致団結して会社を回してほしい。
 

 

私の長女が11歳、長男が6歳です。

どちらかが経営者になるとしても20年は先の話です。

それまでに私の身に何かがあれば、幹部が支え合って守る。

そして子供のどちらかが経営するとなると、

その教育係にもなってほしい。

よろしくお願いいたします。
 

 

子供たちのどちらもが「経営しない」という選択を

する可能性もあります。

その時は、それでも会社が続く方法を考えます。
 

 

この私自身が若い時に「工場は継がない」と言って

大阪を出て行った前歴(?)があるのですから。

子供たちの願望を大切にし、

愛情をもって子育てをしていきます。
 

 

 

■ 社外からも強力なバックアップを

 

 

そしてもう1人です。

私が急に不在になった場合、この会社とHD双方の

財務実務を切り盛りする人材が必要です。
 

 

私がいなくても銀行と交渉し、納税を管理し、

キャッシュがきちんとつながるように差配する

専門人材が必要です。

それを立道岳人先生にお願いしました。

 

先生とのお付き合いは14年になります。

2008年に先生がコンサルタントとして独立した直後に

当社の顧問に入ってもらいました。
 

 

くしくもリーマンショックの年でした。

それから会社始まって以来のピンチに瀕しましたが、

立道先生の的確な指導のおかげで乗り切りました。
 

 

今回のHD設立に当たっても、

児玉先生に何度も会っていただき、

その目的や手順を私と二人三脚で確認してもらいました。

これから当社の進む道も完全に理解していただいています。

 

「私の身に何かがあった時は、

先生、あとをよろしくお願いいたします」

とお頼み申し上げました。

 

私と同い年の立道先生は

「そんなことがあってはなりませんが、

万が一の時は誠心誠意サポートいたします」

と明言してくださいました。

 

その時には「社外取締役」として

当社の経営陣に入っていただき、

財務や税務・法務などさまざまな側面から

万全にサポートしていただきます。
 

 

私の死という一大事の時にも

心底から信頼できる方です。

先生のような方に出会えて、幸せです。
 

 

また、今回のHD設立にお世話になった児玉先生も、

もちろん当社をこれからも支えてくださいます。

心強いことです。
 

 

私は29年後の82歳(第100期)を

無事に見届けることを目標に

会社経営をしていきます。
 

 

しかし、その途中で不慮の事態が起こった時には、

社外の信頼できる専門家のサポートの元で、

社内から育った幹部が一致団結して引っ張ってほしい。

そう切に願います。

 

 

 

 

[立道岳人先生と生駒山・宝山寺にて]

 

 

 

■ 事業を上手く出来て50%、ちゃんと承継出来て100%

 

 

14年前のリーマンショックから始まった当社の改革。

さまざまな教えを取り入れて成長を続けて、いま新しい段階に入ります。

 

チャレンジするごとに次の課題が出てきます。

それに正面から向き合って正解を模索する中で、私も会社も鍛えられます。

人生も経営も、修行です。

 

故・木村勝男会長の言葉です。
 

「事業を上手く出来て50%、ちゃんと承継出来て100%」
 

BS(バランスシート)を基に経営戦略を立てることを教えて下さった

木村会長に、今回のホールディングス設立をご報告したい

気持ちでいっぱいです。

 

社員と力を合わせて事業をしっかりと伸ばし、

次世代に確実に承継するシステムを作り上げます。

そして子育てに全力を尽くします。

それがオーナー経営者として私が生きる道です。

 

本年も会社を支えて下さり、ありがとうございました。
 

 

2022年12月23日
坂元鋼材株式会社  代表取締役 坂元正三

 

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