【人間関係がニワトリ、業績はタマゴ】
きょうは23日。給料袋メッセージを書きました。組織の人間関係を破壊する「外的コントロール」について、私自身の過去の反省を込めて書いてみました。
(通算115号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いつも社業への貢献、ありがとうございます。
今月の社内学習会では、人間関係を良くする心理学(選択理論)を皆で学びました。社内の人間関係を良くし続けること、それは業績の向上と並んで私の社長としての2大責務であると、あらためて肝に銘じています。なぜそう思うようになったのか。それを今月は書いてみます。
選択理論の話を少しおさらいします。人を変えようとする「外的コントロール」の話を覚えておられますでしょうか。
「外からの強い刺激を与えれば他人は変えることが出来る」と人は思い込みやすい。そして「自分とは意見が違う」、さらには「自分は正しい」「相手は間違っている」と考えやすいのも人間。そのとき外的コントロール(人間関係破壊の原則)を使ってしまうと、どうなるでしょう。批判したり、責めたり、脅したり、罰したりする。その結果、人間関係にヒビが入り、やがては相手の顔を見るのも苦しくなる。そうなると、そんな人の言うことを、人は本心から聞き入れはしない。
好きな人からの情報は受け取りやすいが、嫌いな人からの情報は受け取らないのが人間というもの。フェイスブックなどのSNSでも、好きな人がアップした記事や写真なら、凡庸なものでも「いいね」をつい押します。でも嫌いな人なら秀逸なものでも無視します。
人は自己評価でしか動かない。納得しないものを本心からやることはない。「相手を変えよう」と思って始めたことなのに、何の意味もないどころか、逆効果。関係が悪くなり、相手を傷つけ、自分も気分が悪い。質の悪い酒を大量に飲んだ翌日のように、いつまでも気持ちの悪さが残ります。外的コントロールを使ったほうも、使われたほうも。
外的コントロールが蔓延した組織では、その雰囲気(水質)は悪くなります。水質の悪い水槽で泳いでいる魚は病気になる。魚を治療しても悪い水質に戻せば、また病気になる。外的コントロールを使うことは、当事者どうしだけでなく、水質全体を濁らせてしまう。会社が水槽なら、魚は社員の皆さんです。
かつては当社も外的コントロールがはびこっていました。荒っぽい言葉づかいも普通でした。社歴5年以上の社員は記憶に残っていますでしょう。暴言どころか暴力すらありました。究極の外的コントロールです。意見の違いを力で支配しようということです。
しかし最大の外的コントローラーは、実はこの私でした。経営者としても人間としても未熟きわまりなかった。採用基準があいまいなまま入社させ、ろくに教育も指導も出来ず、問題が起これば外的コントロール(責めたり、批判したり)で辞めさせる。
退職した社員から慰謝料を請求されたこともありました。本当に情けない話です。そこまで追い詰めていたのが私でした。金銭を手にしたところで不幸感はぬぐえないでしょうし、私もみじめな気持でいっぱいでした。それもアチーブメントで選択理論を学び、外的コントロールの害悪を頭では分かっていたはずの私が、実際は自制できていなかった。
そんな出来損ないの経営者、いや、社員を不幸にする経営者が私でした。
「社長はアチーブメントなる素晴らしい会社で学ばれ、理念を従業員にも実践させていますが、その理念がどういうものか私には理解できません」
退職した社員から頂いた一言です。私自身が一番変わらなければならない、そう思いました。
あれから5年近く。その後に入社してくれた若い社員たちは、かつての職場の濁った水質を知りません。会社が大きく若返り、水質の良くなかった時代の記憶が薄れつつあります。それはとてもいいことです。本当にいいことです。目指していたことです。しかしそれは、数々の痛みを伴った上でこそ実現されてきたもの。
業績を向上させることは簡単ではありませんが、水質を良くするのは、さらに大変です。それは徐々にしか変わりません。
では、もし意見の違いがあればどうするか。外的コントロールではない「人間関係構築の原則」(内的コントロール)を試みましょう。
すなわち――
傾聴する
支援する
励ます
尊敬する
信頼する
受容する
意見の違いがあれば常に交渉する(話し合う)
私もいま、日々それに挑戦しています。コケることが、しょっちゅうあります。正直な話です。
先月、選択理論の3日間集中講座に通うことが出来ました。最も印象的な言葉をご紹介します。
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私たちは「外的コントロール依存症」である。「人間関係構築の原則」(内的コントロール)を本当に身につけるのは一生掛かる、一生の仕事である。
(選択理論心理学会会長・柿谷正期氏)
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私たちは何のために生きているのでしょうか、仕事をしているのでしょうか、毎日会社に来るのでしょうか。日本に300万社以上ある会社の中から、なぜたった14人の坂元鋼材に集うのでしょうか。本当にひらたく言えば「幸せになるため」です。「幸せな職場」をつくるためです。
業績がいいのは、もう当たり前。水質がよく、この仲間と働けることの喜びを実感できる組織であらねばなりません。
いや、これは逆です。人間関係の良い組織が好業績を生みます。かつて外的コントロールが蔓延していた時代は、業績もさほど良くはありませんでした。良好な人間関係からチームワークが生まれ、生産性は何倍にも膨らみます。何よりもこれが、この数年間の高収益を支えるヒミツでした。人間関係がニワトリで、業績がタマゴです。
私たちは日々、業績の向上(黒字の蓄積)に心血を注いでいます。同じように、人間関係の構築(水質の浄化)でも赤字でなく黒字を、なんとしても積み上げてまいりましょう。
日々の取り組みに心から感謝いたします。
2018年2月23日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三