仕事をする喜び = インド人・シンさんとの出会い

この夏、仕事を通じて嬉しい出会いがありました。インド人のお客様が我が社にお見えになりました。京都在住のクルディープ・シンさんという方です。

 

ある日「ホームページを見た」との電話が。カタコトの日本語でした。
木工用の工作機械を自作し、海外に売っておられるとのこと。メールで図面をもらい見積もりをすると、すぐに試作の注文が入りました。

 

実際に会って話してみると、たどたどしい日本語です。そして私の英語も相当にひどいもの。しかし意思疎通に大きな問題はありませんでした。注文や見積り、図面のやり取りにはメールを使っているので確実です。

 

そして、試作が良かったのか、次に量産の注文を頂きました。さらに外注での曲げ加工も入り、我が社の本領が発揮できました。

 

そしてその製品が出来上がると、わざわざ支払いのためだけに来社されました。
「いま置き場がないのでもう少し預かっていてほしい。お金は先に払いに来ました」と、非常に律儀な方です。

 

「京都にもレーザー加工の会社はあるでしょ」と聞いてみると「個人だから」という理由で取引してもらえなかったようです。

 

彼の作った機械がフェイスブックなどパソコン経由で見れます。我が社で切ったレーザー品を使った製品も早速アップしてくれています。自分たちが切ったレーザーが実際に使われているのを見るのは気分のいいものです。
https://www.facebook.com/hybridpantorouter

 

彼は我が社の仕事を気に入っていただいたようで好意的なメッセージをくれました。

 

Nice people, nice place and fantastic customer service. Thanks Sakamoto san to show me around your factory.  

 

《よい人たち、よいところ、素晴らしい顧客サービス。工場を見せてくれてありがとう。》

 

You are so kind person. I really respect you. You were so kind to listen to me and ready to solve my problem in one phone call. Thank you very very much. I am so glad to find you.

 

《あなたがたはとても親切です。尊敬します。私の話を聞いてくれて、電話一本で問題を解決してくれます。ありがとう。あなたに出会えてうれしい。》

 

その頃、業界紙「日本金属通信」さんが取材に来られました。我が社がホームページを更新したことを取り上げて下さるようです。そこで効果があった事例としてシンさんのことを話したところ、そのまま書いてくれました。

 

その記事を彼に渡したところ、次のような丁重なメールが日本語で来ました。こんどは奥様(日本人)の代筆のようです。

 

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坂元様 いつもお世話になりありがとうございます。帰宅後、早速いただいた記事を妻に訳してもらい、読ませていただきました。

 

坂元様のおかげで、私の仕事も大変順調に進んでおります。坂元様に出会えるまで、日本国内での仕事が大変難しく、インドに何度も帰国してマシンの製作を行っておりました。

 

インドでは価格を抑える仕事は出来ますが、仕事のクオリティや正確さという点では、なかなか納得がいかないのが現状です。坂元様は私の予算の範囲内で、期待以上の最高の仕事をして下さってます。本当に感謝の言葉が見つかりません。

 

私ももっともっと頑張ってマーケットを拡大していきたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

 

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ちょっと言葉に出来ないほどの感動を覚えました。仕事をして、これほど素直に喜びの言葉を頂けることは稀です。商売が順調で利益が上がることはもちろんうれしいのですが、それとは別に、自分たちの仕事が直接お役にたっているということを実感するのは、また格別です。

 

私は返信で書きました。「 Your success is our success. 」(あなたの成功が私たちの成功です)。アチーブメントの青木仁志先生から教えられた「パワーパートナー」の考えです。「共通の目的・目標を持ち、その人の成功が自分の成功になる人のこと」です。お客様の成功、幸せ、利益に尽くす会社が最後に選ばれます。

 

彼と何度かお会いして親しくなった頃「私はインド国内でも少数派のシーク教徒です。私たちは独自の文化を持ち、シーク教徒であることに誇りを持っています。インドではシーク教徒出身者の富裕層が多い」と、自らの出自や文化のことを話してくれました。

 

調べてみると、西方イスラムが侵攻してきた時代、彼らが先頭に立って戦ったという歴史的な経緯があるようです。そして社会的に「人の上に立つもの」としての自覚と威厳を兼ね備えた民族のようで、教育レベルが高いといいます。なるほど。私はシンさんとは数度しかあっていないものの、その態度や振る舞いから誇り高き民族の自尊心が感じ取れます。

 

シンさんはその後も継続的に注文をくださいました。ある日のこと、私の不在中に引き取りに来られました。私の代わりに社員の皆さんが出て、彼のカタコトの日本語をキッチリと理解して応対してくれました。その日の夜に、彼からメールをもらいました。

 

Dear Sakamoto san, you have very good management. This is the reason you have very nice and helpful staff. All the people in your company are very honest for their work and they proud what they are doing. This is very good attitude. Please keep it up.

 

《サカモトさん、よい経営をしていますね。なぜなら、あなたの会社にはとても素晴らしく、親切なスタッフがいるからです。あなたの会社の全員が自分の仕事に対して誠実で、自分のしていることに誇りを持っています。これはとても良い態度です。どうぞこれからもこの状態を続けてください。》

 

私たちは毎日、何のために仕事をしているか。

 

経営理念、そして存在意義に通じます。思えば、お客様にこのような気持ちを持っていただくためなのかもしれません。ものづくりの仕事にたずさわって得られるもっともうれしい瞬間と言えます。シンさん、私たちこそあなたに出会えて幸せです。ありがとうございました!