【小さな超一流百年企業を!】
きょうは25日、給料袋のメッセージを書きました。
会社は大きくしないといけないのか、小さくてはダメなのか、何が正しいのか・・・。
ずっと考え続け、実践し続けてきたことから現時点での考えを書きました。
[通算163号]
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いつも社業への貢献、ありがとうございます。
先週の社内学習会では2020年度(第69期)の決算を振り返りました。
業界では「リーマンショックはおろか、バブル崩壊後の30年間で最も厳しい状況」とも言われました。
この大きなうねりの中で、当社の売上高は前年度の81%まで落ち込みました(さらに前々年度に比べると67%)。
期中には単月赤字を連発したものの、通期ではなんとか黒字を確保しました。
11期連続の黒字だったものの経常利益はリーマンショック以後では最も低く、
過去最高だった2年前から7分の1(昨年対比では3分の1)の水準です。
経営者として申し訳なかったのが、年度末の決算賞与を出さなかったことです。
単年度のPL(損益)に連動させて一定水準を上回れば決算賞与として分配していました。これを7年ぶりに見送りました。
■ 景気の波に洗われて
鉄鋼業界は景気の波にとても敏感です。過去、大荒波に幾度も洗われてきました。
オイルショック、円高不況、バブル崩壊、リーマンショック、そして今回の米中貿易摩擦からコロナ禍に至る大波です。
景気が急落するたびに、たくさんの会社が倒産・廃業しました。
当社もリーマンショック直後の2009年度は過去最悪の大赤字。
しかも、売上高を上回る4億円規模の工場投資をした直後という最悪のタイミングでした。
そこから始まったのが現在に至る10年余りの経営改革です。
「景気が悪くてもビクともしない会社にしたい」――。
これが改革の目的でした。
「企業の平均寿命」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
その年に倒産・廃業した企業の継続年数の平均をとると、だいたい20-25年くらいの寿命のようです。
「企業30年説」という言葉もあります。多くの会社はそのくらいで寿命を迎えるようです。
しかし、これでは心もとない。
そこで生活の資を得る社員の立場からすると、20代で入社した会社が50歳ごろに無くなってしまう。
人生で最も稼がねばならぬ年齢で勤め先が消えてしまうことになりかねない。
■ 不景気にビクともしない会社の作り方
「こんな小さな会社でもな、社員の家族を入れたら50人が飯を食っている」――。
これは先代社長だった私の父がかつてつぶやいた言葉です。
私にとってもこの言葉が経営の目的。どんな不景気にもビクともしない会社にしなければならない。
そのために何を目指せばいいのか。
売り上げを上げるだけでいいのか、会社は大きくしなければならないのか。
いったい、何が正しいのか?
この問いに「ズバリ!」の回答をくれたのが木村塾の故・木村勝男会長でした。
「経営していると何が起こるか分からん。地震、津波、リーマンショックみたいなんが来よる。
だから自己資本を貯めろ。BS(バランスシート=貸借対照表)の右下の自己資本。
これは『返さんでええ自分のお金』。これが厚いほど会社はつぶれにくい」
木村会長が教えてくれたBSの見方です。
BSは左側と右側に分かれる。
左側の資産とはお金の「使い途」で、右側の「出どころ」から引っ張ったお金が何か(建物や機械やパソコンなど)に化けている状態。
右側は上下に分かれて、右上の「負債」とは「他人のお金」。
他人、すなわち銀行などからの借り入れだから返す必要がある。
そして右下の「自己資本」が「自分のお金」であり、これは返さなくていい。
これが厚ければ厚いほど経営は安定する。
「そうか!」と私は膝を打ちました。
それまでサッパリ分からなかった決算書でした。
しかし木村会長の解説を聴いて初めて、目の前の霧がパーッと晴れるかのように明快に理解できました。
■ 「社員一人当たり」の自己資本額
「その自己資本の額を社員数で割ってみろ」と木村会長は続けます。
社員数が多ければ「自分のお金」はそれだけ多くなければならない。
「中小企業は社員一人当たり1000万円もっておけ。
返さんでええお金が社内にそれだけあれば、地震や津波、
リーマンショックみたいなんが来て仮に2年間売り上げゼロになったとしても、
社員に給料が払える。その間に会社を立て直せる」
この一言で目からうろこが落ちました。
その時(2011年)、当社のその数字は社員一人当たり400万円ほどでした(社員12人で自己資本5000万円)。
これを一人当たり1000万円にすること。それを最大の経営「目標」としました。
その4年後に目標達成し、現在では一人当たり2000万円(社員15人で3億円)。
「景気が悪くてもビクともしない会社」に段々と近づいています。
この「自分のお金」は、これからも当社の最重要な経営目標(モノサシ)です。
10年後の第80期は自己資本10億円という目標を掲げています。
それを社員20名体制で成し遂げたい。一人当たり5000万円です。
よほどの事態でもビクともしません。
仮に南海トラフ地震で被災しても、命さえあれば立て直しができる。
世の中は何が起こるか分かりません。天変地異は必ず起こり、景気変動もしかり。
コロナで世の中がストップするなど想像すらできませんでした。
結論、枕を高くして寝れること。
私は小心者ですから、これはやはり大事です。
■ 社員数を増やさない経営
「社員一人当たり」を指標にする以上、社員数(分母)を増やせばこの数値はすぐに落ちます。
だからいたずらに社員数は増やしません。すると、いいことがたくさんありました。
まず、パイを分ける人数が少ないので分け前が多くなります。
給料は高く、人件費は低く。業界一の給与水準を実現することが可能であり、それを目指せます。
これまで通り吟味に吟味を重ねて採用し、しっかりと育成し、着実に定着していただきます。
こうして一人ひとりを大切にしてきた結果、7年以上も離職者が実質ゼロです。
余計な採用コストや育成コストもかかりません。
コストとは直接費用だけでなく、そこに関わる先輩たちの時間と労力もそうです。
無駄なく育成できていることが、経営としてどれほど効果的か。
■ 「教え合い」の効果
少人数で仕事を回すには一人で何役も出来なくてはなりません。
レーザーも、プラズマも、ガスも使えるし、トラック配送も出来る。
それだけでなく事務所に入って伝票も作れ、計算が出来て見積もりも出せる。工場長のA君を筆頭に、
そのようなマルチ社員が続々と生まれています。
それに必要だったのが「教え合い」でした。
この数年間「成長シート」をもとに各人が仕事の領域を拡張したこと、自分の仕事を仲間に惜しみなく教えて下さったこと。
これなしには、いまのような有給休暇の取得しやすい状態も、完全週休2日も実現できませんでした。
自分が休んでも安心してバックアップが利く体制になりました。
■ 少数にすると精鋭化せざるを得ない
少人数になると一人ひとりの能力が研ぎ澄まされます。
自分の能力が高まること、出来る領域が広がること。
すなわち成長すること。これは人間にとって根源的な喜びです。
成長したからこそ周りに与えることが出来ます。
仲間に知識や技術を教えること、後進を育てること、人に尽くすこと、与えること。
すなわち貢献すること。これこそが人生究極の喜びのような気がします。
「成長」と「貢献」を当社の理念キーワードにしているゆえんです。
■ 教え合いの「土台」
少数精鋭の組織を作り上げてきた過去数年を振り返ると、そこには土台として良好な人間関係がありました。
もし、お互いに良くない感情を持っていたとしたら、どうでしょうか。
相手に自分の仕事を教えようなどと思うでしょうか。土台から無理な話です。教え合いなど1ミリも進むわけはない。
みんな縁あってこの会社に集いましたが、もともとは赤の他人同士。
時には感情のもつれもあるでしょうし、一人ひとりの状況もいい日ばかりとは限らない。
それにもかかわらず、さまざまな私情を排して良好な人間関係の構築を優先してくださっていること、本当にありがたく思います。
■ 財務が強くて人が育つ、超一流の百年企業を!
木村勝男会長がよくおっしゃいました。
「百億企業よりも百年企業が上」
「百年企業は日本の宝、二百年企業は世界の宝」
当社もあと30年で百年企業となり、それは2051年です。
そのとき私は82歳ですが、去年入社してくれたB君やC君ならまだ50歳。
ここで会社が終わるわけではない、企業は永続です。
その意味では「さらに100年続く」企業が目標です。いまから100年続く選択をしつづけること。
第100期という目標は通過点に過ぎません。
私がこの10年間掲げてきた「小さな超一流企業」というビジョンに少しずつ着実に近づいていることに、心から感謝します。
今月もお読みくださり、ありがとうございました。
2021年5月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三