強くて美しいBS [給料袋メッセージ 226]

【強くて美しいBS】

 

 

今週は「JPSA名古屋18支部」にお招きいただきました。

アチーブメントを学ぶ経営者・幹部が集う上質の成長空間でした。

 

 

15年間学び続けたアチーブメントのエッセンスを駆使し、

故・木村勝男会長から叩き込まれた「BS経営」の本質に迫ってみました。

登壇の準備をする中で考えたことを綴ります。

 

 

[通算226号]

 

 

 

 

 

▲ 9月9日(火) 大阪にてセミナーをします。ぜひお越しください。

  お申込みフォーム https://x.gd/OPjQ6

 

 

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

 

前回の文章では、私が30歳で3代目となり、

40歳で経営の目的・目標に気づいたことを書きました。

 

 

BS(バランスシート)を重視した

財務体質の強い会社を目指した道のりを振り返り、

未来のBSビジョンと会社の成長戦略を描きました。

今回はその続きです。

 

 

■ 「強いBS」を目指して

 

 

40歳の時、リーマンショックで大赤字に瀕した私は

「どんな不況にもビクともしない強い会社にする」

という強烈な願望を持ちました。

 

 

そのための目標が「社員1人当たりの自己資本額」を貯めること。

それが故・木村勝男会長(木村塾・BS経営研究所)の教えでした。

私は2011年から6年間、学びました。

 

 

会長は2018年7月にご逝去されました。

丸7年が経ちましたが、その教えは不朽です。

 

 

PL(損益計算書)は1年間の売上・費用・利益を示す「会社の1年間の成績表」

BS(貸借対照表)は資産・負債・自己資本を示す「会社の体力・蓄え・構造の一覧表」

 

 

・ 会社を強くするにはBSを重視した経営をせよ。

 

・ 自己資本とは返さなくてよい“自分のカネ”。

  これが多いほど会社は強くなる。

 

・ 税金(法人税)を払った後の当期利益だけがBSに行ける。

  節税するな。税金を払え!

 

 

極端な話、業績不振でどれほどひどい赤字を出しても、

BSさえしっかりしてれば資金は回り、倒産しない。

しかし、たとえ黒字でも資金不足に陥れば倒産します。

 

 

家庭にたとえてみます。

もし失業して給料がゼロになったとしても、

貯金がたっぷりあれば生活に困らない。

 

 

しかし貯金がゼロだったり少なかったりすると、

わずかの給料の減少でも生活は途端に窮します。

 

 

PLとは給料、BSとは貯金。そんなイメージです。

 

 

会社はPLではなくBSで倒れます。

「黒字倒産」という言葉があるくらいです。

 

 

自己資本額とは「赤字許容額」であり、

これが多ければ多いほど赤字に強い会社になります。

不況抵抗力がつく。これを目指しました。

 

 

■ 改革のスタート

 

 

リーマンショック後の大赤字によって

自己資本が5000万円を割り込みました。

 

 

もし、もう一度5000万円を超える赤字を出すと

危険ラインを超えます(債務超過)。

そんな心細い状態からの再スタートでした。

 

 

[2009年度=第58期(私40歳)]

自己資本額4700万円(社員1人当たり365万円)

自己資本比率10%

 

 

ここから社内体制を整え、採用・育成に力を入れ、

営業に邁進しました。

その結果、黒字が継続します。

社員の皆さんが力を尽くしてくださったことの賜物です。

 

 

■ 会社に残すか、個人に残すか?

 

 

私は様々な経営者にお会いすることが多く、意見交換もします。

利益が出ると「役員報酬」を多くして

法人税を低く抑える経営者が一定数おられることを知りました。

 

 

儲かった利益を「会社に残す」か、

役員報酬を増やして「個人に残す」か。

 

 

前者は法人税を多く払い、後者は所得税を多く払います。

どちらも次世代に送る際に相続税や贈与税が相応にかかります。

 

 

どちらが「損か得か」という議論はよくされますが、

正解は一つではない。

 

 

私は「会社を強くする!」という一点にこだわり、

自己資本の強化を目指しました。

 

 

■ 完全無借金に近づく

 

 

そうして10年が過ぎ、

社員1人当たりの目標額が2000万円を超えてゆきました。

 

 

[2019年度=第68期(私50歳)]

自己資本額2億9200万円(社員1人当たり2090万円)

自己資本比率70%

 

 

「返さなくてよい自分のカネ」が7割になり、

実質無借金どころか「完全無借金」に極めて近い状況になりました。

本当に「楽」な状態でした。

 

 

■ 人生理念に「挑戦」を加える

 

 

この頃のことです。アチーブメントの公開講座で

人生理念を「刷新」する機会に恵まれました。

 

 

初めて受講した41歳の時、

自分自身との「契約の言葉」というものを定めていました。

 

 

「私は仲間を勝たせるリーダーです」というものです。

多くの人の力を束ねることができてこそ全体勝利ができる。

その思いを込めた言葉でした。

 

 

紆余曲折の末、連続黒字を重ね、人心も落ち着きました。

そして10年が過ぎたこの時、第2の「契約の言葉」を作ります。

 

 

すでに一定の成果は出た。

しかし人生のゴールである「82歳の時の百年企業」

までにはまだ30年以上ある。

現状維持で守りに入ってはならない。

 

 

もともと「生存の欲求」が強い私です。

安全志向で、冒険をためらう弱い心がある。

しかしそれでは次のステージは戦えない。

 

 

そこで作ったのが「私は責任を果たすチャレンジャーです」

という契約の言葉でした。

人生理念に「挑戦」を加えたのです。

 

 

■ 隣地購入「3カ所」の決断

 

 

ここまで読んでいただいて、

社員の皆さんには察しが付くことと思います。

 

 

この3年間に私が隣地3カ所を次々に購入し(合計3億円)、

工場2カ所(合計3億円)を計画し、

最新レーザー(2億円)を決めました。

 

 

まるで人が変わったかのように感じられたと思います。

その背後では「挑戦」という理念が作用していたわけです。

 

 

とりわけ、2カ所目の土地(旧T鋼材)を購入するときの決断です。

顧問税理士だった先生からは「年商を上回る設備投資は危険」

と反対されました。

 

 

しかし超長期のビジョンを考えると

必要な土地であることに間違いはない。

財務を勉強し直し、購入を決断しました。

 

 

その後に3カ所目(旧H商店=2カ所目の隣地)が続くわけです。

2カ所目を決断していなければ3カ所目はありえませんでした。

 

 

いま、この2カ所(合計100坪)に新工場を建設中です。

その建物を見るにつけ、2カ所目の購入が正解だったと得心します。

「理念の力」を実感します。

 

 

■ 「自己資本」にレバレッジ!

 

 

故・木村会長から発破をかけられたことも底流にありました。

 

 

・ 自己資本比率は高すぎてもアカン。業種にもよるが20%でいい。

  自己資本比率が高すぎるということは、

  分厚い自己資本を持ちながら「チャレンジしていない」ということ。

 

 

・ 強いBSは人を引き付ける。銀行はBSのいい会社に寄ってくる。

  銀行は貸すところがなくて困っとる。銀行をバックにつけろ。

  分厚い自己資本にレバレッジ(てこ)を掛けろ。

  お金はお金が好き。お金はお金の多いところに集まる。

 

 

・ 金活や! 

  拾うたり、親からもろうたり、宝クジで当たったりしたんではアカン。

  苦労して増やす。カネを増やす過程に葛藤がある。

  乗り越えたら自信になる。

 

 

・ おびえる人は安定を求める。

  ホームドラマの人生やない、大河ドラマの人生を生きろ!

 

 

■ 銀行が味方してくださる

 

 

3カ所目の土地購入の際でした。

6億円を想定していた投資総額が7億円を超えて8億円に迫ります。

この是非を銀行の担当者に尋ねた時、こう言われました。

 

 

「確かに一時的な負担は増加するかと思いますが、

それ以上の投資効果が得られると思います。

微力ながら我々でできることは全力で致しますので何なりとご用命下さい」

 

 

私は意を強くし、購入を決断しました。

 

 

木村会長の言葉――

「自己資本が厚くなると銀行が味方に付く」を実感した瞬間でした。

 

 

そして最近のことです。別の銀行の役員の方と会話をしました。

 

 

「もし私が役員報酬を多額に取って自己資本を低く抑えていたら、

対応は変わりましたか?」と聞きました。

 

 

すると

「いまは経営者の個人補償が取りづらい時代です。

いくら個人資産が多くても、内部留保の少ない会社には貸しづらい」

と明言されました。

 

 

思い出したのが

「私利私欲でなく公利公欲」という木村会長の言葉です。

 

 

納税はまさに社会貢献。

だから納税すればするほど世間は味方してくれる。

理の当然です。

 

 

■ 節税より納税

 

 

いま、年商(4億円台)・自己資本額(4億円台)に倍する

設備投資(8億円)を許されています。

 

 

・ 銀行は、経営者の姿勢と自己資本額を見て、

  信用して貸してくれる。

 

・ 取引先は、支払い能力を認め、

  安心な会社と認識して取引してくださる。

 

・ 社員は、「この会社で働いて大丈夫だ」と安心し、

  誇りに思って働いてくれる。

 

・ 未来の社員は、「堅実な会社」「社会に貢献する会社」と

  信頼して応募してくれる。

 

 

これらは、節税ではなく納税に努めた結果もたらされる

「見えない資産」です。

納税とは「会社の信用を買うためのコスト」と捉え、

1円でも多く納税できる会社をこれからも目指します。

 

 

■ 強くて美しいBSを目指す

 

 

これまで私はずっと「強いBS」を目指してきました。

すなわち――

 

 

・ 自己資本が厚く、負債が適正(負債に過度に依存していない)。

 

・ 資産の中身が健全(不良債権・滞留在庫がない)。

 

・ キャッシュが潤沢で、短期的なリスクに耐えられる。

 

さらに、そこにBSとしての「美しさ」をまといたいと思います。

「美しいBS」とは、すなわち――

 

・ 過度な節税・操作がなく、オープンで透明で公明正大。

 

・ 不要な資産が無く(執着せず)、本業に資金が集中している。

 

・ 社員や顧客の未来のために使うべき資金が、

  適時適所に投じられている。

 

・ 資金調達も「戦略的」に行う。恐れず、依存せず。

 

・ 過度なリスクも、過剰な保守もない。

 

 

「攻め」と「守り」が調和したバランス(均整美)のとれたBS。

それは、経営理念(信用、成長、貢献、挑戦、永続)を数字にしたものです。

 

 

 

 

 

■ BSとは理念が「数字」に結晶化したもの

 

 

「強いBS」は、どんな不況にもビクともしない会社をつくる。

「美しいBS」は、社会から応援される会社をつくる。

 

 

そして、その両方を兼ね備えた会社こそが「永続」できる会社であるに違いありません。

 

 

これからも「納税・貢献・信用・応援」という善循環を回し続けます。

そして「日本を代表する超一流の中小企業」を実現します。

引き続き、会社にお力をお貸しください。

 

 

2025年7月25日

坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

 

 

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