忖度ある美しい職場を [給料袋メッセージ 172]

【忖度ある美しい職場を】

 

きょうは給料袋のメッセージを書きました。
経営者になって22年、「こうなればよい」と思う職場にだんだんと近づいてきます。感謝です。

 

[通算172号]

 

■■■■■■■■■■

 

社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

今年の大きな収穫は新しく作った営業用ホームページでした。

 

4月のオープンから50件ほどの問い合わせをいただき、10件以上の新しいお客様に来ていただけました。

 

■ 溶断の超プロ・吉山さんに訊く

 

ホームページ増設に合わせて鉄鋼や会社にまつわる記事を毎月配信しています。

 

今月は「社員インタビュー」として溶断の超プロ・吉山さんに登場してもらいました。

 

坂元鋼材の社員はどんな考え方と心構えで仕事をしているのか、それをお客様に知っていただくことが目的です。

 

過去には工場長の前君を取り上げました。その続編です。

 

吉山さんは坂元鋼材に入社して今年でちょうど10年。

過去3社に在籍してガス溶断の腕を磨かれましたが、リーマンショック後に当時お勤めだった会社が廃業され、

縁あって当社に移籍してくださいました。

 

以下、そのインタビュー記事です。吉山さんの職業観、そして当社の大切にしてきた考え方が凝縮されています。

 

ぜひご家族の皆さんとともにご覧いただければ幸いです。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〔社員インタビュー記事〕

 

仕事は人間関係と向上心

 

■ キレイな製品を、短納期で

 

―― ガス溶断で心がけていることは何ですか?

 

吉山:分厚い鋼板をゆっくりと高温で切断しますから、入熱による製品の歪みが大敵です。

歪みを極力抑えるように、数々の工夫を凝らしています。

一般的な手法として水を掛けながら切断しますが、その水の使い方ひとつでも要点がいくつもあります。

 

また極厚鋼板になるほど「倒れ」(切断面の勾配)に注意が必要です。

そして傷のないキレイな製品を作ること。

切断手順を考えたり、切断中に製品が動かない工夫を凝らしたり、「職人の知恵」は数えきれないほどあります。

 

―― 技術面以外に心がけていることは?

 

吉山:納期厳守です。これまでの仕事人生で納期遅れはほとんどありません。

納期を遅らせると、それだけでお客さんの信用がなくなるからです。

 

また、開ける穴が小さくなればなるほど難しいのですが、

機械加工に回すことなくガス溶断で加工できればお客さんのコストカットになります。

 

極端な小穴でもリスクを取りながらチャレンジして成功させます。

「2度切り」(2工程のガス切断)も同様です。

他社の職人さんも頑張っている分野ですから、負けられません。

 

■ 良い職場は良い人間関係から

 

―― 勤続10年、当社の良いところは?

 

吉山:まず品質が良いこと。

そしてレーザー・プラズマ・ガスの3方式がそろって、かつ短納期なのでお客さんの利便性が高いことです。

 

働く者として感じるのは職場の連携(チームワーク)が良いこと。

入出荷があったり、母材を移動させたり、切断以外の仕事がたくさんあります。

しかし連携プレーがうまく働くので切断に集中させてもらえます。ありがたいことです。

 

―― 当社が進めている「教え合い」の効用ですか?

 

吉山:レーザー、プラズマ、ガスの3方式をみんなが扱えることを目指していま

す。かつて職人仕事は「見て盗め」の世界で、自分の技術を他人に教えることに抵抗があるものでした。

 

当社で教え合いが活発なのは、社風の良さ、つまり人間関係が良いからです。

 

他の機械が扱えるとその機械を使っている人間の気持ちが分かります。

他者を気づかう心がこの職場にはあります。

 

社員の離職率が極めて低く、在社年数が長いので技術力が蓄積しています。

 

―― 若手が増えました。

 

吉山:大きな鋼板を扱う工場ですから、ケガが無いように注意しています。

危険なところを事前に指摘したり、クレーン操作の注意点(斜めに吊らないこと、必ずセンターを吊ることなど)を説いたり、

職場の整理整頓も若手には口酸っぱく注意しています。

 

 

それも人間関係が円滑なので遠慮することなくダイレクトに伝えています。

 

会社もどんどん若返りが進み、気がつくと私が最年長です。

若者が気を遣わないように、こちらから小さな話題を振ったり、声がけしたりしています。

 

小さな積み重ねで、よい間柄になります。

 

■ 職場に息づく理念

 

―― 10年間で会社も変わりました。

 

吉山:以前は「この機械はこの人しか使えない」という時代もあったので、大きな進歩です。

人が機械に固定しないことが大きい。

 

複数の社員がいろんな機械を扱えるので、いつ有給休暇を取っても心配ありません。

休むときは個別にLINEをやり取りして、仕事や納期の指示をし合っています。

 

みんなが責任感を持って自分の仕事を全うしてくれて、ありがたいです。

社長が掲げた経営理念(信用・成長・貢献)をみんなが仕事で体現してくれています。

 

「信用」はお客さんの納期、品質を守ること。

そして社員同士の信頼関係がベースにあること。

 

「成長」は向上心です。ガス、プラズマ、レーザーの3種類を使えるように必死です。

事務所でもCAD・CAMチームの作図や型紙作りのスピードが速い。

仕事を短納期でさばける原動力になっています。

 

「貢献」は顧客第一の姿勢です。

みんなの動きがスピーディで気持ちがいい。

出荷のときの積み込みも一生懸命です。

 

―― 最後に後進指導のコツを教えてください。

 

吉山:基本を教えて、少し出来るようになったら遠くから見るようにしています。

まず自分で考える癖をつけること。答えをすぐに教えないことです。

 

材料取りのコツ、キズの入らない切り方のコツ。

 

私が珍しい加工をやっていると、すぐに飛んできて見に来る子もいます。

主体的に学ぼうと常にアンテナを張っている姿勢がうれしい。

 

仕事は経験して覚えるもので、失敗も経験させます。

ただし大きなミスにならないように気をつけて、小さなミスは経験させます。

数をこなさないと一人前にはなりません。

 

―― 一人前になるには5年、10年かかると言われますが?

 

吉山:本気さと向上心があれば1~2年でもモノに出来ます。

難しい仕事が来ても前向きにチャレンジすること。

 

私も若い時に極小穴や2工程など難度の高い仕事を嫌と言うほど経験しました。

おかげで細かい技術が身につきました。

 

センスも大事です。

身のこなしの機敏な子、よく気が付く子が伸びる。のんびりしている子は伸びない。

どんな仕事でもアンテナを張って動きのいい子が成長するのではないですか。

 

―― ありがとうございました。 

(インタビュー終了)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

■ 人生は出会いで決まる

 

皆さんよくご存じの通り、吉山さんの仕事は極めてハイレベルで確かなもの。

温厚で優しいお人柄で、職場の水質をいつも良くしてくださっています。

 

吉山さんにとっての転機が13年前のリーマンショックでした。

当時勤めていた会社が廃業し、吉山さんはいったん別の職業に就かれます。

 

 

しかし「天職」はガス溶断と思い、坂元鋼材に来られました。

 

リーマンショックでは当社も創業以来の大赤字を出して苦しみましたが、やはり乗り越えると幸運が待っていました。

私は本当に人に恵まれた幸せな経営者です。

 

■ 教え合いが職場の安心をつくる

 

ところが、です。

この記事を出してすぐの先週末、吉山さんがケガをなさいました。

 

 

鋼材を吊るときにミスをされ、右足の甲の骨にひびが入ってしまいました。

弘法も筆の誤り。一カ月ほど休養されることに。

 

 

昨日は通院のときに会社に顔を出され、こうおっしゃいました。

 

「あの記事が出た直後に自分がケガをしてしまい、面目ない。

しかし若い3人がトレーサーを守ってくれるので安心して休めます」

 

おケガをされたことは申し訳なく残念なことでしたが、

誰がいつ休んでも大丈夫な職場であることが企業としての大きな安心です。

 

 

かつては「この機械はこの人がいなければ困る」という時代が長くありましたから。

あらためて、教え合いを強力に進めてくださったこの数年間に感謝します。

 

■ 「忖度」の本当の意味

 

このインタビューで吉山さんは

「他の機械が扱えるとその機械を使っている人間の気持ちが分かります。

他者を気づかう心がこの職場にはあります」と述べています。

 

これこそが「忖度(そんたく)」の本当の意味です。

 

数年前、政治の世界でこの言葉がしきりに使われ始めたとき、私はどうにも違和感をぬぐえませんでした。

 

忖度という言葉が誤用されている。

 

もともと忖度とは「相手の心中をおしはかること」(広辞苑)という意味で、

自分ではなく相手のためを思う言葉です。

 

日本語の中でもとびきり美しく、日本人のもっとも日本人たるところをすくいとった言葉だと思います。

 

それなのに政界・官界で頻繁に使われたこの言葉は、何を目的としていたでしょうか。

 

わが身に累が及ばないために事実を曲げてでも権力におもねる。

まさに忖度の原義と真逆でした。

 

その結果として全体(国家)の利益が棄損された。

しかも財務省職員が自ら命を絶つ痛ましい事件にもなった。

忖度という美しい日本語が泣いています。

 

だからこそ、このインタビュー記事の吉山さんの発言にある「他者を気づかう心」。

 

これこそが本来の意味での忖度だと、はっとしました。

 

それが私たちの職場に息づいていることに心底からの感謝です。
真の意味での「忖度あふれる職場づくり」を、これからも進めてまいりましょう。

 

今年ももうすぐ終わります。

 

皆さんとともに好業績で人間関係の良い会社づくりが出来ることに、改めて感謝申し上げます。

 

今年もありがとうございました。

 

2021年12月24日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

 

■ インタビュー記事(レーザー・プラズマ・ガス溶断加工センター)

 

 

■ Facebookページ