きょうの給料袋メッセージでは「借金が怖い私」の意識改革について書いてみました。
「生存の欲求」が強い私は、どちらかというと保守的で堅実です。
でもチャレンジが必要な時が人生には、ある。いまがその時です。
[通算214号]
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いつも社業への貢献、ありがとうございます。
この数年来ずっと温めてきた新工場計画がようやくまとまりました。
先月はレーザー加工機を正式契約し、今月は工務店様に工場棟2つの発注をしました。
いまから1年後、新工場2棟が出来て、
そこに最新鋭のハイパワーレーザーがお目見えします。
私たちの会社も新しい時代を迎えます。
■ 財務を磨いたおかげ
昨年2月と12月に土地2カ所(約2億円)のご縁を頂いたおかげで、
新工場2棟(約2億円)、新型レーザー(約2億円)と、
合計で6億円規模の設備投資になります。
これが可能になったのは、過去15年間にわたる経営改革で会社を磨き、
財務を改善させたからです。
振り返ると2009年度、リーマンショック直後の大赤字により
自己資本が5000万円(自己資本比率10%)まで低下しました。
ここを底辺として財務を磨きました。
黒字を重ね、借入金を返し続けました。
その結果、最大4億円近くあった借金は一時「完全無借金」
に迫るほどに減りました(自己資本比率70%)。
私がこだわった自己資本額は現状4億円。
これが信用となって次の6億円の設備投資ができるわけです。
■ 「BS経営」に感謝
バランスシート(BS)を重視して自己資本を貯める経営を目指したのは、
2011年から6年間ずっと学び続けた
木村勝男会長(木村塾・BS経営研究所)のおかげです。
決算書がさっぱり読めなかった私にBSの見方を教え、
「社員1人当たりの自己資本額」の重要性を説いてくださいました。
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・ 会社の使命の一つは社員に安心して働いてもらうこと。
言葉だけではアカン。自己資本という裏付けが必要。
たくさんの社員を抱えている、博打みたいな経営はできない。
・ 返さなくてよいお金(自己資本額)が社員1人当たり1000万円あれば、
2年間売り上げがゼロでも給料を払える。それを目指せ。
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■ 挑戦する勇気を持て!
2011年に木村会長と出会ったとき、
当社の自己資本額は5000万円(社員1人当たり約400万円)。
それから4年後の2015年には、
目標だった1億5000万円(1人当たり1000万円、自己資本比率35%)に到達しました。
その時、木村塾で1時間の経営報告をする機会をいただきました。
自己資本「額」もさることながら、私は自己資本「比率」も重視していました。
なにせ10%からのスタートです(他人のお金が9割、自分のお金が1割)。
だから「50%以上の安定経営を目指したい」という目標を公言しました。
すると、木村会長は次のようなお話をされました。
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・ 自己資本比率は高すぎてもアカン。
業種にもよるが20%でいい。
自己資本比率が高すぎるということは、
分厚い自己資本を持ちながらチャレンジしていないということ。
挑戦する勇気を持て!
・ 銀行はBSのいい会社に寄ってくる。
銀行は貸すところがなくて困っとる。
銀行をバックにつけろ。
分厚い自己資本を元手にレバレッジ(てこ)を掛けろ。
お金はお金の多いところに集まる。
お金はお金が好き。
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そして、この日の私の発表を聞き終えた木村会長は
「まだBS3割、PL7割やな」と評されました。
BSに立脚した思考がまだまだ3割、という辛口の評価でした。
正直なところ、その意味がよく分かりませんでした。
■ A先生の反対意見
木村会長はその後、2018年に逝去されます。
それからも私は教えの通りに自己資本の蓄積を目指しました。
それが4億円近くにまでなった昨年2月、
1つ目の土地を購入しました(競売で1位落札)。
そして昨年の秋、2つ目の土地の売却話が当社に舞い込んだ時でした。
税理士のA先生から「反対意見」をもらいました。
先生は「その土地を買って何をするのか?」と聞かれます。
私は土地2カ所に新工場2棟を建てて最新鋭のレーザーを導入すると伝えました。
すると先生はおっしゃいました。
「土地2億、工場2億、レーザー2億。合計6億円は借り入れ過多だ。
年商(4.5億円)を上回る。
持ち株会社(HD)を作ったときの借入も別にある。
これらを返済するためには年間8000万円の経常利益が必要。
しかし過去最高益は6000万円しかない、大丈夫か?」
私が「銀行さんは前向きな提案をくれます」と応じると、先生は仰います。
「銀行は商売だから貸してくれるだろう。
しかし、いざという時のことを考えているのか?」
■ あらためて財務を学ぶ
A先生の指摘に私は頭を抱えました。
土地はどうしても欲しい、すでに隣地1カ所を確保し終え、
新たな隣地の話が来るなど千載一遇のチャンスである。
レーザーも従来機の老朽化・陳腐化を考えると、新型を入れておきたい。
私はあらためて財務を勉強し直そうと思いました。
その教材は「YouTube」でした。
財務をテーマにするチャンネルがいくつもあり、
とくに役に立ったのが「中小企業の財務チャンネル」(森尾勝俊先生)でした。
なんと「借入金の返済額から目標利益を考えるのは最悪です」という、
私の悩みにストレートに答える動画がヒットしました。
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・ 「借入金の返済は利益で行う」という常識にはまっていませんか?
借入金の返済原資は「資金使途で異なる」というのが銀行融資の基本。
「借入金の返済は利益で」という常識を疑うことから始めましょう。
・ 融資の資金使途は3種類。
① 設備資金 = 「利益+減価償却費」で返済する
② 運転資金 = 「売上代金」で返済する ★ここ、大事!
③ 手元資金 = 「手元資金」で返済する ★ここ、大事!
・ 当期利益(+減価償却費)で返す借入金は設備資金のみ。
借入金のうち、「運転資金」(売上債権+棚卸資産-仕入債務)と
「現預金」に見合う借入金は、利益で返す必要がない(資産で返す)。
・ BSが読めていれば「なにが利益で返す借入金か」が分かる。
・ 利益で返す必要のない借入金(折り返し融資が前提)
を利益で返そうとすると、利益目標が高くなる。
売上目標が高くなる、経費削減も高くなる、ストレスも高くなる。
誤解から生まれた目標に、社長が疲れ切る、社員も疲弊する。
・ 借入金の本質は、利益で返す借金と、そうでない借金を分けること。
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この動画を何度も何度も繰り返し見ました。
運転資金は商売を継続する以上、必要なもの。
そして会社には現金もある。
これらを借入金(総額)から差し引け、それが「正味の借金」。
そう理解しました。
■ 負債もあれば、資産もある
たとえば日本政府は巨額の負債があるけれども、相応に巨額の資産もある。
バランスしているからバランスシートである。
そこで当時の試算表(2023年10月)のBSを改めて点検しました。
1カ所目の土地を買っている段階です。
借入金こそ2億円近くありますが、
現金(1.4億円)・運転資金(1億円)を差し引けば、
正味の借入金は「マイナス4000万円」です。
拍子抜けしました。
ここから新たな土地・工場2棟・レーザーに投資しても「正味の借金」は5億円。
リーマンショック以後の当社の実績なら13年で返せる。
しかも最新鋭ハイパワーレーザーが更なる武器となる。
これでチャレンジしなければ、天国の木村会長に怒鳴られるに違いありません。
YouTubeチャンネルの森尾先生の次の言葉が、とても腑に落ちます。
・ 借入金の本質は、利息を払って時間を買うということ。
・ 自己資本は時間が掛かり、他人資本は一瞬です。
・ 変化の激しい時代に、いまの経営スピードで大丈夫ですか?
■ 借金ではない、「資金調達」である
今回、こうして財務を勉強することができて感謝です。
自信をもって6億円の投資に踏み切ることが出来ました。
木村会長のメッセージを振り返ります。
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・ ぼくは「資金調達」と言うが、皆さんは「借金」と言う。
借金をしたがらない。
そうやない。ヒトを活かし、モノを活かし、カネを活かす。
それが経営、それが起業家。
日本はカネを使える経営者がおらんから経済が衰退する。
・ 皆さんは「無借金経営」を自慢する、借金が無いことを自慢する。
あほか!
無借金が悪いとは言わん、気が楽や。
しかしそれでは「逆境という先生」がついて来ない。
借金がイヤ? 小っさいし、伸びない。保証してあげる。
・ 適正自己資本比率は2割でいい。
自己資本10億でも総資産50億に行ける。
でっかい自己資本を持ってて小っさいリターンで安住するな!
・ 成功の反対は失敗やない、何もしないこと。
・ 器は分母、壁は分子。
大きな分母(自己資本)があるということは、
それだけ大きな壁に挑戦できるということ。
自己資本をようけ(たくさん)貯めるということは、
ようけチャレンジできるということ。
・ おびえる人は安定を求めとる。
ホームドラマの人生やない、大河ドラマの人生を生きろ!
・ 金活や!
拾うたり、親からもろうたり、宝クジで当たったりしたんではアカン。
苦労して増やす。
カネを増やす過程に葛藤がある。
乗り越えたら自信になる。
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2015年の木村塾での報告から9年になろうとするいま、
木村会長の言葉がようやく体験的に肚落ちした気がします。
「まだBS3割、PL7割やな」と評された私でしたが、
そろそろ「BS5割・PL5割」くらいには認めてもらえるでしょうか。
〔私たちは挑戦の先にある未来を信じています〕
現状維持は衰退を意味します。
過去に何度も大きなチャレンジをしてきたからこそ、今の坂元鋼材があります。
時代の変化に対応した大規模な設備投資、
人材採用と育成、新規顧客の開拓などです。
現状維持に甘んじることなく、未知の領域にチャレンジし続けます。
これは坂元鋼材のフィロソフィーの一つです。
挑戦の先にある未来を信じて、
次の新工場・新レーザー計画を何としても成功させましょう。
どうか、力を貸してください。
2024年10月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三