新将命さんの講演会を聴いて
「経営の教科書」「働き方の教科書」「リーダーの教科書」などの著者でもある《伝説の外資トップ》――新将命(あたらし・まさみ)さん。著書を何冊も買い込んでは積読(つんどく)の私・・・。ところが昨日トーマツ・イノベーションさんで講演を拝聴する機会を得ました。講演2時間に質疑応答1時間の合計3時間。プロ経営者として外資系企業の社長を何社も勤め上げられただけあり、お話はすべてご自身の体験を通して得た「実」のもの。内容ギッシリ。備忘録としてメモしました。
・ 虚論、空論。それに対して実論。現実に、実際に役に立つ話が大事。
・ 尊敬する経営者3人は、本田宗一郎、松下幸之助、盛田昭夫。いずれも町工場を世界的企業に育てた実の人。
・ 松下幸之助の言葉。「成功する会社は成功するようにやっている(失敗する会社は失敗するようにやっている)」。上手くいっている会社には国境、業種、規模、時代に関係ない共通点がある。それが「原理原則」。
・ 勝ち組企業=「価値」ぐみ企業。価格で勝負しない。他社と差別化された「価値」で勝負している。Value for money.
・ 自分一人で生きているわけではない。社会の恩恵で生きている。必ず還元を考えること。
・ 社員品質=スキル(仕事力)+マインド(人間力)
・ 人間力=信頼(人柄)+意欲(モチベーション)
・ 満足には2種類ある。「良い満足」と「悪い満足」
・ 「悪い満足」=安易な現状是認。大阪弁でいう「まあええやん」。危機意識の欠如。こうなると会社は衰退する。
・ 「良い社員満足」
①自社に誇りを持っていること。
②「やった!」という達成感があること。
③会社を通じて自分を高めることが出来ること。自己実現感。自己達成感。
・優れた社員が優れた仕事をする。「我が社は人を作ります、そしてモノを作ります」(松下電器)、「モノづくりの前に人づくり」(トヨタ自動車)に通じる。
・ 経営者の質
①マネジメント力
②リーダーシップ
③倫理観
・ 会社に合わない社員に辞めていただくのは経営者の勇気の一つ。
・ 今日の自分は昨日までの自分の結果である。将来の自分は今日からの自分の結果である。よりよい将来のために過去から学ぶ。
〔経営者品質の5大条件〕
1. 情熱
・ 勝ち組企業はトップの心が燃えている。
・ 情熱の5つの型
① 自燃型人間(自ら火をつけて燃える人=チャレンジャー=5-10%)
② 可燃型人間(人がマッチを擦ってくれると燃える人=80%)
③ 不燃型人間(一生燃えない、または燃え尽きた人=2-3%)
④ 消火型人間(人が燃えているのを見ると消して回る人)
⑤ 点火型人間(人の動機を高める人=5%)
・ 情熱を持続させる3つの方法
① 人生に目的目標をもつこと。
② 短期と長期の納得目標を追い続けること。
③ 点火人(てんかびと)と付き合うこと。人生は縁と運が大事。運は「はこぶ」と書く。運は良くすることが出来る。「自分は運がいい」と思い続けること。そうすれば運は良くなる。人間は半分以上が自己暗示で動いているから。運のいい人と付き合うべし。「メンター」を3人持てれば素晴らしい。情報や知識をくれる人はteacher。心から尊敬でき、生きる勇気を与えてくれる人がメンター。恩師。
2. 方向性
・ 「トンネルの先の光」「坂の上の雲」=方向性を示すこと。部下に方向性の語ることのできる経営者、リーダーたれ。
・ 方向性= 理念 + 目標 + 戦略
・ 理念= ビジョン + 使命感 + 価値観
・ 人は大きなことを信じたときに大きな仕事をする。
・ 目標= 理念 + 数字 (形而上+形而下)
・ 戦略=選択と集中=優先順位。限られた資源の最適配分。
3. 商品
・ 有形無形の差別化とコスト競争力を磨くこと。
・ 無形=①サービス
②イメージ(ブランド)
③信用
・差別化不在のもたらす弊害 → 価格競争に陥る(価値でなく価格で勝負 → 経営悪化)
4. 顧客
・ 「まあまあ」「とりあえず」 → 浮気される
・ 大満足、感動 → リピーター・推奨客になる
5. 社員
・ 社員満足の3K
① 環境 (物理的、時間的、人的) = 不満抑制要因
② 金 (給与、賞与) = 不満抑制要因
③ 心 (達成感、自己実現感) = 動機促進要因
・ 人を育てる最良の方法=任せること(ドラッカー)
・ 「人間はムチャをすると潰れるが、ムリをしないと伸びない」
〔企業成功の10ポイント〕
① 夢・ビジョン・志がある
② 強みがあり、差別化を維持
③ 視点が顧客志向
④ 攻めと守りのバランスのとれたチーム作りができる
⑤ 経営者が財務状況(BS、CF)を良く理解している
⑥ 簡素、節約志向、けちけちモード(浪費、派手でないこと)
⑦ CFマネジメント
⑧ 経営と業務のチェック体制があること(苦言を言ってくれる人がいること)
⑨ 経営者が社外アドバイザーを持っていること(直言、諫言、苦言)
⑩ 経営者、社員が学び続けていること
〔採用の鉄則〕
・ 金の素材を採用する。磨けば光る金の卵を見つける。
・ 相性のいい人を採用する。結婚と同じ。
・ 面接4回も5回もする。社長、役員だけでなく平社員にも出席させる。
・ 手間、ひま、時間を惜しむな。
・ 目を見る。目に光があるかどうか。表情がイキイキしているかどうか。
・ 「あなたははぜ我が社に応募したか?」この質問に心底納得できる答えを言う応募者は100人に1-2人いるかどうか。
・ 中途採用の場合の質問。「これまでのビジネス人生で犯した最大の失敗は?そこから何を学んだか?」これにもきちんと答えるのは1-2人いるかどうか。
・ 「10年後にはどんな人間になっていたいか?」自分の将来に責任を持てない人間が、会社の責任を持てるわけがない。
【特に腹に響いたこと】
■ 中期・長期の納得目標をもて!
新氏は32歳の時にシェル石油からコカコーラに転職。同時期に次男が生まれて責任感を覚え「45歳で社長になる」とコミットメント(決意)。そのため、社長にふさわしい能力を紙に書き出した。体力、語学力、リーダーシップ能力、財務分析力など14項目が挙がった。その時点で自信があったのは体力と英語力だけ。優先順位をつけてそのほかの能力を一つずつ高めてきた。毎年ごとに目標設定し、達成すれば次の目標を掲げる生き方を続けた。結果、ジョンソン・エンド・ジョンソンやフィリップスの社長を歴任した。
「目標の85%は達成してきた」
「人生はけっこう思った通りになる」
■ 3人のメンターを持て!
「皆さんには何人のメンターがいますか?」と会場に問い掛けた新氏。
1人いる人、2人、3人と・・・。だんだん数は少なくなる。
私は幸いに3人以上のメンターがいると自認できました。すぐに思い浮かんだメンターは4人。アチーブメントの青木仁志社長、佐藤英郎先生。木村塾の木村勝男UBI会長。そして20代から私淑しているジャーナリストの萩原遼氏。いずれの方々からも、人生の転機において深い影響力を与えられ、これからも生涯学び続けていきたい師です。あらためて、素晴らしいメンターの先生方に恵まれていることに感謝しました。
あっという間の3時間。経営についての辛口なコメント満載。そして、これまでに学んできた青木社長や木村会長の言葉と共通するものがいっぱい。成功する経営者としての「原理原則」は同じであると再認識しました。
講演を終えて帰り際のこと。アンケートを書き終えてふと頭を上げると、そこに新氏が。
「名刺交換しましょう。どんな仕事をしていますか?あなたの聴く姿勢が一番良かった。問題点もするどい」とおっしゃってくれました。とても嬉しいサプライズでした!