
【新工場が完成、新レーザーが到着】
長年構想してきた新工場・新レーザー計画がついに完成しました。
リーマンショックからの17年間を振り返ります。
[通算229号]
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
今月は新しいレーザー加工機が到着しました。
最新鋭の大型ハイパワー機(24kw)です。
10月中旬の三連休の最終日。
大型トレーラーに運ばれた巨大なレーザー加工機が
真新しい工場に到着した瞬間、まさに感無量でした。
17年前、2008年8月に
レーザー初号機が到着した朝を思い出します。
あの時も新工場(現・第3工場)を建てて、
大型レーザーを導入しました。
しかし翌月にリーマンショックという
歴史的な不況に遭遇します。
仕事の激減、鉄鋼相場の大暴落、
そして翌2009年度は過去最悪の大赤字
(9,000万円超の営業赤字)に見舞われました。
会社始まって以来の経営危機。
その不安、恐怖、自分に対する不甲斐なさ、
それが経営改革の原点でした。
■ 逆境から始まった17年改革
巨額の赤字を計上した2009年度、
自己資本額が5,000万円を割り込みました
(自己資本比率10%)。
再び同じような赤字を出せば債務超過になる。
「どんな不況にもビクともしない強い会社をつくる」
その一念での再出発でした。
幸運だったのは、
何人もの素晴らしい師に巡り合えたことでした。
2009年に通った「なにわあきんど塾」で、
講師の先生に一喝されました。
「親父の時代は誰でも儲けた。これからはそうはいかん。
学ぶべきことを学び、数字を読み、手を打て」
そう現実を突きつけられました。
2010年、アチーブメントの青木仁志社長に出会ったことが、
人生が一変するほどの幸運でした。
「逆境は成功の前奏曲、乗り越えればキャリアになる」
この言葉に、いつも励まされました。
そして理念経営を教えていただきました。
2011年、故・木村勝男会長に出会います。
BS経営という新しい視座を与えられました。
「社員1人当たりの自己資本額を伸ばす」
この座標は経営にとって最高の物差しになりました。
39歳、40歳、41歳の時に出会った学びと師。
それらが人生後半を支える太い柱になりました。
■ 最初の幸運
5000万円に落ち込んだ自己資本額
(社員1人当たり400万円)からスタートし、
黒字を重ねました。
2023年3月、自己資本額が4億円
(社員1人当たり2,600万円)に迫ったタイミングで、
真裏の土地(旧・N社)を競売で取得できました。
当社の入札価格は1億2,400万円、
2位は1億2,000万円と、まさに僅差。
しかも相手はマンション業者でした。
薄氷を踏む思いでしたが、
当社の強運を実感しました。
もし落札していなければ、
いま頃は真裏にマンションが建っていました。
■ 「異論」「反対」から磨いた判断力・決断力
同じ2023年の夏、こんどは真横の土地
(旧・T社)が売りに出ます。
願ってもない話です。
しかし顧問税理士の先生から「待った」
が掛かりました。
土地2カ所・工場2棟・最新レーザー導入で、
私は総額6億円の投資を想定しました。
先生は
「年商を超える投資は危険だ」
「坂元鋼材の過去最高益は6000万円だが、
返済には毎年8000万円の利益が必要だ、出来るのか?」
という忠告です。
悩みました。
結局は先生の言葉を受け取らず、購入しました。
それまで13年間に渡って師事してきた先生に
背くことへの複雑な感情、
そして借入金が増大することの恐怖を覚えました。
しかし、いま思うと先生の「異論」「反対」は、
私の思考を鍛えてくれました。
財務を一から勉強しなおしました。
出会ったのがYouTube「中小企業の財務チャンネル」の
森尾勝俊先生でした。
先生の動画で、まさに私の悩みに
ドンピシャのものを見つけました。
「借入金の返済額から目標利益を考えるのは最悪です」
という動画です。
・ 運転資金としての借入金は「返済しない」のが大前提。
・ 利益で返す借入金は設備資金のみ。
・ BSを理解すれば、どの借入を何で返すかが明確になる。
・ BSが読めない人は、負債ばかり見て資産を見ていない。
・ 負債もあれば資産もある。だからバランスシート。
この原理をつかんでから、
借り入れへの恐怖感が消えました。
「借金」ではなく「資金調達」という言葉が
自然に使えるようになりました。
2024年からは森尾先生の所属される古田土会計さんに
税務顧問をお願いしました。
実際に森尾先生に何度も当社を訪問してもらいました。
毎日YouTube動画で学んでいる先生が
当社の顧問に加わってくださっている。
これほど心強いことはありません。
■ さらなる幸運、3つ目の土地
そして古田土会計さんに財務を見てもらい始めた矢先、
2024年10月、隣地(旧・T社)の隣地(旧・F社)の
売却話が降ってわきます。
この時は、もう即断即決でした。
1日だけ熟考し、銀行さんに確認しました。
「確かに一時的な負担は増加するかと思いますが、
それ以上の投資効果が得られると思います。
微力ながら我々でできることは全力で致しますので
何なりとご用命下さい」
なんと心強いお言葉か。
頑張って稼いで利益を出し、納税し、
自己資本を蓄積した結果でした。
「自己資本が貯まると銀行がバックにつく」
という故・木村会長の教えを実感しました。
この隣地2カ所の上に建ったのが
今回の第4工場であり、
その中に17年ぶりの新レーザーが入りました。
■ 隣の土地は倍の値段でも買う
よく「隣の土地は借金してでも買え」
という格言を耳にします。
しかし一連の土地購入で実感したのは
「隣の土地は倍の値段でも買え」という思いです。
隣地を確保したことで工場レイアウトが自在になりました。
動線が整い、余裕が生まれました。
2階の社員スペースも広々です。
ベランダでのバーベキューが楽しみです。
1つ目、2つ目の土地だけでは考えられなかった
利便性をひしひしと感じます。
マンションが来ることへの防衛にもなります。
さらに遠い将来、この土地を離れることがあった場合でも、
大きな「1枚」の土地として高く売却できる期待もあります。
まさに価格以上の価値を感じます。
隣地の価値は「地続き」であること。
だから市場価格の倍でも後になれば
「安い買い物」になる。そう実感します。
■ 「強くて美しいBS」が応援を呼んだ
今回のレーザーは2億円です。
そのうち6,000万円は国の省エネ補助金として
採択されました。これも幸運です。
国が最先端マシンを支援してくださること、
中小企業としてありがたいことです。
そして全ての取引銀行が「長期で応援する」と
支援してくださっています。
17年間の経営改革、
積み重ねた自己資本額が社会的信用になりました。
BS(貸借対照表)は理念を数字にしたもの。
努力して利益を上げ、誠実に納税すること。
チャレンジを恐れずに資金を正しく使う会社には、
お金も人も情報も集まる。
私たちの目指してきた「強くて美しいBS」が
今回の投資を可能にしてくれました。
■ 人が育ったことへの感謝
そして今回の新工場とレーザー導入を支えたのは、
何と言っても社員の皆さんの一致団結と日々の努力です。
とりわけ勤続25年になる前君は
今回も大車輪の働きぶりでした。
1つ目、2つ目、3つ目と
私が新しい土地を購入するたびに
新工場のレイアウトを上書きし続けました。
その本質的で斬新なアイデアが
新工場計画を最善のものに導いてくれました。
そして事務所の要として
堂々たる幹部に育った前田君も勤続20年。
新規開拓営業に燃える大石君も勤続15年です。
彼らの幹部力が会社を牽引しています。
そしてベテランの佐々木さん、
吉山さんが力強く支えています。
中堅、若手がそれぞれの持ち場で成長しています。
たがいに教えあい、協力し合っていること、
社内の水質維持に努めてくれていること。
組織が強固な一枚岩であって初めて、
大きな挑戦が可能になります。
■ 三つの感謝
17年ぶりのレーザーを迎えた今、
しみじみ感謝の思いがこみ上げます。
1.お客様への感謝:
数ある同業他社の中から、当社を信じて
お付き合いしてくださっていることへの感謝。
これからもお客様の期待に応え続けます。
2.社員への感謝:
社員の皆さんの日々の努力、そして一致団結が
今回の新工場計画を可能にしました。
17年間の改革、私を信じてついてきてくださり、
心より感謝します。
3.社会への感謝:
これからも誠実な仕事をし、
納税と透明な会計で信用を積み上げます。
金融機関様・行政の方々のご恩に報いてまいります。
強くて美しいBSが会社を守るように、
信頼関係に満ちた美しい人間関係が職場を守ります。
財務も人間関係も、透明で、公正で、
信頼される会社を目指し続けます。
世界最高峰のレーザー加工機を武器に、
さらにお客様の「ありがとう」を追求してまいりましょう。
今月も、ありがとうございました。
2025年10月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三