最強幹部をつくる極意 [給料袋メッセージ 213]

 

【最強幹部をつくる極意】

 

今月は全国から20名以上の経営者仲間が会社見学に来てくれました。

社員を交えての質疑応答、白熱しました!

[通算 213号]

 

 

 

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

今月は日本プロスピーカー協会(JPSA)製造業部会1周年記念講演会がありました。

私は「最強幹部をつくる極意」というテーマで登壇。

 

この講演会に合わせて全国から学びの同志が大阪に集合し、

20人以上ものメンバーが会社見学に来てくれました。

 

私たち製造業部会メンバーの間では当社の「教え合い」の文化、

そのリーダーである工場長・前君の存在がよく知られています。

私が各地の勉強会でお話しているからです。

 

会社見学では前君、そして若手を代表して

小島君と白濵君を交えての質疑応答がありました。

 

 

 

 

 

■ 「教え合い」前史

 

教え合いが生まれた風景を、前君は次のように語りました。

 

「かつては機械1台に対して担当者が1人と決まっていました。

代わりがいないので休みづらい。

しかも自分がどれだけ忙しくても、周りは助けてくれない。

一番若かったので、声を出しづらかった」

 

「子供が小さいときも休むに休めなかった。

妻が夜中に出産して、翌朝出勤した。

子供の運動会でも、終わったらすぐに出ないと仕事が回らない。

下の世代には、そんな思いをさせたくなかった」

 

前君が当社に来てくれたのは2000年、

私が経営者として2年目の駆け出し時代でした。

 

社長の私が現場に対して言うべきことを言わず、いや、

現場で社員がこんなに困っているにもかかわらず何も分かっていませんでした。

あらためて自らの不明を恥じ、申し訳なく思います。

 

前君のこうした思いが下敷きとなり「教え合い」が始まります。

 

1つの機械を操作できる社員を2人・3人・4人と増やしていきました。

1人の社員が出来る仕事の領域も増やし、

二刀流・三刀流・四刀流の社員を育てていきました。

 

 

 

 

 

 

■ 自分の給料は自分が決めている

 

2002年、社運を賭けた大型の設備投資(プラズマ加工機)を計画した時のこと、

そのマシンの下見に前君と大阪府下のとある工場を訪れました。

機械の操作・製品の片づけを2人の作業員がやっていました。

 

前君がひらめきます。

「僕なら一人でできます、その分、下さい」

 

それが少人数でやること、社員数をいたずらに増やさないことのスタートでした。

 

それは、のちに財務を勉強した私が

「社員1人当たり」の指標にこだわることにも通じました。

 

「社員1人当たりの粗利益額」が大きければ大きいほど好業績になり、

「社員1人当たりの自己資本額」が多ければ多いほど強くてつぶれにくい会社になります。

 

これらが当社の追いかける2大指標であり、分母(社員数)は小さい方が達成しやすい。

その方針にもかなっていました。

 

導入したプラズマ加工機は前君の強力なリーダーシップと

鬼神のような働きぶりで大成功し、会社は好業績を重ねました。

 

経営者として彼の功績に報いないわけにはゆきません。

 

「会社が自分の給料を決めているんじゃない、

結局は自分の働き方が自分の給料を決めている」

 

前君の仕事哲学が生まれた原風景です。

 

■ 自分という「商品」を会社に売る

 

前君は後輩指導のときには必ず「タイムアタック」と称して、

同じ分量の仕事をいかに短時間で終わらせるか、それを競わせています。

 

「一生懸命に仕事をする。体にスピードを植え付ける。

時間が余ったら機械のメンテナンスもできる。

目の前の仕事で一杯いっぱいなら機械の不調にも気づけない」

 

「後輩には仕事の標準的な時間(スピード)を示してあげる。

『遅くともここまで、これを下回ると自分の給料も稼いでいない』とハッキリ言う」

 

彼が24歳で当社に来た時、すでに1歳の赤ちゃんがいました。

そして2人目・3人目・4人目とつぎつぎと子宝に恵まれます。

 

「子供が何人もいた。

だから何歳までにいくらほしい、そう目標を持って仕事をした」

 

「おってナンボでなくて、やってナンボ。

やってナンボでなくて、出来てナンボ」

 

「言われたことだけをやるのは作業、頭を使って初めて仕事」

 

「サラリーマンであっても自分は社長だと思う。

自分という商品を坂元鋼材に売っている」

 

こうした数々の名言を生みながら、彼の働く姿勢はどんどん鋭くなりました。

 

社運を賭けたプラズマを成功に導き、次のレーザーも大成功させました。

そして今回の15年ぶりの新工場・新レーザー計画でも先頭に立ってくれています。

 

「目標の金額に近いものをもらえるようになった、

自分の考えは間違っていない」——。

そう述懐してくれます。

 

社員の頑張りに報い続けること、それが経営者としての私の責任です。

 

 

 

 

 

■ 後輩が続く

 

現場では前君の分身が育ってきました。

「最初は自分一人だったけれど、大石君が同じ姿勢で働き、後に続いてくれた」

 

大石君は「ゲンバ男子」としてマスコミに何度も取り上げられましたが、

男前だけではなく人に好かれる性格で営業向きです。

工場の仕事をしながら新規開拓や既存客訪問にも余念がありません。

 

「現場では前さんに勝てる気がしないので、前さんがしないことをします」——。

それが大石君の持ち味を生んでいます。

 

その大石君に今月、4人目のお子さんが誕生しました。

子供が増えるごとにモチベーションが上がっていったという点でも先輩を追いかけています。

 

■ 自分を原版とした育成

 

見学会では若手にも質問が飛びました。

将来の目標を問われて、白濵君が答えました。

「前さんみたいになりたい。会社の仕事をほとんど全部できる、カッコいい」

 

白濵君を見る前君の表情が、また良かった。

 

「いまは後輩の成長が嬉しい。

本当は自分で機械を触るほうが楽しいけれど、

それでは後輩が育たないし、伸びるチャンスがない。

この子がこんな風に育ったら楽しい、この子はこっちに向いている、

とか考えて自発性を大切にして育てています」

 

自分が成長軸を伸ばしきったら、次は後進育成という貢献軸を伸ばす。

知らず知らずのうちに指導者としての階段を一歩ずつ、勝手に上っています。

 

最強幹部は育てようとして育つものではない、

結局は本人が自発的に成長して上り詰めていくものだ。

前君を見ているとそう思います。

 

■ 若手2人の志望動機

 

見学者からは「なぜこの会社を選んだのですか?」

と若手2人に質問が飛びました。

 

白濵君は「条件が良い」と高校の先生から勧められたようでした。

「休みが多い割には給料がいい。

自分より給料の高い友達もいるけど、それは残業しまくってのこと」

 

小島君は進路指導の先生から会社に求めるイメージを聞かれたようです。

「職場の人間関係です」と即答すると、先生が紹介してくれたのが当社でした。

 

たった一度だけ私が高校を訪問した時のことを、

先生が覚えてくださっていました。ありがたいことです。

 

■ 人が「集まる」会社をつくる

 

思えば採用に苦労した時代が長くありました。

まだまだ努力が必要ですが、働く環境を整え続けたことで状況は好転しました。

 

人間には「5つの基本的欲求」があります。

 

① 生存の欲求

② 愛・所属の欲求

③ 力の欲求

④ 自由の欲求

⑤ 楽しみの欲求

 

それらが満たされる職場づくりを長い年月をかけて追い求めています。

 

① 休日の多さ・残業の少なさ・有給休暇の取りやすさ

② 人間関係(風通し)の良さ・対人関係の障害がないこと・連帯感があること

③ 良い仕事をして力を発揮すること・人の役に立つこと・認められること

④ その結果として好業績を実現して高い報酬を得ること

⑤ 仕事を通じて成長すること・仲間とともに仕事を楽しむこと

 

これらの追求に終わりはなく、その結果として人が「集まる」職場にしたい。

私が3代目となった25年間、前君が当社に来てくれた24年間、

一緒に苦労して描いたビジョンです。

 

■ 最強幹部をつくる極意

 

結局のところ「この職場を大事に思う心」こそが、

最強幹部が育つ極意ではないかと思います。

 

愛社精神という言葉がありますが、

社員をいくら拝み倒したところで会社を好きになりはしません。

 

「この会社で成長することで自分の夢がかなう」

「この職場で働くことで自分の願望が実現する」

 

そう本人が心底から思って初めて、本気の仕事をしてくれます。

 

経営者にできることは、その環境づくりに尽きます。

そして成長の階段を用意し続けること。

その結果、上り詰める幹部は勝手に階段を上ってゆきます。

 

■ 人の育つ良い会社を目指して

 

見学会のラストでこんな質問が出ました。

「あえて、坂元社長に直してほしいところは?」

 

え? 私が試される瞬間でした。

 

「親父ギャグがキツイときがある」と、さらりとかわした小島君、見事でした。

 

前君は「人の話を聞いてくれてない時がありますねー。

『これ、言いましたよね』って。だから基本的に3回言うようにしている」

 

会場、爆笑でした。

 

でも続けて「基本的に何でも全部オープンにしてくれているから、嬉しい」と、

さりげなくフォローも利かせてくれます。

 

私への苦言を厭わないのも幹部の務めで、彼は耳の痛いこともしばしば言ってくれます。

しかし私の思いを一番に汲んでくれるのも幹部の幹部たるゆえんです。

 

これからも人の育つ職場を目指して、社員とともに会社を磨きます。

 

2024年9月25日

坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

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