育てる責任、育つ責務(私たちの人材育成論) [給料袋メッセージ 223]

【育てる責任、育つ責務】

 

給料袋のメッセージを書きました。会社とは「人間」の集合体。

だからこそ人間理解が必要だと、つくづく思います。

この探求がまた、よろこびです。

 

[通算223号]

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

この3日間、会社を留守にして経営者教育のセミナーに出席しています。

41歳から始めて15年目です。

 

経営者として必要な様々なトレーニングを受け、

価値観を磨き、判断力を鍛えた15年間でした。

 

おかげで2009年度の大赤字から会社は立ち直り、

8億円の設備投資が可能になりました。

 

■ 可能思考と自己暗示

 

講座で教えられる、ある3つの印象的な言葉があります。

自らを鼓舞し、暗示をかけ、日々挑戦していく精神を養います。

 

① あなたは出来る。

② あなたには価値がある。

③ あなたはあなたのままで素晴らしい。

 

心を込めてこの言葉を何度もつぶやくと、

腹の底からエネルギーがわいてきます。

魔法の言葉であり、まさに言霊(ことだま)です。

 

これまでの15年間、いくつもの正念場がありました。

その時々にこの言葉を呪文のように唱えました。

 

■ そのままで、いいのか?

 

しかし、です。

正直なところ、この3つ目の「あなたはあなたのままで素晴らしい」

という言葉だけが「100%そうだ」とは腑に落ちませんでした。

 

まず私自身の欠点が思い当たります。

安易な道を選びがちなこと、怠惰なところ、高い目標にひるむこと、

他責なところ、などいくらでも出てきます。

 

だから「あなたのままで素晴らしい」という言葉に違和感がありました。

 

他人に対しては、もっとです。

ひとは誰しも他人の欠点は目に付きやすい。

だからこの3つ目の言葉だけは心底からの肚落ちが、ない。

 

ところが最近のことです。同じ学びを続けている経営者から教えられました。

彼も同様の疑問をずっと持っていたそうです。

 

遅刻する社員、成長しない社員、態度の悪い社員。

それなのに「あなたのままで素晴らしい」とは、何ごとか?

 

ところが学び続けた結果、この疑問が氷解したそうです。

一連の講座で、次のような論旨が展開されました。

 

■ 三日月に見えても、本当は満月

 

人はもともと「完全」な存在であり、

もし不完全に見えてもそれは本人の能力が未開発なだけである。

 

三日月に見えても本当は満月であり、

それは光が当たっていない部分があるだけ。

 

だから上司や経営者の仕事は、

部下やメンバーに光を当てて本来の能力を引き出すこと。

 

これが、私たちが学ぶリードマネジメント(選択理論心理学)の教える人間観だ、

ということでした。

 

これを聞いて私は目から鱗が落ちる思いでした。

 

■ 育てる責任・育つ責務

 

そう、この言葉が「現状肯定」ではないということが分かってきました。

 

「あなたのままで素晴らしい」を表面的に受け取ると、

「ならば努力しなくてもいい」と誤解されかねない。

それでは甘やかしの言葉になってしまう。

 

そうではない。

 

本来は「完全」な存在である自分なのに、

まだまだ三日月にしか見えない自分。

だからこそ内在する真価本領を発揮させる必要がある。

 

上司には育てる責任があり、部下には育つ責務がある。

 

いまのままでOK、怠惰も遅刻も許される、成長しなくてもよい、

改善は求められていない。

 

そんなことでは、まったくない。

 

あなたはあなたのままで素晴らしい、

だからこそ本来の価値ある自分を輝かせる責任がある。

 

逆に言うとそんな「厳しい要求」ですらある。

そう理解し、腑に落ちました。

 

■ 苦い過去

 

あらためて、経営者としての26年間を振り返りました。

三日月にしか見ることが出来ず、見放してしまった過去がいくつもありました。

 

遅刻、緩慢な働きぶり、協調性の欠如など、

改善なしに(させずに)去っていった社員が何人もいました。

 

それは特に私の30代のころ、

リーマンショック以前の時代(私の我流経営時代)に顕著でした。

不満足な勤務態度から結局は離職を促すことが、相次ぎました。

 

もし私に「三日月に見えていても、本来は満月」

と認識できていたら、関わり方は違ったはずです。

 

リーマンショック後の15年間に学びを進めました。

 

採用基準を磨き、過去の反省から

「私たちの求める人物像」「一緒に働きたい社員像」を全員で議論しました。

それからミスマッチが減り、社員が定着する組織にだんだんと変貌しました。

 

それでも三日月のまま社会に還すこともありました。

 

もし早い段階から「育てる責任・育つ責務」を意識しておれば、

結果は違ったはず。

私の至らなさであり、苦い思いです。

 

■ 教えあい、育ちあい

 

その一方で、いま在籍してくれている皆さんの輝きぶりは素晴らしいものです。

 

ほとんどが新卒、あるいは20代も若いうちからの入社ばかり。

当社で社会人としての経験を積み、

鉄鋼溶断業という未知の専門分野に飛び込んでくれたわけです。

 

「少数精鋭主義」という会社の方針を理解し、

一人何役もの仕事をこなせるように教えあいを進めてくれています。

 

社歴半年、5年、8年、12年、15年、20年、25年と、

すなわち20代・30代・40代の皆さんがそうです。

社会人としての能力、プロ職人としての技を当社で開発してくれました。

 

廃業した同業他社から移籍してくれたベテランも、

当社に来てから「教える」という能力をさらに磨いてくださいました。

 

■ 自らの能力を開発しよう!

 

三日月が半月になり、やがて満月になる。

この過程こそが教えあい・育ちあいなのだと、つくづく思います。

 

どんな三日月も本来は満月。

自らの内在している素晴らしい能力を磨くこと、引き出すこと。

これを生涯続けていくことこそが人間としての正しい姿なのだと改めて思います。

 

自らに秘められた能力を、さらに開発していきましょう。

 

私たち一人ひとりの成長が会社の未来をつくり、人生を豊かにします。

皆さんの日々の努力に心から感謝します。ありがとうございます。

 

2025年5月23日

坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

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