【長期財務ビジョンがもたらす心の平安】
ことし当社が作る新工場は久しぶりの大型投資です。
銀行から多額の融資を受けてのことですが、その計画は妥当かどうか?
とくに財務の視点から検討しました。
目的は社員とご家族の皆さんに安心していただくことです。
そして私自身も。
[通算193号]
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いま検討中の新工場計画について書いてみます。
さまざまなアイデアが出るなかで費用の総額が明らかになってきました。
土地1.2億円、建屋1.5億円、レーザー2億円、合計で5億円規模の投資になります。
このような大きな決断を下すときに大切なのが次の3つの視点です。
青木仁志アチーブメント社長から教えられたものです。
・ 長期的判断
・ 客観的判断
・ 本質的判断
この計画は20年スパンでの投資の側面(レーザー加工機)、
そして50-100年の側面(土地・工場)があります。
まさに「長期的判断」から下したものです。
■ 良いBSがもたらす心の平安
そして5億円という投資が可能かどうか。
「客観的判断」を加えてみます。
それは融資をしてくださる銀行(他者)からの客観的な視点です。
私がかねてBS(バランスシート=貸借対照表)を重視した経営を心掛けているのは、
みなさんよくご存じの通り。
とりわけ「自己資本比率」と「社員1人当たりの自己資本額」を重視してきました。
この2つの指標が高まれば高まるほど、
どんな不況にもビクともしない会社になるからです。
リーマンショック直後・2009年度(58期)の決算書では
自己資本額は5000万円(社員12人で1人当たり約400万円)、
そして自己資本比率は10%でした(総資産5億円)。
当時は新工場(第3工場)を建ててレーザーを導入したばかり、
年商を上回る4億円の借金が重くのしかかっていました。
負債(他人のお金)9割、自己資本(自分のお金)1割という心細い状態。
そこからの奮起で黒字を重ねた結果、
2019年度(68期)は自己資本額が2.9億円(社員14人で1人当たり2000万円強)、
自己資本比率は70%にまで高まりました(総資産4.1億円)。
負債(返すお金)3割、自己資本(返さなくていいお金)7割です。
事実上の無借金で、経営がとても楽になりました。
その後も黒字を重ね、直近2022年度(71期)決算では自己資本3.7億円
(土地を購入したので総資産が膨らんで7.2億円=自己資本比率は51%)となりました。
社員1人当たりの自己資本額は2500万円。
理論上は5年間仕事がゼロでも給料が支払える。
この安心感は何物にも代えられません。
会社には社員とご家族の皆さんの生活がかかっています。
だからこそ何があってもビクともしない経営にし続ける責任が私にはあります。
■ 高すぎる自己資本比率はアカン?
私が経営の勉強に没頭した40代、
この「社員1人当たりの自己資本額」という考え方を授けてくれたのが
木村塾(BS経営研究所)の故・木村勝男会長でした(2018年没)。
その木村会長は「自己資本比率は高すぎてもアカン!」とおっしゃいました。
会長の残した言葉から振り返ってみます。
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自己資本「比率」は高すぎてもアカン。
業種にもよるが20%でいい。
高すぎる自己資本比率は安住を生む。
器は分母、壁は分子。
大きな分母(自己資本)があるということは、それだけ大きな壁に挑戦できるということ。
自己資本比率が高すぎるのは分厚い自己資本を持ちながらチャレンジしていないということ。
挑戦する勇気を持て!
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まさに近年の「高すぎる自己資本比率」に私は安住していました。
リーマンショックから14年、ようやく手にした心の平安でした。
しかし、それでは成長がない。
■ 逆境は人を作る、順境は人を滅ぼす
私が木村会長に師事したのが2011年から2016年まで。
すでに7年以上がたちました。
当時の会長の言葉を読み返すと、まるで私の心の弱さを洞察しているかのようです。
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ぼくは「資金調達」と言うが、皆さんは「借金」と言う。
借金をしたがらない。
そうやない。ヒトを活かし、モノを活かし、カネを活かす。
それが経営、それが起業家。
皆さんは「無借金経営」を自慢する、借金が無いことを自慢する。
あほか!
無借金が悪いとは言わん、気が楽や。
しかしそれでは「逆境という先生」がついて来ない。
借金がイヤ?
小っさいし、伸びない。保証してあげる。
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まさに今回の5億円という投資額にひるんでいた私にズバッと響く言葉です。
「資金調達」という言葉に背中を押される思いです。
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成功の反対は失敗やない、何もしないこと。
変化せなアカン、変化と書いて「チャンス」と読む。
おびえる人は安定を求めとる。
変化をチャンスにする人を起業家という。
ホームドラマの人生やない、大河ドラマの人生を生きろ!
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久しぶりに会長語録を読み返し、体が熱くなります。
会長が常々口にしていた
「逆境は人を作る、順境は人を滅ぼす」
という言葉がよみがえります。
木村会長死して5年、木村塾が閉じて7年。
その教えの確かさをますます実感します。
■ 決算書は経営者の通信簿
木村会長は資金調達の大切さを常に説きました。
「決算書を良くして銀行の信用を高めよ」というのが口癖でした。
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学校の通信簿は、ええ高校・ええ大学に入るためのもの。
経営者にも通信簿がある、それが決算書や。
誰が見ているか?
「世の中」が見ている、なかでも一番見ているのが銀行や。
銀行はBSのいい会社に寄ってくる。
銀行は貸すところがなくて困っとる。
お金はお金が好き。お金はお金に集まってくる。
BSが良くなると銀行が味方に付く。これは強い。
銀行をバックにつけろ!
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私がリーマンショック後に大赤字を出したとき、
当時のメイン銀行だった1行からいただいた融資条件はグンと厳しいものでした。
それまでとは全く違う固い態度、まさに原因と結果の法則でした。
私が大赤字を出して決算書が悪化した結果です。お金に嫌われたのでした。
だからこそ決算書を良くすること(BSを良くすること)に燃えました。
それも原因と結果で、いま銀行さんは積極的に貸してくださいます。
まさに感謝です。
■ 10年後のBS目標
新工場は約1年後の完成を目指しています。
最新のレーザーを増強することで生産能力を高めます。
それが「本質的判断」です。
われわれ製造業は装置産業です。
最新の設備を持つことがお客様へのサービスに直結します。
5億円の投資を実行した直後、
2024年度(73期)は自己資本4.4億円(総資産11億)
=自己資本比率40%にいったん下がります。
新レーザーを武器に毎年の利益を重ね、借入金を返済します。
その結果、5年後の2028年度(77期)には自己資本6億円(総資産10億円)
=自己資本比率60%の安定した財務に戻る。
10年後、2033年度(82期)は自己資本10億円(総資産13億円)
=自己資本比率77%。
それを社員20人態勢で成し遂げると、社員1人当たり5000万円の自己資本額。
単純に言えば「10年間売上ゼロでも給料を払える」状態です。
この財務であれば業界トップ水準の報酬体系が必ず実現します。
これが私の目指す「小さな超一流企業」です。
■ 永続のための挑戦
まずは向こう数年間、この新工場・新レーザーの成功に力を尽くします。
それが次の投資を可能にします。
近年、第2拠点として遠隔地での展開も検討しました。
当社の社是は「永続」です。
30-50年先を考えると、さまざまなリスクを考慮せねばなりません。
エリアを分けての第2拠点を模索します。
その投資額は10億円を超えるでしょう。
いま当社が年間で生むキャッシュフローから考えると20年以上かかる計画です。
私の年齢は53歳。
残りのビジネス人生をかけて、この大仕事をやり遂げます。
企業経営とは終わりのない挑戦の連続だとつくづく感じます。
これからも顧客満足度・社員幸福度・社会貢献度を追求していきます。
その大きな目的のために是非お力をお貸しください。
2023年5月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三