離職ゼロ10年、その背景 [給料袋メッセージ 197]

【離職ゼロ10年、その背景】

きょうは25日、給料袋のメッセージを書きました。
社員の定着率が大幅に向上し、今月で10年間離職ゼロ。
その大きな要因が若手社員の成長です。

 

 

理念に合致した人材を採用し、大切にしたい価値観を共有していった10年間でした。
その象徴として入社ちょうど10年になる若手社員にスポットを当て、

この間の歩みを振り返りました。

 

[通算197号]

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

今月は、入社して丸10年になる河野君にスポットを当ててみます。

 

21歳で入社した彼も31歳。まずレーザー5年、そしてガス5年。

 

現場の中枢を担う堂々たる中堅に育ってくれました。
私は営業用ホームページの記事として毎月ブログを書いています。

 

そこに先月、彼のインタビューを載せました。

それをもとに彼とともに歩んだ10年間を振り返ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【問】10年間を振り返って、良かったことは何ですか?

 

入社してすぐに前さん(当時・レーザー担当、現・工場長)の下に入り、

仕事の基礎を仕込まれたことです。

「考えて働くこと」「一歩先を読むこと」を徹底的に鍛えられました。

 

その日の切断予定・お客さんの要望・納期を総合的に考えます。

それを前日にイメージしてCAM班に指示します。

先を見通して仕事をすることを学びました。

 

さらに仕事の優先順位を考えることです。

自分の仕事を先にするべきか、ほかの人の応援に行くべきか。

 

 

「工場全体を考えて仕事をするように」と癖づけられました。

おかげで全体最適を考える習慣が身につきました。

 

仕事には忙しいときと、そうでないときがあります。

手すきのときに何が出来るか考えることも大事です。

 

例えば、普段は出来ないようなマシンの整備・掃除です。

まとまった時間を見つけてメンテナンスをし、マシンの健康を維持します。

 

材料の片づけも大事です。

とくに残材を分かりやすく整理しておくと、

忙しいときにでも欲しい材料がすぐに見つかります。

 

【問】思わぬ休職もありました。

 

入社5年目、右足が不調で歩行困難になりました。

いったんCAD(内勤)に異動させていただき、様子を見ました。

けれども改善しません。

これから先どうなるのか不安でした。

 

3カ月間の休職をもらいました。

病名は良性の骨腫瘍。

入院して手術・リハビリ。

 

休職中は皆さんに助けられました。

事務所から工場に応援に出ていただいたりもしました。

ありがたかったです。

 

3カ月して職場復帰。

まずは動きの比較的少ないNCガス切断機に入りました。

当時NC担当だった荒川さんが快く担務替えに応じて下さいました。

 

おかげで徐々に慣らし運転ができ、足は順調に回復していきました。

 

あれから5年、いまは絶好調です。

趣味のサーフィンも復活しました。

皆さんに支えられて完治できました。感謝しかありません。

 

【問】10年後のビジョンは何ですか?

 

10年前に目指していたことが、いま出来るようになっています。

10年後は、いまの理想を叶えます。

 

ガス溶断では難易度の高い「2工程切断」を自在に出来るようになります。

ベテランの吉山さんに認められることが目標です。

 

「おお!よく切れるようになったな!」
「おお!こんなん切れたんか!」

 

そう言ってもらうことが目標です。

 

いまも合格と言っていただいていますが、

それは「5年目にしては」という条件付きと思っています。

奥深いガス溶断を完全にマスターするにはまだまだ年月がかかります。

 

【問】仕事で嬉しいことは何ですか?

 

数モノをトーチ(吹管)多数で効率的に切断したとき、

小さい残材を使って無駄のない仕事をしたとき、

そして厳しい短納期をものにしたときです。

 

そう、自分のイメージ以上に仕事が早く・良く出来たときです。

その結果、お客さんが喜んでくれます。

自分の成長も感じられます。

 

無我夢中で仕事をし、気づいたら10年目です。

多少のムラもありましたが(笑)、自分としてベストを尽くした10年です。

結果、会社が在庫する板厚をすべて切れるようになりました。

 

仕事で心掛けているのは、前さんの口癖に共通します。

 

言っていることより、やっていること。
やっていることより、出来ていること。

 

これからも精進して、お客様と会社から必要とされる職人になります。

 

(インタビュー終了)

 

 

 


 

 

 

■ 工場長の思想を受け継ぐ

 

彼とともに歩んだ10年を振り返りました。

まさに直属の先輩である前君(工場長)をモデルに成長しました。

 

モノづくりへの情熱・機械の探求といった

当社の仕事の本質を継承しています。

 

 

さらに「工場全体を見渡して全体最適を考える」という

前君の仕事哲学・思想を受け継いでいます。

これが、嬉しい。

 

前君も彼の仕事に大きな信頼を寄せています。

 

「仕事が丁寧で確実。キッチリとした性格で、モノづくりに向いている」
「整理整頓が完璧で工場がいつもキレイ。機械への探求心も高い、社内で俺の次かな?」

 

名工(マイスター)として成功する素質を河野君から引き出しました。

素晴らしい分身を育ててくれたものです。

 

■ ベテランさんの「働く姿勢」も

 

そして、ことし6月に他界された塩谷さん(享年82)の影響も大きく感じ取れます。
塩谷さんは、それまで勤めておられた職場が廃業したため45歳で当社に来られました。

 

そして定年を超えて71歳で退職されるまでの長きにわたり、工場を支えてくれました。

 

入社が遅かった塩谷さんは機械(ガス・プラズマ・レーザー)は不得手でした。

 

 

だからこそ切断以外の仕事を一手に引き受けられて、

ほかの社員さんの仕事がスムーズにいくように、

さまざまな気配り・心配りを尽くされました。

 

 

それこそが「自分の本領」と思っておられました。

 

早朝の鍵開け・ガスの開栓・清掃から始まり、

切断品のノロ取り・お客様を迎える段取り・整理・出荷・引き取り・配達・伝票整理と、

一人で何役もこなされました。

まったく筋金入りの「仕事師」でした。

 

河野君は塩谷さんの最後の1年、一緒に仕事をしました。

「文ちゃん」と可愛がってもらっていました。

その働く姿勢を間違いなく受け継いでいます。

 

■ 大切にしたい価値観を体現

 

経営者の私としても河野君には大いに感謝しています。

技術者としての成長もさることながら、

会社が大切にしたい価値観を体現してくれています。

 

 

つまり勤務態度・働く姿勢が本当に気持ちよく、模範となっています。

 

会社では年度末に「理念アワード」としてその年度の表彰を行います。

360度評価も取り入れて、

会社の大切にしたい価値観に沿ってくれた社員をたたえます。

 

① あいさつ
② チームワーク
③ 業務スキル
④ マインド
⑤ 信頼性

 

これからの各項目の中で、真っ先に来るのが「あいさつ」です。

 

河野君は入社以来ずっとあいさつ部門で1位を取り続けました。

その後の新入社員に1位の座を取って代わられることもありましたが、

それにしても彼の気持ちの良いあいさつが職場の空気をどれだけ清新にしたことか。

 

誰でもできることを、誰もできないほどに立派にやり続けてくれました。

 

理念アワードの「あいさつ」について、社内文書では次のように定義しています。

 

 

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「相手の目を見て、率先して明るいあいさつが出来ている。

特に朝一番と退勤時。

声を掛けられた時に、明るくハッキリと返事をしている。

お客様と仲間に好印象を与えている。

あいさつは職場の潤滑油であり、素直さのバロメーター」

ーーーーーーーーーー

 

この通りのあいさつを10年間にわたって体現してくれました。

会社の大切にしたい価値観を大切にしてくれました。

 

この10年間は業績が向上し、職場の雰囲気が段々と良くなっていった10年でした。

 

今月で離職者ゼロが10年になります。

定年退職(4名)・試用期間満了(1名)を除けば、離職がゼロ。

2013年から入社した若者(8名)が全員定着です。

 

それ以前の定着率が3割だったことを考えると、別の会社に生まれ変わったと言えます。

 

それ以前とこの10年の違い。

 

 

それは理念に合致した社員を採用し、

会社の目指す方向性・大切にしたい価値観を

みんなで追及していったことと言えるでしょう。

 

 

よい会社を全員で作り上げようと努力してきた10年間に心より感謝いたします。
今月も、ありがとうございました。

 

2023年8月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

 

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