【損得ではなく、正しいか正しくないか!】
沢根スプリング会社見学
「日本でいちばん大切にしたい会社大賞(中小企業庁長官賞)」を受賞された沢根スプリング株式会社(浜松市)を企業見学。アチーブメント主催によるもので、青木社長、そして全国から集まった同志の経営者とともにお伺いしました。人を大切にすることを目的にした素晴らしい経営をしている会社を実際の目で見ることができました。
1966年創業で、現社長は2代目。創業5年目の時に初代社長が作られた経営理念で、すでに「人を幸せにする」という経営の目的が打ち出されている。そのことを追求した結果が好業績に表れ、自己資本比率も70%以上。社員は53人規模だが、いたずらに大きくすることは求めない。量(規模や売上高)ではなく一人一人を幸せにすることを目的にした経営。「バランスが大事」「不自然なことはだめ」「損得よりも、正しいか正しくないか」という価値判断の基準。生き残るために続ける「小さな差別化」。
正しい経営とその結果もたらされる好業績。
今日もまた、お手本とするべき素晴らしい会社に出会いました。感謝。
【経営理念】
① 会社を永続させる
適正な利益を上げ、適正規模を守り、「やらまいか精神」で堅実経営に徹し、自らの力で考え・作り・売る を推進する。
② 人生を大切にする
お互い1回だけの限られた人生であり、その人生を大切にする。
社員が健康で幸せになり、80%で満足し働く喜びや自己成長を感じられる会社にする。
③ 潰しのきく経営を実践する
何時でも5年先を思案し、バランスよく、どんな環境にも対応できる柔軟な潰しのきく経営を実践する。
④ いい会社にする
自分の人生をより豊かに、みんなの人生にも配慮できる人の集団にする。
いい人、いい会社と付き合い、正しい商売をし、他社のやらない、やれない難しい仕事にも積極的にチャレンジする。
会社を取り巻く全ての人々から「いい会社」と言われる会社をめざす。
⑤ 社会に奉仕する
教わったら教えよ、恩を受けたら返せの往復の考え方を大切にし、人のため社会のために奉仕し、国際的な協調もする。
【沢根社長の報告から】
・〈目的〉働く社員さんを幸せにする。成長も利益も手段に過ぎない。
・〈価値〉小さくても輝きながら永続させること。企業の拡大よりも、自然体でバランスよく、毎年少しずつ成長するのが望ましい。
・ 大切にする対象
① 社員とその家族
② 協力企業の社員
③ 顧客
④ 地域社会
⑤ 株主
・仕入れ先もユニホームが違うだけ。協力企業の社員も大切に。
・36歳で先代社長(創業者・父親)から経営をバトンタッチした。親父は丁度60歳。それからパッタリと会社に来なくなった。親父も36歳で創業した。私(沢根現社長)はいま60歳。5年後の65歳の時に息子が36歳になる。
・独自性、よそと違うことを、いい会社と連携したい。だから「小さな差別化」をキーワードにした。いきなり大きな差別化を図るのではない。他社も持っている機械はほとんど同じ。材料も。問題は、どう差別化するか。
・社内は黄色ばかり。会社のロゴから看板、社内の製品箱に至るまで黄色であふれている。これも小さな差別化。
・会社の規模をいたずらに大きくせず、特徴ある子会社をもつ。ネット販売の子会社は、少量のお客様相手に。手作りばね専門で社員5名の子会社は、作り方を差別化したもの。利益率はこの会社が一番高い。
・海外グループ会社も。1993年中国無錫に合弁会社。日本で作っていないバネを作る。中国の大手自動車会社・第一汽車と合弁で作ったもの。
・経営理念5つ。その順番も大事。まず存続してこそ人を幸せにもできるし、貢献もできる。
・経営理念は先代社長が昭和55年に作ったもの。昭和41年の設立から経営する中で直面した問題や苦労をベースにし、そこから学びながら作った。
・人は結果が近くにあるものは飛びついてやるもの。でも理念、風土など、すぐに結果が出ないものはなかなか取り組まないもの。だが、そこにこそ値打ちがある。
・いい会社とは?
① 利他の心が匂う経営理念
② 働く社員が幸せになる会社
③ お客様に喜ばれる製品やサービスを提供し、社会に貢献する会社
④ 収益が高い会社(必須)
・当社のあるべき姿。働く社員を幸せにする。成長も利益も手段に過ぎない。
・会社を存続させるために。1社当たりの売上比率を小さくする。経営環境の変化に強い会社を目指す。
・①働くこと自体から得られる幸せ。②経済的な幸せ。その順番が大事。まず②より①だ。手近なことでなく、遠くにあるものを先に大事にする。社員が仲良く、働き甲斐がある会社にする。その結果が業績となり、それが給与にも反映していく。
・〈求める人物像〉
■ 肉体、心、社会性、魂が健康な人
■ 人柄がよい人(心の偏差値、素直、親切、思いやり、感謝)
■ 結果につながる能力のある人(読み・書き・計算)
■ 物事に集中して突き詰めたこと、継続実行する人
■ 利他主義である人
■ チームワークがある人
■ 定年まで勤めようと考えている人
■ 残業をしたくない人
■ 禁煙につとめる人(非喫煙者)
・規模は小さくてもいい。輝きながら永続する会社に。いたずらに大きくせずに適正規模を守る。
・考え・つくり・売る スローガン=出来ていないから掲げる
・需要が供給を上回った時代(高度経済成長時代)はとっくに過去のもの。黙っていては売れない。
・ボリュームではなく、数が小さくても喜ばれる仕事をしたい。大手の下請けではダメ。数が多くなると値下げ要求が付いて回るし、いつの間にか仕事をよそに出されたりする。
・業界も分散・多様化させる。一業種だけではだめ。中身も変わる。
ピート品ばかりでもダメ。スポット品の比率を高めていく。手間がかかって面倒だけれども小口分散化が大事。ボリュームではなく、数が小さくても喜ばれる仕事をしたい。大手の下請けではダメ。
・1個の仕事と10万個の仕事。どちらの見積もりから回答するか?あえて1個のほうを優先していく。量産品は、結局は値下げ要求が来るようになる。そのような仕事にばかり頼っていては体質として危険。
・数が多くなると不断に値下げ要求が来るし、いつの間にか仕事をよそに出されたりする。
・人生を大切にする。80%で満足する。腹八分目。遊び、余裕が大事。
・残業、夜勤をしない。家族そろっての夕食ができるように。残業は6時間程度/月。
・効率性も大事だが、それ一辺倒ではいけない。たとえば24時間営業はおかしい。不自然なことはだめ。
・設備の稼働率向上の追求。それは過去の話。余裕が必要。社員に長時間残業を強いたり24時間操業をしたりするのは不自然。損得ではなく、正しいか正しくないか。それを判断基準にする。
・100年カレンダー。人生を大切にする、という説明にちょうどいい。人生は限りがあるもの。遠くで見てみる。すると気づくものがある。
・総務の女性が今年、4カ月間の世界一周旅行に行った。2年間計画したものだった。
(坂元は、あとでその女性に尋ねてみました。「有給休暇ではとても足りないのでは?」と。すると、「会社は休業を認めてくれました」と心から感謝している様子。勤続まだ5年目とのこと。社員の自己実現を本当に応援する企業姿勢に感銘を受けました。)
・社員の禁煙を応援する。禁煙の大切さを説き続けるし、喫煙者には「禁煙外来」の受診を勧める。費用を会社負担で。喫煙者は採用しない。
・人生貸借対照表。個人の魅力アップシート。
・給与明細書に社長メッセージ。社員とご家族の方へ。11年間継続中。
・社員文集。退職のときの記念にもなる。
・ありがとうカード。もらった人、あげた人、どちらにも100円を進呈。
・全社懇談会を毎月実施。23年間継続中。社風づくり、風土づくりのために。
・非効率こそ多様性の原動力。
・管理が経営ではない。経営は変えていくこと。自分も変わる、会社も変わる。失敗をしなければわからないことがある。間違いを恐れて何もしないのが最も恐ろしいこと。
・「世界最速工場」「製造小売業」を目標に。これからは物づくり、物売りだけでは儲からない。サービスを大事にする。
・人間の究極の幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること。日本理化学工業の大山社長の言葉に感銘を受けた。
・なぜビジョンが必要か。ジグソーパズルに喩えてみる。パズルには絵や写真などのビジョンがある。だからパズルを完成させることができるし、楽しいし、早い。もし絵も写真も何もない真っ白なパズルだったらどうか。四隅のパズルだけははめれるだろうが、その先をやるだろうか。楽しいだろうか。
(この話はぐっと響いた。翻って私=坂元は社員にきちんとビジョンを示しているだろうか。わが社の社員はビジョンが見えているだろうか。)
・効率主義一辺倒は、工程分業型になる。組織も分業型になる。これは効率主義の組織。そうではなく、一人で最初から最後まで責任をもって作る。
今日も社員に留守をお願いし、こうして遠くまで学びに来れました。ありがとうございました。感謝して、この学びを実践に移します。