恐るべき未来か・・・ [給料袋メッセージ 78]

【恐るべき未来か・・・】

 

 今日は25日。月給袋のメッセージを書きました。
 経営や仕事の話から少しはなれて、最近読んだ本のことを書いてみました。(通算78号)

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

いつも社業への貢献、ありがとうございます。暑い日が続きますが、ご家族の皆さんもお元気でしょうか。いつもこの月給文章に入れる手紙は、どちらかといえば固い話が多いので、今回は少し趣向を変えてみます。
 

私が最近読んだ本の内容のご紹介です。ひょっとすると、いつも以上に固い話かもしれませんが、少々お付き合いくだされば幸いです。
 

ジャーナリスト・作家、そして反原発活動家である広瀬隆さんの新刊書を読みました。
「東京が壊滅する日 = フクシマと日本の運命」(ダイヤモンド社)という本です。ショッキングな題名です。本書の「はじめに」にこう書かれてあります。

 

「これから日本で何が起こるかを予測してゆきたい。はっきりいえば、数々の身体異常と、白血病を含む『癌の大量発生』である。これらの病気が、幼い世代の子供、青少年から早く発症することは、現在では誰でも知っている」

 

「本書の結論を最初に言うなら、福島県だけではない『東京を含めた東日本全域で』急いで適切な対応を取らなければ大変な事態を招く」

 

その論拠として広瀬氏がまず挙げるのがかつて1950年代にアメリカで行われた原爆実験です。それは西部のネバダ州で行われたもの。その後、原爆実験の「風下」にあたる地域(ユタ、ネバダ、アリゾナの3州)で多数の癌患者が発生しました。それは全米平均、またはその地域の過去平均と比べても明らかな異常値。そして癌が増え始めたのは原爆実験が始まって約5年という「潜伏期」が過ぎたころからでした。

 

1986年のチェルノブイリ原発事故でもそう。事故後数年しての発症。しかも幼い子供たちほど健康被害が大きい。2011年の福島原発事故で放出された放射性物質の量は、アメリカの数次にわたる原爆実験で拡散された量を上回るとされています。そして福島原発事故から4年が経過。想像したくない事態が我々の体内で進行中なのかもしれません。

 

私が広瀬氏の著書に初めて接したのは三十年近く前の高校時代にさかのぼります。原発への警鐘を鳴らした有名な著書「危険な話」が最初でした。「チェルノブイリと日本の運命」という副題がついていました。

 

そこでは確かこのように記述されていました。

 

「人類を何度も殺すだけの能力を持つ核兵器。それについてはまだ発射スイッチを押すかどうかの選択(希望)が人類に残されている。しかし、すでに原子炉の中では数十年前にそのスイッチが押されていて、しかもそれを入れた容器が徐々に壊れ始めている」

 

いま手元にその書がすぐに出てこないので三十年近く前の記憶で書いていますが、いまだに忘れられないほどにインパクトのある筆致。その書物では「このままでは数年以内に日本でも原発事故が起こる」と記されていました。「数年以内」こそ免れたものの、残念なことに2011年に福島で不幸な大事故が起こることを私たち日本人は阻止できませんでした。

 

福島原発事故の前年である2010年に広瀬氏は「原子炉時限爆弾=大地震におびえる日本列島」(ダイヤモンド社)を出版。あの原発事故の直前、わずか半年ほど前のころに出版されたこの書の「予言」は、不幸にも的中してしまいました。

 

広瀬氏の書物の影響があり高校時代から私は原発の危険さが頭から離れませんでした。じつは若い時に私が会社の後継ぎとしての立場をわきまえずに大阪を飛び出して新聞記者を志したのには、この「反原発」も大きな要因にありました。放射性物質を人間は制御できない。たとえ一時的にコントロールしてみたところで、最終処分する場所もなければ方法もない。何百年、何千年、何万年経っても消えない多量の猛毒物質。子孫への恐るべき罪だと思います。

 

まったくの私事に渡りますが2011年3月に東日本大震災、そして原発事故が起こったその時、私の妻は初めての子供を妊娠していました。いま、その子は4歳になろうとしています。「この子に申し訳ない」――その時にそう思いました。

 

私は身内を含めて、癌や白血病で苦しんだ人を何人も知っています。日本人の死因の第1位が癌とのこと。皆さんのお身内やお知り合いにも、恐らく何人もいらっしゃったかと思います。原発事故によって大量の放射性物質が拡散してしまい、日本人はそれを体内に徐々に取り込んでしまいました。想像したくない未来に対し、恐怖心を捨てることができません。

 

この新刊書の「予言」が外れることを、心底から願っています。

 

2015年8月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

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