魂の決断 [給料袋メッセージ 83]

【魂の決断】
きょうは25日。月給袋の社長メッセージを書きました。
急逝した友のことから、これからの人生の選択を考えました。
(通巻83号)

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

いつも社業への貢献、ありがとうございます。今年もはや師走。社業を順調に進められていること、あらためて感謝します。

 

この12月、とても残念なことがありました。6年前に私が1年間通った「なにわあきんど塾」の同期生・沼澤正治さん(47)が病で急逝しました。彼を知る誰もが予期せぬ突然の別れでした。あきんど塾での1年間、本当に親しく過ごした仲間でした。当時、折しもリーマンショック直後という厳しかった時期。だからこそ、同期生みんなが必死になって経営を学びました。

 

彼はその私たち同期生にあって、人一倍明るくて、快活でした。人材派遣業の会社(株式会社KDP)で、当時は「常務」の肩書でした。経営者一族ではなく社員出身で経営層に加わっていました。その存在は「中小企業といえば同族企業」と思い込んでいた私にとって、じつは新鮮でした。いまでこそ私は「会社組織を成長させたら、ぜひ同族以外の社員から経営者を輩出したい」という強い思いを持つようになっていますが、じつはそのイメージの原型は沼澤さんでした。エネルギッシュで真摯で、そしてどこかお茶目で、誰からも好かれる。そんな人物が経営陣として会社を支えてくれたらどれほど心強いか。

 

彼の葬儀で久しぶりに集まった我々あきんど塾の同期生にとって、その早すぎる死は信じられないものでした。しかし振り返れば、私の同世代の友人がもうすでに何人も天に召されています。今年5月に高校の同窓会がありました。一学年約500人のうち、すでに数人が逝去されていました。その中には、クラブ活動(吹奏楽)でずっと一緒だった子もいました。大学時代にオーケストラで一緒に活動した友人も数年前に病気で他界。中国留学時代に同じ部屋で半年間過ごした韓国人の友人も30代半ばにして病で早世しました。命があること、健康でいれることが当たり前ではないのだと、あらためて実感します。

 

さて、ここ最近のこと。私は毎月1回のペースで「次世代経営塾」という学びに通っています。講師は大久保秀夫氏(61)。当社もお世話になっている株式会社フォーバルの会長です。25歳でゼロから会社を立ち上げ、まだ電話と言えば電電公社(現NTT)だった時代に、その独占支配に風穴を開ける新ビジネスを展開されます。当時まだ無名だった孫正義氏と組んで。
「世の中の役に立つ事業を」「電話料金の値下げは世の中の利益」「電電公社をぶっつぶす」と、若者だった大久保氏と孫氏が賭けた事業。それが大成功し、会社は設立後わずか八年で上場するほどの勢いで成長しました。そしていま、ご自身の体験をもとに中小企業支援、そして経営者教育に情熱を燃やしておられます。

 

この大久保氏から学んだ最も大きなものの一つに「魂の決断」というものがあります。
人間は生きていると日々いろんな判断・選択をします。その判断基準についてのことです。それには3つあると言います。

 

① 体の決断 ―― いわば動物と同じレベル。暑い、寒い、眠い、しんどい・・・。身体レベルでの快適さを求めての判断・選択。

 

② 心の決断 ―― 好き・嫌い、損・得、儲かる・儲からない、好かれる・好かれない。大半の人間がこのレベルで物事を判断するもの。

 

③ 魂の決断 ―― 正しいか正しくないか。善か悪か。人の役に立つかどうか。嫌いであってもやらねばならぬこと。損であってもせねばならぬこと、得であってもしてはならぬこと。経営も人生も、このレベルで決断すること。この境地に至ること。

 

「魂の決断」の一例として大久保氏は教育を挙げました。子供や社員にビシッと正しいことを言えているか。「嫌われたらイヤ」などと考えて言うべきことを言えていないことはないか。

 

私はまだまだ①か②の判断レベルでとどまっていることがほとんどだと反省しました。大久保氏によると、動機が不純だったり、目先の損得、面白そう、儲かりそう、カッコよさそう、などの理由で始めた事業は長続きすることなく、失敗することが多い。

 

逆に、たとえ困難に見えても、世の中のお役に必ず立つものであれば(社会性、独自性に優れていれば)成功しやすい。かつて通信の自由化で電電公社の独占体制に挑戦した経営者ならではの説得力です。

 

ではどうすれば「魂の決断」ができるのか。それは、今からの発想ではなく「終着点からの発想」に立つこと、と言われます。「死生観」すなわち「余命3カ月の発想」に立つこと。仮に医者から「あと3カ月」と宣告されて「あなたはなおその判断をしますか」ということを問われます。それをやり続けますか、やらないでい続けますか、何をしますか、何をしませんか。

 

死ぬ気でやると本気が伝わります。ものごとの本質がキレイに見えてくるものです。そのような魂の決断を下して人生を生きてゆくことの大切さ。それを教えられました。

 

友人の早すぎる死に接して、自分は魂の決断ができているだろうか、あらためて問われた気がします。生かさせていただいていることに感謝して、判断・決断の純度を上げていくことを心します。

2015年12月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

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