【BS目標を達成】
きょうは25日。月給袋の文章を書きました。
リーマンショック後の大赤字を受けて5年前に立てた経営目標(BS目標)を、ひとまずクリアしました。
そこに至る道程を振り返りました。
(通算84号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いつも社業への貢献、ありがとうございます。
最近、人前でお話しする機会に恵まれています。12月には大阪木村塾、あさって27日には中小企業家同友会(西支部)での経営報告です。私が会社を継いでからの出来事を振り返るものです。
私は30歳のとき、前社長だった父の急逝により3代目を継ぎました。父とは1年弱いっしょに仕事をしただけでした。父が突然に不在となったものの、あとを引き受けた私はまったくの1年生。あったのは必死さだけでした。当時は「鉄冷え」と呼ばれた不景気な頃。しかし父の残してくれた基盤、そして社員さんの献身的な支えにより、なんとか会社を継続することができました。
その後の設備投資(ツイスター)の成功で隣地を購入し、新工場とレーザー導入までとんとん拍子に進みました。しかし、そこでリーマンショックに出会います。仕事の激減、在庫の評価損で大赤字。ここで私は自らを反省しました。
「仕事は一生懸命にしたが、経営はしていなかった」ということに気づきかされました。つまり目先の仕事に忙しくしていただけで、大きな方針や目標を立てたり、新しいお客さんを開拓したり、人材採用・育成など、中長期的に必要な手立てをおろそかにしていたのでした。
最初にそのことに気づかされたのが「なにわあきんど塾」でした。
リーマンショックをはさんで売上高が5億円から2億6千万円に半減しました。あきんど塾では向こう3カ年の経営計画を立てるように指導されます。しかし白紙の計画表を前にして、鉛筆が進まないのです。半減した売り上げを元に戻すのは当然として、ではその先、10億、15億、20億と売り上げを大きくしていくのか。小さくする気はないけれども、会社は大きくしなければいけないのか。何が正しいのか。何を目的に、何を目標にすればよいのか。白紙のシートを前に、この会社をどうしたいのか、サッパリ分からなくなったのでした。
その頃に出会った同友会やアチーブメントで「経営理念」「人生理念」を突き詰めて考え、「縁あってこの会社で働いてくれている社員に感謝し、その物心両面の豊かさを実現すること」が経営の目的であると悟ります。
そして私が82歳の時に会社は第100期を迎えます。それが大きな経営目標になることを見つけました。永続して繁栄する会社を目指す、ということです。
木村塾では「強くて良い会社を作れ!」と発破をかけられました。そしてBS(バランスシート=貸借対照表)の見方を教えてもらいました。
BSとは簡単に言えば、会社のお金の使い途と出所(他人のお金+自分のお金)を対比させた表です。会社の決算書はPL(損益計算書)とBSの2枚から出来ていますが、当時の私は片方のPLしか見ていなかったのです。
PLは割と分かりやすい。売上高から原価と経費を引いたら利益が残る、その計算書です。さきに私が「売り上げを10億、20億と伸ばすのか?」と考え込んでいたのは、PLの話。
しかしBSのほうは何度説明を聞いても本を読んでも、頭に入りませんでした。まったく経営者失格の私でした。
木村塾ではBSから経営を見直すように指導され「BSの肝は自己資本」と教えられます。PLで儲けた利益から税金を引かれて、残った「最終利益」がBSの自己資本に積みあがる(内部留保=自分のお金)。それが貯まれば「強い会社」、すなわち潰れにくい会社になる。それを目指せ、と教えられたのです。
同時に「社員1人当たり」というモノサシを授けられました。その「自己資本を社員数で割ってみろ」と。社員1人当たりどれくらいの自己資本(たくわえ)が会社にあるか。
「中小企業はまずは1人当たり1千万円持ちなさい。そうなれば地震や津波、リーマンショックのような不況が来て仮に2年間売り上げが無くなっても、社員に給料を支払える。その間に会社を立て直すことが出来る」――。そのように教えられました。
家庭にも貯金があります。家族1人当たりの貯金額のような考え方です。
私はその「BS視点」から過去10年分の決算書をエクセルに入力し、自己資本の推移を見てみました。すると、かつては1人当たり1千万円があったのです。それを大赤字ですっかり吐き出してしまい、一時は1人当たり400万円以下に落ち込んでいました。それを再び1千万円に戻すこと。それを当面の経営目標にしました。
そのために必要な最終利益から逆算することにより、目指すべき売上高がはじき出されたのでした。かつてサッパリ分からなかった売り上げ目標に「なんのために」「これを成し遂げたいから」という理由付けが出来たのです。目標数字が心底から腑に落ちた瞬間、それが5年前でした。
そして昨年、その1人当たり1千万円をクリアしました。
私の当初目標よりも1年早い達成です。これも大赤字を経ての社内改革、全社一丸体制の賜物です。本当に感謝いたします。
これからもこの「社員1人当たりの自己資本」を大きな経営目標として、どんな不況が来てもビクともしない強い会社を目指してゆきます。
最近目にした資料によると、我々の溶断業界には強い会社が多く、この1人当たり自己資本が2000万円を超えています(優良企業の平均)。我々もこの数字を目指し、超えてゆきます。これからも日々の仕事を極め、強くて良い会社を作ってまいりましょう。
2016年1月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三
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