親の恩、子の恩 [給料袋メッセージ92]

【親の恩、子の恩】

 

きょうは25日。月給袋のメッセージを書きました。
今月17日に生まれた第2子のこと、そして両親の恩のことを書きました。
(通算92号)

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

今回もちょっと仕事の話から外れます。
税理士の上能先生が「親の愛は無償の愛」というテーマでお書きになった文章から引用します。
先生が受けられたとあるセミナーでの話です。

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2泊3日のセミナーの中で「恩の遡源」という講義がありました。一枚の紙が受講生に配られました。
その用紙には縦に「幼年期・少年期・青年期」と書いてありました。
その用紙の横に
「あなたが親からしていただいたこと・あなたが親にしたこと」
とありました。
「いまからその用紙に記入してください」
と講師の先生が言いました。
親からしてもらったことはすぐに書くことができ、その用紙の空白部分が埋まりました。
ところが、自分が親にしたことの欄にはほとんど何も書けないのです。
幼年期・少年期・青年期と親から多くのことをしていただきながら自分は親にはほとんどなにもしていないことにその用紙を前にして痛いほど気づきました。
ある受講生はその用紙を前にして号泣しました。
「親から自分は多くのことをしていただいたのに自分は何もしなかった。申し訳ない。すみません・・・」
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今月17日、私の妻が第2子を出産してくれました。
元気な男の子でした。
5年前に生まれた長女の時がたいへんな難産だったのでずいぶん心配しましたが、今回はほとんど何事もなく本当にホッとしています。
とはいえ出産に至るまでの体調の変化、そして出産前後の苦痛は相当なもので、まさに命を削って新しい生命をこの世に送り出してくれたのだと、あらためて思います。
私は前回も今回も分娩に立ち合いましたが、本当に命がけの大仕事であることを思い知らされました。
妻には一生感謝し続けなければバチが当たります。

上能先生の文章を思い出したのは、その出産のときでした。
赤ちゃんが生まれてくるときのたいへんな苦労。
まさに47年前に私の母親もこのようにお腹を痛めて自分をこの世に送り出してくれたのだと実感した一瞬でした。

生まれてきた赤ちゃんは一人では何もできず、ただ泣くばかりです。
それを大事に育てて大きくしてくれたのが両親や家族。
上能先生の文章の通り幼年期、少年期、そして青年期と、ずっと世話になりっぱなしでした。
わがままに育ち、したいこともすべて自由にさせてもらいました。
一方で「私が親にしたこと」を書くとすると、何が書けるだろうか。ほとんど何も書けません。

前回の文章(夏季賞与のとき)に17年前に逝去した父のことを書きました。
父の葬儀は社葬でした。
葬儀が終わって斎場へと向かう車中でのこと。
葬儀委員長を務めてくださった小林鋼材社長(当時)に
「なにも親孝行ができないまま、父に死なれてしまった」
と私は弱音を吐きました。
すると生前の父を良くご存じだった小林社長がおっしゃいました。
「あなたがお父さんから受けた恩を、将来生まれてくるあなたのお子さんに返してゆきなさい」

これを「恩送り」ということは、ずいぶんのちになって知りました。
5年前に長女が生まれたときもそうでしたが、いままたこの言葉を思い出しています。

しかし長女とともに過ごしてきた5年を振り返ると、子育てをする中で「親の自分たちも育てられている」とも言える気がします。

子供とはなんとわがままなものか。まさに自分中心で自分勝手。親や相手のことなど一切かまわない。
言葉での意思疎通が徐々にできるようになった3歳ごろからを振り返っても、まあなんと聞き分けのないことか。
人間とは生まれながらに自分中心な存在なのだと、よく分からせてもらいました。

そんな無邪気な子供を根気よく育てていくことで、自分たちもまた成長させてもらっているものと思います。

私もそんな聞き分けのない子供だったはず。
いや私の場合は学校を卒業しても親の言うことを聞かず、わがままをずっと通しました。
父母から見れば極めて親不孝な息子。
そんな私が生き方に反省を迫られたのが二十八歳、
父の病に直面した時でした。前回書いた通りです。
思えば私は父が癌になって倒れるまでが子供時代でした。
自分中心なだけの子供から徐々に相手や周囲のことを考え始めるのが「大人になること」かなと思います。
その意味で、まだまだ子供な自分をいまも日々発見します。
いろんなことを許してくれた両親に感謝の思いです。

親になってみて思うことがもう一つあります。
子育てをすることは何物にも代えがたい喜びでもあること。
妻のお母さんから妻が聞いた言葉です。
「子供は三歳までに一生分の親孝行をしてくれる」

この言葉を初めて聞いたときは理解できなかったのですが、長女を育てたこの5年間を思い出せば何となく納得できます。
その可愛らしさ、私たちのもとへ生まれてきてくれたこと、その存在そのものが感謝以外の何物でもありません。
天から与えられた贈り物です。
「3歳までに」という部分はおそらく譬(たと)えでしょうが、わがまま放題で言うことを聞かない今でも子供を育てる喜びは日々体感していますし、それは今後も続くものなのでしょう。

親としてもまだまだ新米。
子供と一緒に育っていきたいと思います。

今回も私事に渡る話になってしまいました。
新しい生命の誕生に免じてお許しください。

 

2016年7月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三