【経営者は社員に食わせてもらっている】
きょうは25日。給料袋のメッセージを書きました。父の跡を継いでからの18年間を振り返り、そしていまの会社の現状を記しました。
(通算107号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
暑い日が続きます。この酷暑の中、とくに工場の仕事のきついことに頭が下がります。じっとしているだけでも汗が噴き出る猛暑のさなか、工場ではガスが火を吹いています。そして重たい鉄板と格闘してもらっています。一方、事務所も多忙です。図面の隅々にまで入念に目を光らせ、お客様の求める短納期を叶えるべく真剣勝負を続けてくれています。
先日の賞与袋メッセージでは、18年前の夏に逝去した前社長のことを書きました。その前年に帰阪したばかりで新入社員同然だった私が、社長になりました。
当初は現場に入ってガス切り、アイトレーサー、そして荒川さんが入院した時にはピンチヒッターでNC切断機を数週間動かしました。いま思うと、かなり危なっかしい仕事ぶりでした。夜は事務所に入って伝票の片づけ。中上さんがCADの夜なべに日参。私たちの父母がそうだったように、日付を超えて働くのもざらでした。
やがて私は事務所に専念しましたが、ファクスの前に陣取って忙しく注文を片付けました。当時は糸井さんが夜8時を過ぎても残ってくれたり、長時間残業の常態化で申し訳ないことでした。
しかし思い切って導入したツイスターが軌道に乗り、業績は伸びました。勢いを駆って新工場を建設し、レーザー加工機を立ち上げました。その途端にリーマンショック。相場を見誤り、大量に仕入れた在庫が暴落。大きな赤字を出しました。
その頃(2009年)、私は「なにわあきんど塾」で初めて経営を学びました。リーダーシップとは何か、という話を聞きました。「七つの習慣」という有名な本にある逸話を引いて、次のように教えられました。
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ジャングルで道を切り開くとき、リーダーは伐採現場にいてはいけない。一人斧を捨て、木の上に登って遠くや周りを見ろ。そして「そっちじゃない。進む方向はこっちだ」と叫ぶのだ。ひょっとすると周りから理解されず、文句を言われるかもしれない。それでも木の上に登る勇気を持てるかどうか。
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この話を聞いて「坂元鋼材はリーダー不在だった」と気づいて恐ろしくなりました。同じ年に中小企業家同友会にも入り、その秋にあった訪中団に参加しました。同友会メンバーでの中国視察旅行です。5泊6日も会社を留守にするのは初めてでした。その3年ほど前の新婚旅行には、わざわざ料金の高い年末年始に行ったほどでした。会社を留守にするなどとんでもない、そう思い込んでいた私でした。しかし訪中団に参加するために留守の時のルールを作り、「値付けマニュアル」を整備しました。その後はいろんなセミナーに出かけて何日も留守にすることが多くなりました。社員の皆さんが会社を守ってくれました。
代わりに私が注力したのが、いわゆる「第2象限」=「緊急ではないけれども重要なこと」でした。新規顧客の開拓に全力を挙げ、新しいお客様にずいぶんとたくさん来てもらいました。そして経営者としての勉強をする時間をもらいました。理念・ビジョン、そして経営計画を作りました。成長塾で学んでいる人事評価制度もそうです。長期休暇としては、旧満州を巡る旅(8泊9日)や、長白山と中朝国境を巡る旅にも行かせてもらいました。訪中団も毎年のように行っています。
いまや私がする日々の実務は本当に限られていて、むしろ「出来ないことだらけ」です。それを社員の皆さんが日々やってくれています。
新人の原口さんのCADが上達を続けています。脇田さん、一橋さんが多忙な中を的確に指導してくれているおかげです。前田君のCAMはとっくに神業の域ですし、それを一橋さんが懸命に学んでいます。日々の営業はすっかり佐々木さん、中本さんまかせ。毎日いただく大量の図面をミスなく処理する集中力、そして短納期を実現させる熱意と知恵。いい事務所チームです。
現場での実際の切断となると吉山さん、荒川さんの匠の技は、もう仰ぎ見るだけです。プラズマ・レーザーを次々に成功させた前君の仕事力や探究心には、誰もが舌を巻きます。勤続42年だった尾和田さんの跡をしっかりと受け継いだ大石君、ただの男前ではありません。そして三宅君と河野君の若手コンビが着実に力をつけ、そのすがすがしい若い力が会社の空気をさらに軽くしてくれています。
前回の文章でもご紹介した「日本で一番大切にしたい会社」の著者・坂本光司教授の言葉です。
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経営者は現場に「食わせてもらっている」とも言えます。現場の日常的な仕事が付加価値を生み、それが利益になるのですから。経営者はもっと現場に愛情を込めてほしい。「何か困ったことはないか」と聞いて回って、問題を解決していく。社長の仕事の一つに「社員一人ひとりにどれだけ時間を捧げるか」があると思います。
経営者の仕事は、そんなにたくさんありません。3つだと、私は考えています。まず「方向を明示する」。次に「決断する」。そして「よい職場環境を準備する」。すなわち、モチベーションを高める、です。
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これぞまさに我が社のことであり、私のやらねばならぬことだと実感し、そして反省します。この会社をもっともっと良くしたいという熱意にかけては私は社員の誰よりも燃えていなければなりません。こうして日々の仕事を一生懸命にしていただいていることに、感謝の気持ちを新たにします。ありがとうございます。
2017年7月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三