小さな一流企業を目指す [鉄鋼新聞インタビュー記事]

業界紙・鉄鋼新聞に取り上げていただきました(2017年12月8日)。
なにわあきんど塾、中小企業家同友会、アチーブメント、木村塾で教えてもらったことが凝縮。この8年間の縮図のような記事にしていただきました。感謝します。

 

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坂元鋼材インタビュー

社員1人当たり自己資本5千万円目標

「小さな一流企業」を目指す

 

厚板溶断業の坂元鋼材(本社・大阪市西区九条、社長・坂元正三氏)は、社員教育・営業戦略の見直しなど経営改革に取り組み、2010年度から7期連続で経常増益となった。同社の月産量は200㌧。溶断業界でも小規模の会社だが、2031年度までに「社員1人当たりの自己資本金5千万円」を目標とし、「小さな一流企業となる」ことを目指している。坂元社長にこれまでの経緯と今後の展望について話を聞いた。(宇尾野宏之)

 

――まずは現状から。

「17年3月期は経常益で約5千万円を目標にしていたが、4千万円程度になりそうだ。月産量にあまり変化はないが、メーカー値上げの価格転嫁が遅れた。足元ではマーケットも好転したので、切り板価格を㌔95円から5円値上げの100円に設定している。8期ぶりの減益にはなるが、価格転嫁を急ぎ、経常益4千万円は達成したい」

 

――来期見通しは?

「いま検討しているところだが、悲観的な見方はしていない。来期は現場でも新入社員を採用できたので、増益を目指し、頑張りたい」

 

――経営改革に取り組んだ経緯は?

「リーマンショックに伴い09年度決算で7千万円以上の最終損失を計上し、自己資本比率は10%程度にまで落ち込んだ。危機的状況にあった中、経営者としての自分を反省した。当時は私もがむしゃらに営業などをしていたが、周りは全く見えていなかった。経営者に免許は必要ないが、知識もなく経営するのは無免許運転のようなものだった。なにわあきんど塾、中小企業家同友会、アチーブメント、木村塾など経営セミナーで勉強を始めた。前社長である父が『こんな小さな会社でも社員の家族を含め50人以上が飯を食ってるんや』と言っていたことも思い出した。経営の目的を『社員の物心両面の満足』『人(ステークホルダー)に幸せを感じてもらうこと』とし、改革に取り組み始めた」

「また、お好み焼き千房の創業者・中井政嗣社長が講演会で『良い人材は大企業に行く、(中小企業は)来てくれた人に感謝して、人材を育てるしかない。中小企業は教育産業だ』とおっしゃっていた。そこでまずは社員旅行から始め、社員教育セミナーも開いていった。また中井社長の真似をし、社員に考え方を伝えられるよう、給料袋メッセージも始めた。これは今年で100号を超えた。このほかに毎週、社内新聞も発行している」

「さらに営業戦略も見直した。仕入れ力のある大手がひしめく中、どうすればよいのか。厳しく見えたが、実は解決法はたくさんあった。品質はもちろんだが、他社よりも小ロット・短納期対応できるのが強み。こうした当社でしか提供できない価値を認めていただけるよう、拡販を進めていった」

 

――重視する数字は何ですか?

「損益計算書(PL)は1年だけの成績だが、賃借対照表(BS)は創業以来の歴史が蓄積されたもの。財務諸表における当社の目標は社員1人あたりの自己資本金を高めることだ。09年度には300万円台にまで落ち込んでいたので、まずは1千万円を目標にした。1千万円あれば、地震や津波、さらにはリーマンショックのような経済危機にあっても、2年間は社員を食べさせられる額。15年度にはそれを達成することができた」

 

――設備投資について。21年度までに新レーザ加工工場を建設する計画です。

「当社にはレーザ加工機、プラズマ・ガス溶断機がそれぞれ1台ずつあるが、レーザ加工機はフル稼働状態にある。これをもう一台増やすため、5億円を借り入れ、新工場を建設する。これを契機に31年度までに経常益1億5千万円、そして社員1人当たりの自己資本5千万円の財務状況を実現する。前期までに自己資本比率は46・3%にまで高まっており、万が一の時にでも、財務的に問題ない状態を維持しておきたい」

――このほかの目標は?

「優秀で意欲のある社員を執行役員に昇格させ、後継者を育てたい。まだ血縁者以外の役員は当社にはいない。事業を上手くやって50%、後継者を育てられてこそ経営者としての役割を100%果たしたことになる」