比べてよいのは過去の自分だけ [給料袋メッセージ 131]

【比べてよいのは過去の自分だけ】

 

きょうは25日。給料袋のメッセージを書きました。社員一人ひとりの努力がいまの業績に結び付いていることに感謝して、若手にエールを送りました。
(通算131号)

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

■ 今期もよい業績で終われそうです

 

いつも社業への貢献、ありがとうございます。この3月で2018年度(第67期)も終わります。この1年間は昨年6月の地震、9月の台風と災害に見舞われました。社員の皆さんも通勤途中で帰宅困難になったり、ご家族のことを心配したりしました。また、予期せぬ個人的なご不幸があった一方で慶事が続くなど、一人ひとりの人生にとってさまざまな忘れがたい出来事がいくつもありました。

 

そうしたなか会社の業績は好調に推移しました。2年前にマークした過去最高益をやや上回りそうです。あと1週間残っていますので最後の最後まで気を抜くことなく業務を全ういたしましょう。

 

最近の会社としての大きな話題は、年度末の恒例「360度評価」と今年から新設した「理念アワード」及びそれらのヒアリング面談でした。

 

会社として日ごろの社員の皆さんの頑張りを何らかの形にしてみたい。こうして月給袋メッセージや社内週報で感謝を示すこともありますが、「社内表彰」のようなものを作りたいと、かねて思っていました。なにがいいのか、どうするのがいいのか。

 

今期は最終日となる3月30日(土)の昼に食事会をします。「感謝の会」と名付けました。「会社の理念(大切にしたい価値観)に沿って、その年度に最も顕彰したいメンバー」をその席上で称える予定です。題して「理念アワード」。アワードとは〈賞与などを審判・熟慮のうえで与える〉――という意味です。

 

経営理念、360度評価の項目(会社の大切にしたい価値観)、6アクト(大切にしたい行動)がその評価基準です。社員相互の投票で各自が記名の上3票を投じてもらいました(自分に投票してもOK)。

 

設けるのは次の2賞です。

 

〔MVP〕  最も多くの票を得た社員。
〔社長賞〕  票数および社員の皆さんからのヒアリングにより総合的に決定。

 

■ 相対評価がもたらす「痛み」

 

今月はそのヒアリング面談が続きました。この人をこう評価した理由は何か、じっくりとお聴きしました。そして他者からの評価をもとにフィードバックも進めました。そして私はまた新たな気づきをたくさん頂きました。

 

360度評価は今回で4回目になりますが、昨年からは記名式かつ6点満点で評価してもらっています。中央値より上である4点が基準以上の実力というわけです。

 

毎年毎年、結果の表示方法について悩んでいます。得点順に並べると1位の社員がいれば12位の社員もいる。しかし下位の社員が貢献していないということでは全くない。社業の発展と自らの成長のために日々努力してくれています。にもかかわらず厳しい結果を突き付けられるわけです。

 

これは私にとってもつらい瞬間です。今回は表示方法として平均点と最高点・最低点を示すことにしました。これが本当に当人の成長にとって正しいのかどうか、私も迷いながら進めているのが正直なところです。

 

「自分はこんなに頑張っているのに評価されていない」――。そうお感じになったとしても無理はありませんし、当然です。

 

評価する側の基準がまちまち、かつ評価者としての訓練不足という背景もあります。人によって甘い辛いは生じます。事務所側が工場を、工場側が事務所を評価しづらいのも確かです。十数人の小さな職場とはいえ、部署によっては仕事の実情が見えづらいことがあります。

 

私の目には「誤解」と思えるような評価も正直なところ見受けられました。「私の判断が絶対に正しい」という意味ではもちろんありません。そうではなく人間の知覚(認知する力)とはそれほど多様なのだと思いました。

 

間違いなく言えるのは、一人ひとりがコツコツと努力して実力を付けてくれたことです。一生懸命に社業に取り組んでくれる姿、社風を良くしようと心掛けてくれている努力、見えないところで積んでくださる陰徳。気づく人はきちんと気づいておられるもの。だからこそそうした「良いところ」を主に聴きとるべく進めた面談でした。

 

■「262」の全体水準が切り上がる

 

いまの坂元鋼材はまさに仕事師の集団で、私が経営を預かったこの20年間で最高の布陣だと断言できます。しかも、この5年間は人がほとんど入れ替わっていない。Aさんの定年退職(そしてB君の試用期間満了)以外は誰も辞めておらず、新しく加わったのは2年前の新入社員だったCさんだけ。5年間ほとんど変わらぬメンバーです。ということは、誰もが努力を重ねて成長しているために社内の相対的なポジションはそう簡単には入れ替わらない。それが過去4回を通じて実感するところです。

 

組織にはいわゆる「262の法則」というものがあります。上位2割・中位6割・下位2割のレベル分布があると言われるものです。近年の当社の場合はこの262の割合が存在してはいても、その262の集団自体がまとまって右肩上がりで成長し続けているイメージです。だからこそ過去最高益をどんどんと塗り替えています。

 

実際のところ、相対的に高い評価を受けるメンバーは社歴も相応に長い。あるいは他社から移籍してくださったベテランです。いずれにしてもこの道でかなりのキャリアを積まれ、社会人としての見識と実力も相当なもの。それは決して一朝一夕に身につけられたものではない。

 

だから社歴が若い社員の中で、もし自分の評価が「相対的」に低いとお感じになられたとしても、そう悲観してほしくはないのです。

 

■ 比較すべきはなにか?

 

思い出すのが「ウサギとカメ」の話です。それもカメがウサギに勝った「本当の理由」です。かつてアチーブメントの青木仁志社長が解説してくれました。

 

ウサギとカメの話を知らない人はいません。ゴールを目指して競争し始めたウサギとカメ。最初にリードしていたウサギが途中で気を抜いて昼寝をしていているうちに、一生懸命に歩み続けたカメが勝ちました。普通はウサギが負けた理由は「昼寝したから」と言われます。

 

ところが青木社長が解説したウサギが負けた本当の理由とは「ウサギはカメを見たから」。そしてカメが勝ったのはウサギを見ずに「自分のゴールだけを見続けたから」――。

 

ウサギはカメと自分を比較して油断した。一方でカメは他者のことは一切気にせずにひたすらゴールのみを見続けてやることをやり続けた。

 

人は往々にして、優秀な他人と自分を比較して妙な劣等感や不快感を持ったりすることがあります。あるいは自分よりも劣っていると思い込んだ人と比較して手を抜いたりすることがあるかもしれません。

 

だから人と比較するのではなく、自ら定めた目的・目標に向かって努力し続けた者が最後には勝つ。そう教えてくれました。「比べてよいのは他人ではなく過去の自分だけ」ということです。

 

私がこの話を初めて聴いたのは8年ほど前でした。リーマンショック後の大赤字で問題が噴出していたころ。当社はこの業界にあっては小規模な会社です。しかし大きな会社や既に立派な企業と比較するのでなく、自分たちに出来ることを少しずつ着実にやっていくしかないんだ。そう勇気をもらったものです。

 

業績が伸びて財務体質が好転したいまもその思いは全く変わりません。10年後の自己資本10億円(社員一人当たり5千万円)、さらには32年後の第100期(私82歳)の時に健全な状態で発展し続ける組織であること。つまり財務体質が強く人の育つ良い企業にすること。一歩一歩、このビジョンに向かって進むのみです。

 

逆境の中でこそ人も会社も成長します。私は30歳のときに父親である先代社長を失ってから会社を継いで数々の試練を頂きました。そして10年前のリーマンショック後の経営危機。会社も私もそこを再出発として自己変革を重ねました。逆境に鍛えられたからこそ、少しは強くなれました。私は今年50歳になります。いまが経営者としてのスタートであり、いろんな準備がようやく整ったのだと考えています。

 

「逆境は成功の前奏曲、乗り越えればキャリアになる」――。青木社長の格言です。明けない夜はありません。最後に勝つのは自分の可能性を信じて利他に徹する人財です。ともにその人生を全うしてまいりましょう。

 

今月もお読みいただき、ありがとうございました。

 

2019年3月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

※ 参考:青木仁志著「伝達力」(アチーブメント出版)