【水質づくり、土づくり】
きょうは25日、給料袋のメッセージを書きました。
過去の様々な経験から「業績も人間関係も良い会社を作る」と固くコミットメントしています。そのことに触れました。
(通算139号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
今月は「年に1回のピットイン」としてアチーブメントの中野匠講師に会社までお越しいただき、1日研修を行いました。目的は坂元鋼材のチーム力を高めること。ご参加、ありがとうございました。
■ チームごと転職?
研修で印象に残ったのが転職大国であるアメリカの話です。働く人がステップアップを目指して職場を次々に変えるアメリカ。ヘッドハンティングも当然にありますが、引っこ抜きは個人でなく「チームごと引っ張る」そうです。働く人もチームごと移籍する。
なぜか。人は「ピン」で戦えるのではなく、その人の強みが生きるチームやユニットがあって初めて真の力を発揮する、というのが理由でした。
社員一人ひとりの力、価値、それは同業他社の違う環境に行ったとしても同じように、あるいはそれ以上に発揮できるかどうか。いまの阿吽(あうん)の呼吸、信頼関係があるからこそ能力が発揮できている。
自分一人でやっているのではなく共通の価値観が土台を支えてくれている。その意識がないと「俺(私)がやっている!」と天狗になってしまいかねない。そんな話でした。
感動しました。
■ 過去の痛い経験
反射的に思い出したのが、社内改革が始まる前のかつての当社。いや、改革が始まってもまだ成果が出ていなかった7年ほど前までの会社の風景です。
社員同士のチームワークがあまり働かず、社員間の忙しさもバラバラ。教え合うこともほとんどない。ある社員が忙しくしていても、他の社員は手伝わない(あるいは手伝えない)。そんな状態でした。経営者として未熟な私には、指導力が決定的に欠けていました。
人間関係が希薄どころか、断絶すらありました。無言の対立、はなはだしくは暴言や暴力まがいのことさえありました。結果として雰囲気は良くない。私自身が社員を怒鳴ることも、しばしば。
まったく恥ずかしい過去です。そんな状態でしたから業績も良いはずがない。当時の社員、当時から居続けてくれている社員には申し訳ないことでした。
■ あいさつのない組織が不祥事を起こす
横のつながりが希薄になると、さまざまな摩擦やストレスが発生します。結果、こんな小さな10数人の組織でも「意思疎通の困難さ」が生じます。コミュニケーション不全が起こり、それは思わぬミスやトラブル(事故)に至るもの。
人間関係のストレスは「靴の中の石ころ」、あるいは口内炎のようです。決定的なダメージはなくとも、気持ちの悪い感情がいつまでも残り続けます。精神的にも良くない。
「挨拶のない組織に不祥事が起きる」という文章をみんなで勉強したことがあります。数年ごとに読み合わせしているので、覚えておられるでしょう。
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人間には「他人とかかわりを持ちたい」という社会的な欲求があり、それは会釈くらいでは満たされない。また、あいさつには“攻撃性を減じる”という役割もある。良く思っていない相手でも、向こうから明るくあいさつされると怒りが薄れる経験は誰でもあるもの。あいさつのない組織では“マイナスの感情をリセットする機会”がなくなり、いったん気にくわないと思った相手や組織全体への怒りが膨れ続けてしまう――。
(立正大学・佐藤一義教授の文章から)
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まさに7年以上前の当社の状況をほうふつとさせる内容です。
それからの社内改革、社員の入れ替わり、「この会社を良くする」という一人ひとりの心がけの結果、会社は見違えるように良くなりました。つれて業績も向上したわけです。しかしそれには長い年月を要しました。
■ 水質を良くすること
毎年来てもらうアチーブメントの研修で教えてもらうのが「水槽理論」です。
目に見えない雰囲気、文化、社風、それらが水槽の水質です。良い会社は水質がクリア、良くない会社は濁っている。
水質の悪い水槽で泳いでいる魚は病気になる。魚を取り出して治療をすることは出来ても、元に戻すとまた病気になってしまう。だからよい水質を保つことが大事。そして同時に魚自身の免疫力を高め、強くしていく努力も重要です。
この水質はひとり一人の心がけで良くも悪くもなります。どんな発言、どんな態度、どんな行動が水質に良い影響を与えるのか、悪影響を及ぼすのか。また、良くない態度や発言を黙認すること、それも良くない。適切なフィードバックが必要なゆえんです。
■ プロであること
人間だから体調がすぐれなかったり、ときには虫の居所が悪かったりもします。しかし例えば、百貨店の店員さんが前日に夫婦ゲンカしたからといって不機嫌な態度でお客に接することは、ありません。プロ失格だからです。
しかしバックヤードで店員さん同士の関係が悪いことはあるかも知れません。これもプロ失格です。
なぜなら店員同士の関係性の悪さが組織をむしばみ、協力関係を破壊し、それが結局はお客に迷惑を掛けて百貨店全体を悪くするからです。
仲間である社員同士、あるいはもっと身近な家族には、その不機嫌さを表出してしまうことが人間ままあること。これが曲者です。心許せる人間関係だからこそ、そうしたマイナスの感情をストレートに出してしまいやすい。
様々な学びの中で「人間は不完全」という言葉を知りました。人は、その時々の何らかの欲求を満たそうと最善の選択を無意識にしている。むしゃくしゃしたり、何となく満たされなかったり、時には感情的になることもあり得る。
しかし時に反射的に出る行動が効果的かどうか、長期的に見て自分にとっても相手にとってもプラスであるかどうか、ここが問題です。
かつて社員を怒鳴ったこともある私ですが、それで会社が良くなることは一ミリもありませんでした。
■ 自分の機嫌は自分で取ること
この「感情コントロール」を上手に出来るかどうか、それが大人(プロ)足りうる一つの尺度でしょう。
子どもを見ているとよくわかります。ちょっと注意すると、すぐ「プイ!」です。遊びや何かに夢中になって周りが目に入らず危険なことがよくあります。道路での飛び出しもそうです。「危ない!」と言っただけで「パパ嫌い!」です。別にキツい言い方をしていなくても、これです。
人間の原初の姿を見る思いです。人は人から意見されることがそもそも嫌いなんだと、子どもを見ていてよくわかります。「忠言耳に逆らう」とも、古くから言われます。
自分の機嫌は自分で取る、これが大人になる第一歩かもしれません。子どもを見て、わが身を反省します。50歳になっても、まだまだ出来ていないなあ。
■ 私たちの行動指針(7アクト)
理念・ビジョンと並んで整備を進めてきたのが「セブンアクト」でした。私たちの行動指針です。その目的は会社の水質を良くすることにほかなりません。過去の反省に立脚したものです。
① あいさつ
② 返 事
③ ありがとう
④ すみません
⑤ 笑 顔
⑥ 整理・整頓
⑦ ベストコンディションの維持
なかでも ①「あいさつ」と②「返事」がどうしても外せません。
あいさつは相手の目を見て、先に、ハッキリと。とくに朝一番と退去時が大切。美しいあいさつの出来る人は、それだけで周りに大きな貢献をしています。
そして返事。大きくハッキリとした返事はその場にプラスのエネルギーと幸福感をもたらします。
■ 見えないところでの貢献
組織のために陰徳を積んでくださっていることも、水質を良くしてくれる行為です。私の見えないところでも、色んな配慮をしてくださっていることを直接間接に聞いています。
・ 朝早く出てきて鍵を開けてくださること。
・ 工場の機械にエアーを掛けて最善の準備をしてくださること。
・ 事務所の机を軽くふいて回ってくれること、モップを掛けてくれること。
・ 増え続けるカレンダーの日めくりを毎朝めくってくれること。
・ 前夜に来たファクスにざっと目を通して一日の始まりに備えてくださること。
・ 工場の麦茶の用意、アイスを切らさない配慮、お弁当の手配。
・ 工場や食堂の清掃、美化、トイレ掃除。
・ 機械や備品の修理。
・ 貯まり続ける書類の片づけ、こまかな整理整頓。
・ 朝礼での積極的な発言、ミス・トラブル情報の速やかな開示と報告。
・ 社内行事での裏方。
まだまだ私の気づいていないところで社員の皆さんが組織のために尽力してくれています。ありがたいことです。水質維持のためのさまざまな陰徳のおかげで会社が上手に回っています。
■ 会社の「土づくり」
私は2年前に生駒に引っ越ししてから、庭に2.5メートル四方ほどの小さな畑を耕しています。これまでにネギ、にんにく、キュウリ、ほうれん草などを収穫しました。
そのために土を耕し、柔らかくし、肥料や石灰を与え、水を絶やさない努力をしています。「土づくり」です。
我々の7アクトはこの土づくりでもあります。良い土を作らずして良い作物は実らない。固くてガチガチの土からは貧弱な作物しか生えません。思えばそれが、かつての人間関係に苦労した会社の姿でした。
アメリカの転職社会ではチームごと移籍するという話。
これは種や作物だけでなく畑ごと持ってくるのだと、良く理解できました。
魚だけをすくってくるのでなく水槽ごと移してくるのだと、良くわかりました。
自らの反省も込めて。
多大な犠牲の上に成り立ったキレイな水質をこれからも維持し続けます。ふかふかで養分たっぷりの土壌、そういう社風を大切にします。そんな組織にこそ強い根が張り、好業績という果実がなり続け、百年企業という大樹に育つのだと思います。
社員の皆さんの日々の陰徳に感謝します。いつも社業への貢献、ありがとうございます。
2019年9月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三
※ 忠言耳に逆らう
真心を込めていさめる言葉や忠告は、聞く側にとってはつらいものだから、なかなか素直に受け入れられないものだということ。
「忠言」とは、真心を込めていさめる(=不正や欠点を改めるよう忠告する)言葉のこと。
『孔子家語・六本』に「孔子曰く、良薬は口に苦けれども病に利あり、忠言は耳に逆らえども行いに利あり」とあるのに基づく。
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