【自分を売る】
きょうは25日。給料袋のメッセージを書きました。
先月の「自分に売る」に続いて「自分を売る」ことを深堀してみました。
(通算154号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いつも社業への貢献、ありがとうございます。
コロナ事情もようやく曲がり角に差し掛かったようですが経済は大きなダメージを受けています。
鉄鋼需要はコロナ前から低迷したままです。販売力は経営の根幹です。
需要の冷えた中で、どうすればお客様にもっともっと求められる会社になれるか。
きょうも先月の話の続きです。
アチーブメントの青木仁志社長から教わったセールスのロジックによると、商品の販売には5つの段階があるということでした。
(引用:「起業家のための社長学=第1部・戦略・理念経営=」 アチーブメント出版より)
① 自分に売る
② 自分を売る
③ ニーズを売る
④ 商品を売る
⑤ 感動を売る
モノを売るのはこの順番で、実際の商品をお客様に売るのはなんと4番目。
一番初めは、その商品自体をまず「自分に」売らなければならない、自分がその商品に「イエス」であること。
もし自分がお客様だったとして、鉄鋼溶断品を他社でなく坂元鋼材から買うかどうか――。
先月はそれを詳述しました。
今月はその次の段階です。「自分を売る」とは、なにか。
■ 私の経験した残念な話
会社に出入りする置き薬4社のうちX社は使わないように社員の皆さんにお願いしています。
その理由は、ある「事件」があったから。
もう十年以上も前のことです。X社のセールスマン氏がいました。
私たちが忙しく仕事をしている最中にもかかわらず、スローなテンポでなにかと世間話を始める。
当時の私は事務所の中央デスクで毎日忙しく伝票処理に追われ、手を止める暇も惜しかった。
そこに 「ちょっとこれ、試飲してもらえませんか?」 と割って入ってくる。
心象はどんどん悪くなっていきました。
とある春の日のこと。
私は花粉症(鼻炎)持ちで毎年1月後半ごろからゴールデンウィーク明けごろまで鼻がグズグズしています。
毎年のことだから彼はそのことを良く知っている。
彼は私に聞きました。「社長、今年の花粉症はどうですか?」
花粉があまり飛んでなかったのか、その時の症状は極めて軽かった。
「いやー、今年は花粉が少ないのか、めっちゃラクですわー」 と私が喜んでいたところ、
なんと彼は「そうですか・・・」 と下を向いて、思いっきり落胆しているのです。
その姿を見て、私も落胆してしまった・・・
■ 何のために薬を売るか?
彼がなぜ落ち込んだか、明白です。
花粉症の薬を売ろう思ったところ、売れないのが分かったから。
それをあからさまに出すところに、このセールスマンの人柄が出ています。
薬のセールスだから、薬が売れなくて困るのは分からなくもない。
しかし、もし私たちが彼の立場なら、どんな態度を取るだろうか?
どんな言葉を返すだろうか?
せめて――
「そうですか、良かったですねー。ことしは花粉が少ないとニュースでも言ってますものね。
でも、もし花粉が増えて苦しくなられたら、この薬をぜひお試しください。置いておきますので」――
くらいのことは、すぐにでも言えるのではないでしょうか?
このエピソードから「目的と目標の違い」が透けて見えます。
セールスマンにとって目的とは何か?
目的、それは仕事を通じて成し遂げたい最終的なゴールと言えます。
薬屋さんなら「薬を通じて人を幸せにする」ということにならないでしょうか?
薬を売ること(売上金額を上げること)は、その大きな目的に至るための目標(中間地点、または手段)です。
■ 目的と目標の違い
しかし人は往々にして「目標」にばかり目が行き、最終的な仕事の目的を忘れがちになるもの。
このセールスマン氏が残念ながらそうでした。売上しか追っていなかった。
だから「花粉症がラクでお客さんが幸せな状態」を喜べなかった。
目標にしか目がいかず、目的が見えなかった。
あるいは、そもそも目的を知らなかった。
この社会に仕事は無数にあれど、どんな仕事でも「仕事を通じて人を幸せにすること」が職業の目的であるはず。
その理念ピラミッドの土台部分である目的の上に、売上目標や売上計画といった数字、日々の実際の仕事が乗っかります。
目的を見失ったら、おカネだけに目を奪われてしまう。それが「目標から上」の状態です。
世の中の不正や犯罪的な商売は、すべて「目標から上」のなせるわざ。
さいきんニュースをにぎわしている巨額詐欺事件もしかり。
高齢者の老後資金をねらっての「商法」ということですから、たいした「目標」です。
過去のさまざまな経済事件もそうです。耐震偽装、食品偽装、データ改ざんなどもすべて目標から上のなせるわざ。
いや、ひょっとすると「お金が儲かりさえすればよい」という大きな土台からの一貫性なのかもしれません。
悪い目的からは悪い目標が生まれる。
セールスは生きざまの反映ですね。
人間は本来が利己的なもの。
だからよほど心せねば転落が待っています。
■ おそうじ本舗の店長さんに感動
一方で、仕事をしていると素晴らしい人格との出会いもあります。
3年前の夏です。
事務所の天井エアコンのにおいがひどいのでプロの掃除業者にお願いしました。
ネット検索でさがしたところ会社近くの「おそうじ本舗」から店長さんが来てくれました。
夕方5時を過ぎてから作業に取り掛かり始め、エアコン2台を1人で黙々と掃除です。
横目で見ていると働き方がとても鋭く、動きにムダが無い。
そして驚いたことに、社用車のカローラを勝手に磨きはじめました。
クルマは頼んでいないのに、なぜ?
「エアコン・フィルターの漬け置きに時間がかかるんで、その待ち時間に洗っておきました」
「雨あとがクルマに付着してましたけど、僕の使っているプロ用洗剤なら簡単に落ちますんで」
この店長さん、どうもタダモノではない。しばらく雑談してお話を聞いてみました。
年齢40歳(当時)。いろんな仕事を経験して、このチェーンの店長になった。
夏はエアコン掃除の書き入れ時で休みも無い。
若手スタッフが何人かいるけれど、遅い時間の残業はいい顔をしない。
いまの若者はおカネよりも時間(休日・休暇)をほしがるので人手の確保がたいへん――。
■ 店長の語る仕事論
彼はとても話し上手で、思わず引き込まれました。
それもそのはず、大阪府の公的機関で「しごとセミナー」の講師もしている。
若者相手にはこんな話をするそうです。
「世の中、甘くない。何とかなんてならない。楽な仕事なんてない。
どんな仕事でも1000日間は辞めずにがんばれ」
「君の得意は何? ゲームか。
じゃ、そのゲームをおっちゃんが2週間一生懸命やったら君に勝てるか?
ムリ? そやろ。
だから仕事も2週間やそこらで上達なんかせえへん。1000日=3年はやってみる。
それでアカンかったらセンスが無い。転職はそれからでもいい」
うーん、この話にはうなりました。
勝手にクルマを洗ったことにも「解説」がありました。
どうせの空き時間だから休むよりも働くほうがいい。
そんな心がけで仕事をしていると、もし本来の仕事(エアコン掃除)で不手際があったとしても、
お客さんから強いクレームにはならないもの。
万が一の場合も柔らかく言ってもらえる――。
なるほど。この店長の仕事論にはとても共感します。
利他的に働いていますが、そこにもキチンと意図がある。ビジネスである以上、まったくのボランティアでは絶対にない。
論語とソロバンを一致させているところに、この店長の賢さをみました。
この店舗のホームページを見ると、やはりちゃんと理念が掲げてありました。
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おそうじ本舗では、クリーニングサービスを通しての「感動」と「満足」を理念に掲げ活動を行っています。
お客様のご要望やご希望に応えられるよう、精一杯の努力をしたいと思っております。
「自分で清掃してもなかなか落ちない」「汚れは気になるが、清掃の仕方が分からない」
「清掃しても臭いが気になる」「清掃する時間がなかなか取れない」など、
お客様1人1人がおそうじに対する悩みや疑問を持っていると思います。
その解決を手助けするのが、私達おそうじ本舗です。
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この店長さんはまさに、理念から一貫した行動をしたわけです。
だから私は感動させられてしまった。
そして彼のことを私が社内で話題にすると、
Aさん、B君、C君など社員の何人かがこの店長に自宅のエアコン掃除をお願いしておられました。
これこそがクチコミの効用です。
やっぱり利他的な理念は人を動かすんだな、と再確認しました。
■ 人格を通して商品を普及する
同じ薬を売っていて、なぜあの人からは買わないのか?
世に掃除業者はたくさんあるのに、どうしてこのお店にお願いしたいか?
鉄鋼溶断品なら同業他社は数あれど、ぜひとも坂元鋼材から買いたい。
そうなりたいものです。
当社の仕事に満足されればされるほど、お客様はうちをごひいきにしてくださいます。
もしそれが感動レベルであれば、お客様は絶対に離れません。
冒頭でふれた第5段階の「感動を売る」です。
ライバルは同業他社ではない。
お客様をいかに喜ばせるかが勝負。
相手に喜んでもらおうという気持ち(理念)が強ければ、商品は自然に普及されてゆくでしょう。
いまは仕事が少ない時期です、時間も十分にあります。
こんな時こそ、普段よりももっともっとお客様に喜んでもらいましょう。
皆さんの日々の誠実な仕事に感謝します。
2020年9月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三
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