東南アジアからの経営者18名をお迎えして

【なにわあきんど塾インターナショナル】 2016年3月3日

 

東南アジアの経営者の方々を我が社にお迎えしました。
「なにわあきんど塾インターナショナル」の学びに来日されたベトナム、フィリピン、インドネシアからの企業経営者18名です。
まさに国境を越えた学び。一日じゅう、ワクワクしどおしでした。

 

■ 長寿企業の秘訣を学びに来日
「長寿企業」の多い日本の事業承継文化、企業存続力、そして「ファミリービジネス」の秘訣を学びに、わざわざ日本まで学びに来られた皆さん。そのケーススタディとして我が社への訪問。私の拙い経営体験に極めて熱心に耳を傾けてくださいました。
「身に余る光栄」とは、こういうときに使う言葉。
受講生の皆さんは各国で従業員規模が数十人から1万名以上(!)もの企業を経営されている方々。しかも欧米へも経営を学びに行かれるほどの熱心さ。この企業見学会の話を聞いたとき、一瞬も二瞬もひるみました。なぜ我が社に?
しかし、この話を下さった大阪産業創造館の中根さん、山野さんは「普段話していることをそのままに語ってください」とのリクエスト。私はベタな話しかできませんよ、と言うと「ベタがいいんです」と。
家族型経営の一例として「小さくても長く続く企業の考え」を知りたいとのこと。
結果、お引き受けしてしまい、やはり私が一番の勉強になりました。そして非常に感動させてもらいました。

 

■ 何のために、誰のために、なぜ経営するのか?
お話ししたのは、いつもの経営体験のストーリー。
町工場の長男に生まれたこと、一時は家業から目をそらせて自分(だけ)の夢を追ったこと、父の病で帰郷したこと、事業承継後の悪戦苦闘、経営の学び、「何のための経営か」という問いにとまどったこと、経営の目的を探したこと、人の力を借りること、自分自身との契約(人生理念)、人生の目標、親孝行できずに死なれてしまった父のこと、将来のこと、何のために生きるのか・・・。
これまで多くの学びを頂いた、なにわあきんど塾、アチーブメントの青木社長、大阪木村塾の木村会長などから授けられた名言の数々を紹介する形でプレゼンを進めました。
受講生の方々とは英語でのやりとり。私は英語が大の苦手・・・。
しかし私が日本語で準備したプレゼン資料は、すでに立派な英文にしていただいています。自分で作った資料なのに自分で感動してしまいました。
きょうのプレゼン本番も、本当に見事な通訳をしてもらいました。
感謝しかありません。
おかげで、なんとか、少しは・・・。
ここまで来ていただいた意味があったかどうか・・・。
受講生の皆さんは本当に真摯な姿勢で、こちらが襟を正しました。
約1時間半のプレゼンと質疑応答の間、私の言葉、通訳の一言一言に熱心に耳を傾けてくださり、ときには首肯してくださり、その眼差しの熱さに心を奪われました。
きょう頂いた感動は、ずっと忘れることが無いでしょう。

 

■ 長寿企業をテーマに議論
午後は場所を皆さんの研修施設に移動し、ディスカッション。
テーマは「長く続く企業の秘密を探る」というもの。
・ あなたの会社の名前の由来は? 
・ 創業の経営、その当時の社会背景は?
・ どんな組織になってほしいか?
・ どんな社員になってほしいか?
・ どんな企業文化にしたいか?
さて・・・。
その皆さんの議論をそばで聴きながら私は「国境を越えて共通する考え」を探していました。
以下、皆さんの議論からいくつかの言葉を拾います。
・ 初めは「自分で事業をしたい」という事業欲、挑戦意欲だった。
・ どんな状況でも「社員の給料を払えるように」というキッチリしたリスク認識があった。
・ 「何のための経営」などということは、考えたことがなかった。
・ ビジネスは社会の利益のため。
・ 長く勤めてくれている社員への尊敬。永年勤続者の表彰をする会社も。たとえば15年勤続なら、その子供の奨学金を出す。
・ ゼロから事業を立ち上げた創業者はやはり偉大。最初は「家族を食わせたい」という理由だったかもしれない。しかし長く続いた事業に「意味づけ」をするのは2代目、3代目の仕事。
・ 「従業員の幸福」、それは共通した意見。
・ 仕事に対する尊敬、会社に対する尊敬、従業員に対する尊敬。
・ 労使はお互いが頼る関係。対立を完全に回避するのは不可能かもしれない。それをマネジメントするのが経営者の責任。
・ カネを稼ぐ基盤が大前提。経済的な土台をしっかりと築くことの大切さ。
・ 会社の成功は社員の成功。利益が出たらボーナスで還元。それがモチベーションになる。一方、株主からは文句が出たことも。「賞与を上げすぎると怠ける」と心配された。
・ 社員への尊敬を忘れてはいけない。
・ 最初は従業員のことを「手足」と思ったかもしれない。でも、そうではない。従業員は自分とは違う人間(人格)と自覚する必要がある。
・ 幸せとは何か。雇っている13,000人を、どうやって幸せにするのか?ハッピーとは何か?人によって違うかもしれない。難しい。時間をかけて従業員の声に耳を傾けること。
・ お客様のニーズは毎日変わる。それを満足させる組織にならねばならない。常に改善を考える。品質管理、効率、生産性。5S。
・ 従業員、経営者の相互の尊敬、信頼。組織として理想なのは一つの家族のような組織。一緒に出掛けたり、楽しんだり、呑んだり。そういう組織にしたい。それを従業員の家族もまきこんで、やりたい。
・ 長く続くためにはお互いの信頼関係が大事。経済情勢は毎日変化する。悪い時もある。でも同じ方向に向かっていくことをみんなが認識する必要がある。
・ 主要な事業に入っていないものは外注すること。そして本業に特化する。

 

■ これは「明治時代の日本」かも?
さて、彼らの議論を傍観(傍聴)していた感想を少し。
限られた時間ながらも、3カ国の経営者の皆さんは流暢な英語で活発な議論でした。
日本人によくある議論と違うと思ったのは、言うべきことをコンパクトかつストレートに主張していること。発表の場面でもつまらぬ遠慮や譲り合いはありません。
うまく表現できませんが、議論や発言にヘンな感情を持ちこむことが無く、わりとドライで理路整然と進んだ印象を持ちました。
一方で、共感を示すときには大いなる身振りでそれを明らかにしますし、相手を見つめるまなざしには真がこもっています。
思うに、これが「インターナショナル」な態度なのかな、と。
ベトナム、フィリピン、インドネシア。
確かに、先進国でもなければ、大国・強国でもありません。
なまじ国際的な立場があって国内市場も大きい日本とは違い、いろんな意味で他国を頼りにせざるを得ない国情なのだと思います。
(国際的には中小企業かも?その必死さに共感!)
だからこそ、他国との「やりとり」が生命線。
だからこその、流暢な英語力、鍛えられたコミュニケーション能力。
そうでなければ、生き残れない。
でも、それは日本も同じだったはず。
いまNHKの朝ドラで明治時代の日本が描かれています。
当時の日本人は必死になって外国を学んでいます。
そこには、いまの日本人には失われてしまった貪欲な吸収力、そして向上心を感じます。
そのような気概があったからこそ学びは本物で、その成果は後世にも残るほどのものだったのでしょう。
東南アジアの彼らを見ていて「明治期の日本人はこうだったのではないか」と想像しました。
なんだか、きょう一日ですっかり東南アジアのファンになってしまいました・・・。

 

■ 正しい経営が世界平和に至る
さて、午後のディスカッションのしめくくり。
何のために、誰のために、なぜ経営するのか?
外国の方々の議論を聴いても思うのは、やはり「答え(正解)は一つではない」ということ。
しかしながら、必ずの「不正解」は存在する、と確信しました。
それは・・・

 

「刹那主義」―― 今だけ  only for now
「利己主義」―― 自分だけ only for me
「拝金主義」―― お金だけ only for money

 

これは先週末に上能喜久治先生(弊社顧問税理士)に講義してもらったものです。彼らの議論から、それを思い出しました。
これらの悪しき考え方から距離を置く事。
それが成功する経営者と失敗する経営者の分かれ目ではないか。
この3つの「主義」は、思えば人と人、ひいては国と国の対立をも生み出します。
私たち経営者が小さな単位ででも正しい経営を行うこと。それは(大げさかもしれませんが)世界平和につながる道でもある。
はるばる日本まで学びに来てくださった経営者の方々に接し、そのような人間存在の原理原則を教えられた思いです。
それにしても、あり得ないほどの充実した一日。
このチャンスを下さった産創館の中根さん、山野さん。
本当にありがとうございました。
いつも頂いているこのご恩は送らず(?)に、きっとお返しいたします!