若者、恐るべし [給料袋メッセージ 138]

【若者、おそるべし】

 

きょうは23日、給料袋のメッセージを書きました。

当社の幹部社員が工業高校で講話したエピソードから、若者が秘める可能性を思いました。
(通算138号)

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

この夏は採用に力を入れています。

新卒用の会社パンフレットを自作して、若者目線で会社の強みや魅力を伝えています。

大阪府下の高校10校以上にも出かけました。

いまは空前の採用難です。高校新卒生は引く手あまた。

当社の求人票を目立たせることはできないか。そこでハッとひらめきました。

 

2年前にA君が東淀工業高校で生徒さん向けに講話をしました。

「工業高校を出て、実際に社会で活躍している人」というリクエストに応えたものです。

私も同行しましたが、見事な内容でした。

その講演録をパンフレットの「フロク」にすれば目立つのではないか。

 

「当社には工業高校出身で大活躍しているこんな先輩がいるんだ」――。

 

生徒や先生の目に留まってくれないか。そんな狙いで。
彼が語ったのはこんな内容です。

 

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■ 工業高校を出て、実際に社会で活躍している先輩の講話

 

〔サボらないこと〕

 

学生時代は勉強が嫌いだった。早く社会に出て働きたかった。

最初に就いたのは営業で、すぐに辞めてしまった。失礼なことをしたと思っている。

次は土木で、体を動かす仕事は性に合っていた。

土木がヒマになった時、紹介されて坂元鋼材に入った。

仕事が合っているかどうか分からなかった。けど、結婚して子供がいた。

 

「こりゃ、やらなアカン」――。
家族を養うため必死やった。

 

24歳での入社。自分のすぐ上の先輩は46歳、自分一人だけが思いっきり若い。

心がけたのは絶対にサボらんこと。

 

覚えといてほしいけど、いきなり会社に入って先輩と勝負できへん。

この道一筋で何十年やってる人に知識・技術では勝たれへん。

皆さんの勝負どころは絶対にサボらないこと。

一緒に働く人間からすると、それが評価高い。

 

「ウサギとカメの話」と同じ。ウサギは能力が高いからとサボって、カメに追い抜かれる。

サボらんことはスゴイ武器、誰でも一番初めに持てる武器、そこ大事。

サボり癖をつけると居場所はなくなる。

 

能力が高くなってもサボらんこと。

ヒマやったら「車の掃除してきます」「トイレの掃除してきます」とか。そんな人間になってほしい。

 

〔助け合うこと〕

 

会社で大事にしているのがチームワーク。職場間の移動・交流をどんどん進めている。

「自分の仕事はここまでです」と自分で自分の範囲を限定するのでなく、他人の仕事も出来るように学ぶ。

そして他人が自分の仕事も出来るように教える。だから教え合い。

 

一人がいろんな仕事が出来るから、誰が休んでも大丈夫。

有給(休暇)もしっかりとれるし、安心して風邪もひける。

 

もう一ついいこと。相手のしんどさが分かって初めて「ひとを助けたい」と思う心が生まれる。

他人事(ひとごと)でなくなる。それがチームワーク。

そんな思いを持てる子と一緒に働きたい。

 

〔仕事と作業の違い〕

 

言われたことだけでなくプラスアルファ(+α)で何かが出来ること。

言われたことだけをやるのは作業、頭を使って初めて仕事になる。

100個のモノを作るのに1日かけて100個か、半日で100個か。

どっちが作業でどっちが仕事か。

 

先輩の仕事を見て「自分ならこうする」と仮説をたてて、やってみる。

真似だけでは先輩に永遠に追いつけない。

一番いいのは、社内を見渡して一生懸命している人を見習うこと。

直属の先輩が一番とは限らない。

デキる人を探す。いろんな人のいいところを探す。自分に合うやり方を見つける。

そして成長する。

 

会社に新しい機械が入るたびに触らせてもらった。

いまは若い子に機械を譲って、遠目から見ている。

わからなければ「まず自分で考えてから聞きに来なさい」と言っている。

考えさせて、違ってたら意見してあげる。そうやって「考えるクセ」をつけさせる。

厳しいけど、成長してほしいから。最初から人に依存していると、伸びない。

魚を与えずに、釣り方を覚えさせる。

 

〔自分の給料を決めるのは自分〕

 

いろんな会社の求人票を見ると、まず給料に目が行く。

ぼくもそうやった。若い時はそれでもいい。

いま働いてきて思う。どうやったら給料が上がるのか。

それは、会社勤め(サラリーマン)はしていても「自分が社長」と思うこと。

自分という人間を坂元鋼材(会社)に売っている。

 

「こんなスゴイ仕事をするなら給料をもっと上げてやらな」と会社が思うかどうか。

そんな残像(イメージ)に自分が近づくこと。そうでないと欲しい給料にはならない。

まず自分自身が納得できる仕事をする。

会社が給料を決めているんじゃない、結局は自分の働き方が給料を決めている。

 

「こんな安い給料やったら、この程度にしとこ」と思う子がいる。

一方で「もっとほしいやん、もっとやろう」と考える子もいる。

皆さんはどっちか。

給料はすぐには上がらない。

3年、5年、みんなから評価されて、ようやく上がる。そこまで頑張る。

 

結婚する前は、仕事って「やっとったれ」やった。テキトーやった。

でも結婚して子供が出来た。背負うものがあると強い。自分が働かなアカン。

ちょっとでも家族を楽にさせたい。ギリギリの生活はでけへん。

おったら勝手に給料上がる?
そんなことはない。自分が自分にあげたくなるような働き方をしないと給料なんか上がらない。
 
〔中小企業のいいところ〕

 

中小企業が大企業に負けているとは思わない。

一人ひとりがそんな気持ちで働くと、大企業に負けない強い会社になれる。

会社は規模でなくて中身。中身とは業績と人間関係と働きがい。

 

中小企業は社長に面と向かって話せる。思いをじかに伝えれる良さがある。

大企業とは違う。会社は名前だけで選ばないこと。

 

仕事していて一番うれしいこと、なんやと思う?
―― 「感謝?」 (生徒)
そう、正解。
「上手に切ってるなあ」「仕事が早いなあ」「助かったわ」――とかほめられる。

もう給料の世界やない。

 

サボらんと自分から動く子、考える習慣のある子、2年3年たつとスゴイ成長する。

頑張る子は周りから愛される。

スゴイ人を探して「自分のやり方の方がいいかも?」――そんな風に考えて努力する子は、先輩を追い抜ける。

そんな社員ばっかりの会社は強くなるに決まってる。大企業にも負けへん会社になる。

 

〔仕事の正解とは?〕

 

学生時代は勉強が嫌いやった。でも会社で機械の勉強だけはした。

人から認められるためには自分がしっかりしないと。

機械は生きている。機械と対話している。そんな境地になったら最高。

 

「勉強が出来る」と「仕事が出来る」は違う。

仕事が出来る人は頭の回転の速い人。常に考えること。

機械にトラブルがあったとき、どこが壊れたんか自分で考える。メーカーにばっかり頼らない。

メーカーの修理を待ったら2日とか掛かる。自分でできたら半日で済む。会社は助かる。

だからプラスの勉強は惜しまずにやってほしい。

 

仕事で鉄板を切っていると、それが耐震補強のプレートになったりしてる。

見えへんけど大事な所で使われてる。

「キチッとした仕事をしなければ」と思う。

 

仕事の本当の正解とは何か。

お客さんに「ありがとう」と言ってもらえること、それが正解。

きれい、早い、ありがとう。そう言われて初めて「自分のやり方は正しかったんや」と分かる。

将来、就職したときに思い出してくれたらいい。

 

できたらどんどん自分を好きになってほしい。自分が好きでない人にいい仕事は出来ない。

◇◇◇ 大阪市立東淀工業高校にて (2017年6月29日)

 

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■ プラズマ、レーザー成功のリーダー

 

「社会に出て大切にしてほしい考え方」をシンプルに語っています。

あらめて読んでみて、教えられることばかりです。

 

「学校時代は勉強が嫌いだった」と言っていますが、私の知るA君はきわめて勤勉でした。

彼が2000年に24歳で入ったとき、私は31歳。

父親(先代社長)を見送った翌年、まだ私自身が右往左往していた時代でした。

 

その2年後、私は社運を賭けた設備投資(プラズマ加工機)を決めます。

A君は新しい機械を必死になって研究し、改良し、プラズマはフル稼働に。

投資は大成功でした。

 

プラズマで稼いだものを、次はレーザー加工機に投資しました。

新工場の建設も含めると投資額は6倍規模に。

その直後、リーマンショックで経営は大打撃を受けます。

そんな危機をものともせず、A君はレーザーを必死に勉強し、機械を使いこなし、そしてレーザーもフル稼働を続けます。

これが業績回復の決め手でした。

 

5000万円のプラズマ、1億円のレーザー。

私が大きな買い物をするたびに、その先頭で奮闘したA君。

機械と対話し、仕事と格闘し、社内の仲間と力を合わせ、そしてプロジェクトをすべて成功に導いてくれました。

 

もちろん彼だけの功績ではなく全社員が一丸となって努力した結果ですが、

彼の傑出したリーダーシップは社内のだれもが認めるところでしょう。

 

■ 頑張る理由

 

A君が頑張った最大の理由は、彼も明言するように家族でした。

入社の時にすでに赤ちゃんがいました。その後2人目、3人目が生まれました。

そして4人目のお子さんを奥さんが身ごもったとき、彼は私に聞きました。

 

「社長、生んでいいですか?」

 

冗談めかしていましたし、当然に冗談に違いありませんが、彼の目は冗談ではありませんでした。

4人の子供をちゃんと育てるだけの給料を持って帰る必要が、彼にはある。

家族に対する責任感が頑張る最大の理由です。

それが、経営者としての私の覚悟をさらに固めました。

 

「こんな小さな会社でもな、社員の家族を入れたら50人以上が飯を食っている」――。
むかし父親がつぶやいた言葉に重なります。

 

A君からはいろんなことを教えられましたし、助けられました。

あの24歳の若者が、まさかこうなるとは。

 

「後生おそるべし」という論語の一節を思い出します。

若者の可能性は無限であり、将来どんな人物に大化けするか分かりません。

 

これが企業経営をしていての最も大きな醍醐味であり、喜びです。

今年の採用活動では、どんな子に会えるでしょうか。

ダイヤモンドの原石に出会えることを、みんなで期待しましょう。

 

2019年8月23日
坂元鋼材株式会社  代表取締役 坂元正三

 

※ 【後生畏るべし】 (こうせいおそるべし) 
自分よりも若い者はさまざまな可能性を秘めており、努力によって将来どれだけの人物になるかはわからない。

相手が若いからといって見くびってはいけない、という戒めの言葉。
出典は『論語』。

 

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