【事実は一つ、解釈は無数】
今日は23日、給料袋のメッセージを書きました。「私と営業」がテーマです。ネガティブだった自分をポジティブに変えていった20年間のストーリーを書きました。
(通算116号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いつも社業への貢献、ありがとうございます。いよいよ年度末です。毎日多くのお客さまに多くのご注文をいただけており、本当にありがたいことです。
当社はこの業界の中にあっては小規模な会社ですが、たくさんのお客さまに恵まれています。世の中の需要動向には必ず波があるもの。より多くのお客さまとお取引いただける状態を作っておくことが、経営の安定には欠かせません。そして一軒でも多くのお客さまのお役に立つことが私たちの存在理由(理念)にかなうこと。だから、いま佐々木さんと私の二人で営業チームを組んで、改めて新規開拓に挑んでいます。
私が入社して今年で20年です。振り返れば、営業にはいろんな思い出があります。
初めは苦い記憶です。2000年代初頭、鉄鋼業界の景気はどん底でした。同業他社との競争が過熱し、値段は安いが質の悪い鋼材が出回りました。当社のお客さまのところへも極端な安値で売り込みがあり、価格差ゆえに当社の仕事は激減しました。その他社製品を見てびっくり。材料の悪さ、切り方の乱雑なこと。当時の私は自社の強みの何たるかがまったく分かっておらず、お客さまの言われるままに値下げ。しかしそんな極端な安値まではとても下げれず。受注量は激減して利益率も悪化。まったくひどい状態でした。
しかし「安かろう悪かろう」の他社製品に満足しなかったお客さまは、やがて当社に戻って来てくれました。この悪戦苦闘のエピソードは私がしばしばお話している通りです。当時の尾和田さんや橋本さんなど伝説の職人が引っ張る現場、そしてそれを支える事務所がキッチリといい仕事を貫いてくれたお陰でした。
「仕事の質は絶対に落としてはならない」――
そう肝に銘じた原点です。
時代は下って、リーマンショックの頃のこと。受注量が激減しました。私はまた付け焼刃のように営業を始めました。新しい見込み客を訪問すると、たいていが大手業者と取引されています。すると必ず「おたくはナンボ?」と、つねに値段勝負です。大手はさすがに製品の質もしっかりしている。かつての「安かろう悪かろう」の業者などとは格も次元も段違い。規模が大きいだけでなく会社も一流で、知名度も財務内容も抜群です。私は正直ひるんでいました。コンプレックスがどうにもぬぐえなかったのです。
そんなころ私は毎朝アチーブメントの青木仁志社長のDVDを見て営業を学んでいました。数カ月に一度は青木社長から直々に学べる授業にも出ました。質疑応答のとき、私はこの大手コンプレックスについて質問してみました。
大手は有名、大手はデカイ、大手はスゴイ、大手は安い・・・。
一方で当社は無名、当社は小さい、当社はちょっと高い・・・。
まったく情けない話です。そんな私に対して青木社長はひと言。
「坂元さん、では質はどうなんですか?」
そうか、質か・・・。
そう考えるとアイデアがいくつも浮かんできました。使っている鋼材は彼らも一流ですが、当社も一流です。国産のミルシート付き一級品しか使いませんから。そして当社のレーザー加工機はドイツのトルンプ社製、プラズマもコマツ。どちらも世界最高峰のマシンです。しかし財務力のある彼らも設備は一流です。
しかし、大事なのはここから先です。それらの材料とマシンを使って仕事をする職人(社員)の質です。当社はベテランの一流職人ぞろいで、少数精鋭です。大手の職人さんも一流ですが、平均レベルでは負けてないはず。
それだけではありません。大手に勝る点がある。それが利便性、とくに短納期(小回り)です。かつて小林正和社長が言ってくれました。「坂元さんとこは難しい要求でも『なんとかでけへんか』と、みんなが寄ってたかって一生懸命に考えてくれる、それがうれしい」と、そんな風にほめてくれました。お客様第一を貫く仕事師の集団、それが坂元鋼材です。不可能を可能にする情熱と才能を持った社員がチームワークを働かせる小さな一流企業なんだ。
そう考えると自信がわいてきました。材料は同点、マシンも同点。しかし使う社員力(現場力、事務所力、総合力)で上回ることができる。それなら価格差はカバーできる。いやトータルでは当社の方がお客さまに利点をご提供できる。大手に負けてへんやん!
私はもう一度営業に出かけました、同じお客さまに再び。
「大手さんはきっと素晴らしい仕事をされていることでしょう。しかし、まさかの短納期で間に合わないことがおありではないでしょうか。そのときのために、ぜひ当社を2社目としてキープしておいてください。必ずお役に立ちます」
そのようにして多くのお客さまを訪問しました。
当社にとって義理のあるA社さん以外の大手のお客さまなら、商売上の気遣いはせずにすみます。いや、私たちは規模が小さくて出来る「量」は知れている。大手さんには痛くもかゆくもない存在です。むしろ「短納期のめんどうな仕事は坂元鋼材が引き受けるほうが業界全体としてプラス」。そんな風に解釈することも出来ます。
私たちがお役に立てるのは、お客さまのまさかの急ぎの時である。そして他社が敬遠したがるような複雑で、要求精度、難易度ともに高い仕事だ。そのための鋼板であり、マシンであり、会社なんだ。お客様の「お困りごと」を解決して差し上げて喜んでいただくこと、それが私たちの目的。その結果でしか利益は頂戴できないのだ。
そんな当たり前のことに大きな自信を持ち、営業活動を展開しました。行く先々で、新しいお客さまが私の話を聞いてくれました。結果、リーマンショック以降の7期連続の増益につながったわけです。
アチーブメントの青木社長から教えてもらった言葉に「事実は一つ、解釈は無数」というものがあります。「事実」は、大手は規模が大きく当社は小さい、大手は値段が安くて当社は比較的高い、大手は有名で当社は無名。これをどのように「解釈」するか。
もし当社はダメだ、値段が高いから門前払いされるに違いない。そう否定的(ネガティブ)に解釈すれば、足はすくみます。「そうではない。うちの方がトータルでの質が高い、だから喜ばれる。お役に立てるのはむしろ当社だ!」。そう肯定的(ポジティブ)に解釈することにより、行動が変わりました。
「考え方・捉え方が変われば、可能性は無限大!」
青木社長の言葉の通りでした。この言葉は値千金でした。
アチーブメントでの教えの一つに「4つの自信」というものがあります。
会社に対する自信
商品に対する自信
職業に対する自信
自分に対する自信
それらが高ければ高いほど、良い営業が展開できます。逆にそのどれかでも低ければ、その考え方が行動にブレーキを掛けます。
皆さんが毎日毎日、精魂込めて打ち込んでくれている良い仕事。それが私にとって「4つの自信」を高め続けてくれています。営業活動にとってのアクセルになってくれています。
いま営業が楽しいのは、私が自社の仕事に自信を持っているからにほかなりません。それを可能にしてくれている皆さんの働きに、あらためて感謝申し上げます。
ありがとうございます。
2018年3月23日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三
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