うちの家は「あなた」が悪い? [給料袋メッセージ 99]

【うちの家は「あなた」が悪い?】

 

きょうは25日。給料袋のメッセージを書きました。
自責の念の話の続編として、子育ての日常から考えたことです。
(通算99号)

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

いつも社業への貢献、ありがとうございます。
今月は、私がよく話題にしているある小学生の作文「うちの家はみんなが悪い」のことから書きます。

 

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きょう私が学校から帰ると、お母さんが「お兄ちゃんの机を拭いていて金魚鉢を落として割ってしまった。もっと気を付ければよかったのに、お母さんが悪かった」と言いました。するとお兄ちゃんは「僕が端っこに置いておいたから、僕が悪かった」って言いました。でも私は思い出しました。きのうお兄ちゃんが端っこに置いたとき、私は「危ないな」って思ったのにそれを言わなかったから、私が悪かったと言いました。夜、帰ってきてそれを聞いていたお父さんは「いや、お父さんが金魚鉢を買うとき、丸い方でなく四角い方にすれば良かったなあ。お父さんが悪かった」と言いました。そしてみんなが笑いました。うちはいつもこうなんです。うちはいつもみんなが悪いのです。
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本当に素晴らしい家族だと感動します。うちもこんな家族だったらいいな。

 

ところが先日のこと。うちの5歳になるやんちゃな娘が居間で走り回っていて、テーブルの上にある私の飲みかけのお茶をひっくり返してしまいました。そして「こんなところにお茶を置くからや!」と娘。あの小学生と何と違うことか。私も私で大人げなく、「なんや、その言い方は。走り回るからやろ!」と、つい大きな声を。「ギャー!」と娘。うーん、なんと情けない。

 

考えてみれば「自責の念」など5歳の子供にまだあるわけがない。大人でも自分の非をキチンと認めることがどれほど難しいか。もともと人間とは「自分は正しい」「相手が悪い」と思い込む存在であることを、あらためて身近に分らせてもらいました。子供とは素直なものかと思っていましたが、なんのなんの。世界一可愛い存在なのですが、もう、意固地になったらテコでも動かない5歳児です。

 

そういう私自身が自己中心的な子供だったし、大人になってもまだまだ、まだまだ自分中心。いまも反省しきりです。いつまでもそうであってはならぬと思い始めると、いろんな言葉が目に入ります。

 

「物質的に恵まれなかった私たち、恵まれすぎている現代っ子。この両者にも共通項はある。技術的に、人間的に『未熟である』ということ」(野村克也)

 

ほかにも「誰もが人生は初めて」「誰もが人生のアマチュア」という言葉にも出会いました。とても勇気づけられます。もともと自分中心で生まれた私たち。それが長じるにつれていろんな失敗をし、そして気づき、反省し、少しずつ成長するしかないのでしょう。

 

私もこれまでの半生でいっぱい失敗しました。経営者としては特に、会社を途中で辞めていったたくさんの元社員への申し訳なさを思います。早期の退社、もしくは数年勤めてもらったにもかかわらず結局は退社となった方々。私の判断、行動が甘かったばかりに、結局は不本意な形で別れざるを得ませんでした。数多くの反省から今は、勤めてもらった限りには別れる時に「ありがとう」と必ずや思ってもらえる会社人生を送ってもらうんだ、と肝に銘じています。

 

毎朝の朝礼で「昨日のミス・クレーム」「ヒヤリハット」を報告してもらっているのも、この反省の心に通じます。人を責めるためでなく、二度と同じ間違いを起さないための情報共有であり原因追究です。当社の顧問税理士・上能先生がおっしゃっていました。
「責め心なき厳しさ、馴れ合いでない優しさ」。いい言葉です。

 

こんな話もあります。私が経営を学んでいる大阪木村塾で、裸一貫から起業して大成功を収めた経営者の話を聞きました。様々な商売を経たのちにインターネット通販で腕時計を売って日本一の会社を作った四十歳台の経営者です。二次会の席で隣に座ったチャンスに聞いてみました。「私は●●だから成功した」という文章には、何が入りますか、と。しばらく考えて、こう答えられました。
「私はつねに反省したから」と。若くして人並み外れて成功した彼にしてのこの言葉、とても感動しました。

 

論語の中にもこんないい言葉があります。
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「君子はこれを己に求め、小人はこれを人に求む」

 

〔ビジネス訳〕身近に発生した問題やトラブルを、自分に原因があったのではないかと省みる材料にして、自分磨きに役立てましょう。周りのせいにしていては、成長できません。
(安岡活学塾編・ビジネス訳論語)
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実はこの論語の一節、娘が幼稚園でもらってきた冬休みの学習用CDに入っていました。幼稚園児が論語を学ぶのだから、大したものです。娘はそらんじて言うことだけは言っていますが、その中身をわかっているのかどうか。でも、いつか大人になった時、その意味することをちゃんと理解できる心に育ってほしいなと思います。そして私も、娘と一緒に親としても成長し、反省できる人間にならねば、と思います。

 

今月もお読みいただき、ありがとうございます。

 

2017年1月25日                 
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三