チリメンジャコ、サバ、マグロ、クジラの話 [給与袋メッセージ 102]

【チリメンジャコ、サバ、マグロ、クジラの話】
今日は3月31日。決算賞与を支給しました。今回の文章ではリーマンショック以後の社内改革のことを振り返りました。
(通算102号)

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

きょうで2016年度も終了です。期初に打ち立てた利益目標を上回りました。速報値ですが(・・・中略=決算詳細)。安定して儲かる会社になり、安全性も徐々に高くなりました。社員の皆さんの1年間の頑張りのおかげです。ありがとうございます。

 

先月、この月給文章が第百号となったとき、これを書き始める切っ掛けを頂いた中井政嗣社長(お好み焼き千房)の著書「できるやんか!」を久しぶりに再読しました。中井社長が大阪・長居で若くして開店した小さなお好み焼き屋ですが、やがて全国展開し、いまや全62店舗にまで拡大しています。しかしその歩みは決して平坦ではなかったそうです。この本で触れられていたのが1991年に道頓堀の自社ビルを作ったときの苦境です。借入金が膨らみ、金融機関から不安視されました。このピンチを社員に正直に説明し、全社一丸となっての店舗運営、定休日の返上、あらゆる経費を節減するなどし、危機を乗り切りました。本にはこう書かれています。

 

「企業が永続するためには十年に一度ぐらいこのような経験が必要です。悪を知らぬ善は脆い、といわれます。苦しい経験のない企業も体質が弱くなるのです」

 

我が社もリーマンショック後の2009年度に大きな赤字を出しました。自己資本が大きく減り、決算賞与も見送りました。このピンチを機に会社を生まれ変わらせようとしました。なにわあきんど塾、中小企業家同友会、アチーブメント、木村塾などで経営を学び、「よい」と言われることは貪欲に取り入れました。

 

まず営業に力を入れました。リーマンショック直前に導入した最新鋭のレーザー加工機を武器にして、新規顧客を増やしました。一度買っていただいたお客さまに我が社のことを気に入ってもらえるよう、皆が最善を尽くしました。品質に妥協せずにいいものを作る。そして同業他社に勝る「短納期」、これに磨きを掛けました。現場も事務所もスピードを重視し、お客さまの短納期要求に全力で応えました。その結果、多くのお客さまに可愛がっていただけるようになりました。

 

社内のチームワークも強化しました。朝礼を始めたのが2009年、経営理念を作ったのも2009年、毎月の学習会を始めたのが2010年、この月給文章を始めたのも2010年、社員旅行を始めたのが2011年。いろんなことがこの時期に始まりました。社内の意識が徐々に統一され、助け合いの社風を醸成していきました。そして4年間見送った決算賞与でしたが、2013年度(2014年3月)に復活できました。この苦しかった4年間に、いまの好業績の基礎があります。

 

振り返るとメンバーも大きく変わりました。2009年当時から在籍の社員は荒川さん、中上さん、前君、前田君と私の5人のみ。小見山さん、橋本さん、塩谷さん、尾和田さん、糸井さんが定年退社。現メンバー14名のうち9名は改革が始まってからの入社です。この新しい社員を迎えるに当たっては採用、面接に力を入れました。以前は私だけだった面接でしたが、社員数名の目を必ず通すことに。会議でも「一緒に働きたい社員像」を明確にしました。この採用活動が会社をまた変えました。

 

それらの結果が2010年度から7期連続の増益です。ありがたいことです。でも企業としての成長は、まだまだこれからです。

 

中井社長の「できるやんか!」に、こんな話が書かれています。最初に始めた小さなお好み焼き屋が儲かり始めた頃のこと、音楽好きの中井社長は最高級のステレオを購入します。店で音楽を鳴らして悦に入っていたところ、同じく料理人だった義兄に怒鳴られます。「ちょっとカネが入ったからといって、いい気になるな」と義兄はステレオを電気屋に返させてしまいます。そして中井社長にこんな話をしました。

 

「チリメンジャコはおいしいけれど、口に入れたらすぐ溶ける。そやからチリメンジャコを餌にしてサバを釣れ。サバやったら一日は食える。でも辛抱せえ。サバを餌にしてマグロを釣れ。マグロやったら一カ月食える。でも、もう一回辛抱してマグロを餌にしてクジラを釣れ。クジラ釣ったら、一生食える。それが “経営”いうもんや」

 

これは我が社にとっても大きな教訓です。また、この本にはこんなことも書かれています。中井社長が丁稚時代に番頭さんから聞かされた話です。「夜降る雪は積もる」という話です。

 

「夜降った雪はなんで積もるのか。答えは簡単や。夜はみんな寝てるやろ。人生もそうやで。才能も能力もカネも学歴も無かったら、みんなが寝ているときに働かなあかん、努力せなあかん。それで才能やカネが積もるんや。それで人生勝てるんや――」

 

中井社長は「やったもんだけ残れる時代」と言っています。リーマンショックを経て我が社は確かに変わりました、強くなりました。でも、まだまだこれからです。もっともっといい会社、強い会社を目指してまいりましょう。そして「いい人生」に致しましょう。

 

2017年3月31日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三