【事業を上手くできて50%。ちゃんと継承できて100%】
月給袋のメッセージ。
先月に引き続き、全国から学びを同じくする経営者を我が社にお迎えした勉強会のことを取り上げました。
テーマは「事業承継」。
人間の寿命には限りがあるが、企業の命は理論的には永遠たりうる。
しかし、どうすれば、そうなれるのか。
生涯を掛けて、その問いに挑んでまいります。
(通算74号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
いつも社業への貢献、ありがとうございます。先月に引き続いての話題です。
学びを同じくする経営者仲間が全国から我が社に集ってくれた4月の自主勉強会のことです。
アチーブメント理念経営塾の出身者が持ち回りで各地の仲間を訪ねて歩くこの会では、前半がホスト役、つまり私の経営報告でした。
私は2代目社長の長男として生まれ、その後継ぎと目されていました。
しかし両親や祖父母、それに恐らくは当時の社員さんたちの期待にも背いて、20代前半に家を飛び出し、個人的な夢を目指してひた走っていました。
ところが思いがけず父が61歳という年齢で膵臓がんに。
当時28歳だった私は観念し、詫びを入れて帰郷。
病後の父から商売と仕事を仕込まれるものの、父は翌年に他界しました。
29歳で3代目を継いでから16年間の私の経営者としての悩み、苦しみ、束の間の成功、再びの逆境、そして現在に至る自己改革、社内改革の軌跡を話しました。
そして自主勉強会の後半は、その土地ゆかりの講師によるセミナーです。
ホストとして講師の選定を任された私がお願いしたのは、大阪産業創造館の山野千枝チーフプロデューサーでした。
弊社の大石君を有名にしていただいた「ゲンバ男子」を始め、数々の仕掛けで私たちを元気づけてくれる中小企業の応援団長です。
山野さんには「事業承継」をテーマに講演していただきました。
究極の経営課題です。
重要だけれども緊急ではない、いわゆる「第2象限」中の第2象限です。
日本の企業は、多くが同族企業です。
中小企業だけでなく大企業でもみられます。
最近ニュースになった大塚家具もそうです。
一族経営には、それゆえの問題はあるものの、経営が長く続く秘訣にもなっています。
世界的に見ても「百年企業」の多くが日本に存在します。
山野さんによると「後継者不在」を理由に休廃業する会社は年間2万6000社にも上ります。
その数は倒産の2・6倍。この数字にはびっくりしました。
後継者さえいれば続けていくことができた企業が、倒産して消えてゆく企業よりもずっと多いのです。
なんともったいない、惜しいことか。
しかしこの私自身がかつては家業に目を向けなかった過去を持ちます。
父の病の折、もし私が帰郷せず、社内にも後継者がいなければ、坂元鋼材も第48期で廃業。
このパターンに入っていたわけです。
課題は今後です。
私は残りの人生を賭してこの会社を発展させるのが使命(文字通り、命を使ってすること)と考えています。
しかし、その後をどうするか。
我が社はいま64期。36年後の2051年に迎える第100期を大きな目標にして経営を進めています。
その時に私は82歳。
当然、そのずっと前に社長のバトンを渡さねばなりません。
それは誰か。そしていつか?
親族という意味では、私にも娘がいますが、まだ余りにも小さい。
女性経営者が活躍する現代ですが、まだ3歳の娘の将来をいまから規定するわけにもいきません。
なによりも長男で生まれたこの私自身が若いときには将来の夢を自由に描いていたわけです。
娘には娘の自由がある。
一方、社員の立場になってみると、「経営者の血縁」という理由だけで次の経営者が決まるというのも、心底から納得できるものではないでしょう。
現実には経営者が銀行借り入れの保証人になるケースが多いこと、株の所有などから、経営者の一族から次の経営者がでやすい。
同族承継が多いことの理由です。
ほかにも、小さいころから経営者である親の背中を見て育ったという環境も大きいようですが。
企業の将来には四つの道があるそうです。
まず「同族承継」。そして血縁以外の社員が経営者になる 「社員承継」、あるいは外部の企業に譲り渡す「M&A(統合・合併)」。最後に「廃業」です。
廃業は論外として、道は3つです。いずれにしても坂元鋼材という会社は将来にわたってずっと発展し、お客様に喜ばれ、そして皆がメシを食える会社であり続けねばなりません。
今回の勉強会では、そのヒントとなる素晴らしい言葉をいくつも聞きました。
「会社は社会の公器」
「先祖から、そして子孫からの預かりもの」
塾生の濱本義弘社長(やまもと住研=広島県呉市の住宅建設業)の一言にもしびれました。
「我が社の商品は、寿命が人間の寿命よりも長い。事業承継はお客様への責任」
そして、この塾の塾長である阿部洋己先生の言葉が、きわめて明快でした。
さすがに大企業(キリンビール)出身の先生であるからでしょうか、まさしく正論です。
「最も経営力の優れた者に任せること」
ゲストとしてお越しくださった尊敬する恩師・木村勝男会長(木村塾)の言葉も本質的です。
「事業を上手くできて50%。ちゃんと継承できて100%」
私はまだその50%に至る道程ですが、その先の長い道のりを強烈に意識しました。
今回の学びのご縁をいただいたアチーブメントの青木仁志社長の言葉を、改めて思います。
「何が本当に正しいのか? 経営とは衆知によってそれを追求する旅である」
社員の皆さんと一緒に仕事をし、そして語り合い、その中でゆっくり、じっくりと答えを探してゆきます、人生を掛けて。
何が本当に正しいのか。
今後もお力をお貸しください。
2015年5月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三
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