「うちの家はみんなが悪い」 = 自責の念を考える [給料袋メッセージ95]

【うちの家はみんなが悪い】

 きょうは25日。給料袋の文章を書きました。(通算95号)
 
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
 
今月も会社ホームページの「社員紹介欄」からの続きです。若手の女性3人のことを書いてみます。

 

一橋さんは入社の面接時に私たちが気づいた通りに図形・空間への把握力が確か。CAD班の重石となってくれています。
「私たちが確認した図面データはそのまま現場に行くので、ここは言わば最後の『とりで』」
「もしミスを見落してしまった場合、往々にして納品後その商品をお客様が使うときになって発覚します。すると後加工の段取りや納期などでお客様に多大なご迷惑をお掛けしてしまいます。ミスやクレームには最優先で対応して挽回しなければなりませんので、社内にも混乱をきたします」
「『ミス・クレーム=ゼロ』を心がけています」。
これらの発言の一つ一つが、一橋さんの冷静沈着な性格、責任意識の高さを物語っています。

 

脇田さんも入社二年半になりました。
「図面を正確に読み取り、お客様のご要望をカタチにしていくため、電話やファクスで何度もやり取りすることがあります。そうして最終的にお客様の求めるものが出来上がったときには大きなやりがいを感じます」
「日々の仕事では、こちらからお客様に図面の不明点などについてお問合せをさせていただくことがあります。そうした際、お客様から『細かいところまで、よー見てるなあ!』などと、お褒めの言葉を頂くことがあります。私自身とても嬉しく、そのようなお言葉をすべてのお客様から言っていただけるようになっていきます」
その仕事の丁寧さ、心配りの細やかさが伝わってくるエピソードです。新卒として我が社に来てくれた脇田さん。このまま立派な仕事人に育ってほしいものです。

 

事務所の大黒柱だった糸井さんが定年退職されたのが今年の春。勤続三十年の糸井さんの退職前には、やはり不安がありました。私も含めて社内全員が糸井さんに多くを頼ってきましたから。その大きな職責を引き継いでくれたのが中本さん。
「入社当初は知らないことばかりだったのですが、いまでは鉄鋼の知識も増え、お客様からいただく図面を読み取る理解力も高まったと実感しています」
「しかし、鉄鋼業界のことや会社の業務など『まだまだ学ぶことがたくさんある』と感じます。これからは現在行っている営業事務のスキルにさらに磨きをかけていき、ゆくゆくはCADなど他の部署の業務も経験していきます」
鉄鋼の専門用語、業界の知識の取得などに余念がありません。その向上心にあふれた姿勢は見事です。お客さまへの対応力も秀でていて、これからがますます楽しみです。

 

事務所の業務は、工場での鋼板切断に至る前段階。受注処理、そしてCAD・CAMは「現場の仕事と『車の両輪』のような関係」(一橋さん)です。毎日大量に処理する注文点数は、CAD入力の図面だけでも1日で百件以上です。複雑さ、難易度、費やす労力や時間は一つ一つ違いますが、あらためて大変な苦労だと感じます。

 

そして、ときに「受注ミス」「作図ミス」があります。ミスに至る原因はさまざまです。数字の読み間違い、注文書の隅に書いてある小さな指示の見落とし、うっかり(思い込み)など。時には、お客さまから頂く指示の内容が不明確だったりします。その時に「おや?」と気づき、お客さまに的確な問い合わせができるかどうか。経験の蓄積、そして注意力・集中力が問われる瞬間です。数字は正直ですし、小さな穴ひとつが欠けていても不良です。当たり前ですが、仕事は厳しいもの。返品、最速での再切断対応となります。そんなとき、彼女たち3人が暗い顔をしてやってきます。「社長、すみません・・・」

 

会社が掲げている「ミス・クレーム対応の原則」には、次の2項があります。
「クレーム(ミス)の発生者責任は追及しない。ただし報告・連絡を怠ってはならない」
「責任を追及するのでなく、原因を追究する。目的は再発防止」
誰も失敗しようとして失敗しているわけではなく、みんなが真剣に業務を遂行してくれています。だから責任「追及」でなく原因「追究」としています。それでもミスの当事者になると、責任を感じるものです。その及ぼす影響を金額換算したりすると、ビックリするものです。

 

そのように彼女たちが「すみません」と来るたびに、次の話を思い出します。以前にも何回か紹介した、ある小学生の作文「うちの家はみんなが悪い」です。

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きょう私が学校から帰ると、お母さんが「お兄ちゃんの机を拭いていて金魚鉢を落として割ってしまった。もっと気を付ければよかったのに、お母さんが悪かった」と言いました。するとお兄ちゃんは「僕が端っこに置いておいたから、僕が悪かった」って言いました。でも私は思い出しました。きのうお兄ちゃんが端っこに置いたとき、私は「危ないな」って思ったのにそれを言わなかったから、私が悪かったと言いました。夜、帰ってきてそれを聞いていたお父さんは「いや、お父さんが金魚鉢を買うとき、丸い方でなく四角い方にすれば良かったなあ。お父さんが悪かった」と言いました。そしてみんなが笑いました。うちはいつもこうなんです。うちはいつもみんなが悪いのです。
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彼女たちがミスの報告に来てくれるたび、この話を思い出します。そこに自責の念を感じながら報告をしてくれることに、いつもいつも、こちらが申し訳なく思っています。日々の丁寧な仕事ぶり、そして社会人としての成長に感謝します。いつも、ありがとうございます。

 

2016年10月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三