愚直に、真っ当に [給料袋メッセージ112]

【愚直に、真っ当に】

 

きょうは冬の賞与の支給日。社長メッセージを書きました。中小企業はどのようにして生き残るべきか。先日当社で行われた同友会の例会から考えました。
(通算112号)

 

■■■■■■■■■■

 

社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

いつも社業への貢献、ありがとうございます。今日は冬の賞与の支給日です。会社が順調なことに感謝する一日です。ありがたいことです。

 

先日、当社の工場で中小企業家同友会の例会を開催しました。社員の皆さんの協力のもと、成功裏に終えることが出来ました。ありがとうございました。

 

同友会の例会は、普通はどこかの会館やホールで行うもの。工場での開催は異例でした。そして「九条」という地域を論じました。九条は大都会のど真ん中にあって、いまも中小製造業の集積する全国的にも珍しい地域です。中小企業を知るという意味では最もふさわしいエリアといえます。

 

地元ゆかりの経営者5人によるパネルディスカッション形式、これも異例でした。それぞれルーツは別の 地域だったとしても、九条にやってきて商売やモノづくりに従事した会社ばかり。戦前に来た会社、戦後の苦しみを乗り越えた会社、地域に根差した商店、九条での経験をもとに拡張した会社。製造業から小売業まで、多彩なパネラーが口々に地域と自社を論じました。

 

九条に生まれて48年になる私が思うのは、やはり企業の栄枯盛衰です。規模の大小を問わず多くの会社が生まれ、栄えました。そして消えた会社、いまも九条に根を張って継続している会社、手狭になった九条を出て他の地域でさらに発展する会社など、企業の運命はさまざまです。

 

消える会社、永続する会社の差はどこにあるのでしょうか。今回の例会のテーマも「生き残り」でした。

 

私たちパネラーの5人に共通だったのが「つぶしたらアカン」という強烈な思いでした。全員が後継者です。先代や創業者の苦労を直接、間接に知り尽くしています。5人のそれぞれの話には、創業して継承してきた先祖への思い、長い歴史をつないでくれた先人への感謝が込められていました。

 

「地域密着」というキーワードで分かりやすかったのは、食品スーパーの「フレック九条」さんです。もともと公設市場だったので、九条のお母さんたちに支えられてきた地場のスーパーです。私も幼少のころから馴染みがあり、いまも家族で通っています。そのフレックさんもご苦労されておられました。近年あいついだ大手スーパー(イオンやライフ)の進出です。地域密着が強みのフレックさんは、お母さんたちの声を聞き続けました。すると「子供を幼稚園に送ってそのまま買い物に行きたい」という要望がありました。それまでは10時開店でしたが、お母さんたちのために1時間早めて9時開店にしたそうです。また、月に1度は日曜日を休みにしていましたが、「開いてんのか、閉まってんのかわからへん」という声が。そこで社員ローテーションを工夫しながら、すべての日曜を営業日にしました。そんな努力の結果、大手の進出前よりも業績が上がったそうです。中小企業の心意気、ここにあり。

 

そのフレック岩田社長の発言がまた素晴らしいものでした。岩田社長は社員との面談を重ねる中で、いろんな不満を聞きました。聞き続けるのは本当に辛かった。しかし「自分が気づけへんことを教えてもらったんや」と、いつしか捉えることが出来た。そう語られました。地域密着、社員重視の岩田社長の姿勢に感動しました。

 

鉄鋼業界でも多くの企業がさまざまな歴史を刻みました。かつて九条に10社以上あった溶断業者も次々に姿を消しました。私にとって最も印象的なのは、当社よりも規模のはるかに大きかった「●社」の廃業です。同社がかつて極端な安値で当社の得意先に営業攻勢をかけたエピソードは、かつてここでも書きました。粗悪な材料をいい加減な切り方で(それも自社で作らずに下請けをさらに安値で泣かせて)。だから、初めは値段に飛びついたお客さんも、やがては品質に不満で当社に戻って来てくれました。悪い仕事をすれば、会社は無くなります。付加価値の高い仕事をすること。そうでなければ選んでいただけない。そのことを肝に銘じて、当社は真っ当で正しい仕事をし続けます。愚直ですが、それが生き残る道です。

 

私たちが扱っている素材は国内の一級品ばかり。レーザーなどの加工機も最高級のマシンです。しかし、材料も設備もお金を出せば誰でも買えます。資金力の豊富な大手ならなおのことたやすい。では、何で「違い」を作るか。それが社員の力だと思います。うちのファンでいてくれた小林鋼業の正和社長がかつて言ってくれました。「坂元さんとこは『絶対無理!』みたいな短納期でも『なんとか出来ひんか』とみんなが集まって知恵を絞ってくれる。それが嬉しい」。いまとなっては宝物のようにありがたい言葉です。

 

お客さんの要望を叶えようとする気持ち、ひと手間を惜しまずいいものを作り続ける正直な姿勢。その日々の努力の積み重ねが、会社を存続させる最大の原動力だと思います。きょう分かち合う賞与の源泉は、お客様から頂戴する代金に入っており、お客様から頂く信頼の中にあります。いつも当社を支持してくれるお客様に感謝し、そしてお客様の信頼をつなぎ続けてくれる社員の皆さんに感謝します。ありがとうございます。

 

2017年12月8日               
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三