超長期の終活 [給料袋メッセージ 184]

【超長期の終活】

きょうは25日、給料袋のメッセージを書きました。
成し遂げるべきビジネスの目標をまとめました。
[通算184号]

 

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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ

 

いつも社業への貢献、ありがとうございます。

 

先月は私の誕生月で、満53歳となりました。

まだまだ若いと思っていますが、客観的には立派な中年です。

いろいろと思うことがあります。

 

まず人生の半分は折り返していること。

男性の平均寿命はまだまだ先ですが、

経営者として現役でバリバリとやるには期限があります。

 

私は82歳という年齢を一つの区切りにしています。

それは2051年で、会社は第100期となります。

生涯現役のつもりですが、この年齢が一つの節目です。

 

■ 百年後も続く企業

 

ほぼ30年後(29年後)の第100期は大きな企業目標です。

永続する企業の代名詞である百年企業になります。

 

しかしそれは通過点でしょう。

いま20代の社員なら、まだ50代です。最年少社員のA君、B君がちょうど50歳です。

働き盛り、稼ぎ盛りです。

 

だから私たちの言う百年企業とは

「100年先も存在しつづける企業」ではないでしょうか。

 

私が常に求めている価値観は「永続」です。

社是と言ってもいい。

 

これは過去に様々な他社の「つまずき」を見てきたからです。

有名企業しかり、あるいは同業者や近隣でよく知る会社もしかり。

 

どんな不況でもビクともしない会社を作る。

どんな事態になっても生き残る会社を作る。

そのために中長期の視点で考え、そして行動します。

 

 

 


 

 

 

■ 私にとっての終活

 

私はいま53歳ですが、先代社長だった父は62歳で他界しました。

すい臓がんが判明して、1年であっけなくこの世を去りました。

もし同じ寿命なら、私は残りわずか9年です。

 

生命保険会社の人に教えられました。

60歳の誕生日を迎えることができるのは確率的に10人中9人だそうです。

しかし60歳を超えてからの死亡率が徐々に高まるということ。

 

だから、何よりも健康に留意して長生きを心がけています。

 

そして私に万が一のことがあっても会社が健全に存続すること、

社員の生活が守られること。

その準備を粛々と進めています。

 

ビクともしない会社にするべく自己資本を貯め続けているのは、皆さんご存じの通り。

生命保険もしっかりと掛けています。

 

しかし、お金だけで会社が守られるわけではない。

 

その最悪に近いパターンを頭の片隅に入れつつ、

29年後の100年企業づくりを目指して、超長期のプランを準備しています。

 

私にとっては、死の準備とも言えます。

「終活」という言葉がありますが、30年かけての超長期の終活です。

 

それには大きく3分野(ひと、モノ、カネ)があります。

 

■ 「持ち主」は1人、安定の株主構成を

 

まずはお金です。

 

自己資本を貯め、盤石な経営を目指すことは基本です。

キャッシュ・リッチな会社にすること、

これも極めて重要です。

万が一に備えて適切な保険に入ることも大事です。

 

でも、それだけではありません。

 

株式会社である以上、その所有者は株主です。

それが安定した体制であるかどうか。

株が分散していないか、不安はないか。

 

「会社はだれのものか?」という古典的な問いがあります。

 

法律的には「株主のもの」です。

 

会社とは

社員「のため」のものであり、

顧客「のため」のものであり、

社会「のため」のものではありますが。

 

事実は株主の持ち物です。

 

株式が分散していることは経営の不安定要因です。

いろんな中小企業、オーナー企業を見ていると、

ここに不安を抱える会社が見てとれます。

 

当社の場合、いまから20年近く前(私が3代目を継いでしばらくしたころ)、

親戚に分散していた株を私が個人で買い集めました。

相応の金額がかかりましたが、正解でした。

 

この総仕上げとして、絶対に株式が分散しないシステムを作ります。

いま持ち株会社を作ろうとしているのは、そのためです。

 

■ 追われる町工場?

 

次に、モノ。

 

 

この場合は工場です。

かねて検討してきた第2拠点づくりです。

 

数年前の日本経済新聞に印象的な記事が載りました。

「追われる町工場、再び」という見出しでした。

 

東京・都心部の町工場が取り上げられていました。

工場の密集地が徐々に住宅地と化していき、

共存が難しくなった工場が郊外に追い出されるというストーリーでした。

 

まさに当社の立地する九条地区を想起します。

大阪の鉄鋼業の中心地でしたが、

昭和の高度経済成長の時代にすでに多くの企業が九条を離れました。

 

当社のように九条に残り続ける工場もまだまだ多いのですが、

近年の街並みの変わりようは驚くほどです。

 

工場が廃業・移転になると、区画が大きいのでマンション建設には好都合です。

まさにマンション・ラッシュです。

それが工場との共生を困難にする要因になりつつあります。

 

当社も事業拡大、そして老朽化対策を考えて工場用地を探し続けていますが、

地価高騰のために近隣での土地取得は極めて困難です。

 

20年後、50年後を考えると、第2拠点は九条以外の遠隔地を模索せざるを得ない。

これがまさに「モノ」たる工場についての、中長期の計画です。

 

土地の大きさ、価格、将来性、利便性、

そして社員がついてきてくれるかどうか。

 

 

さまざまに異なる条件を最大に満たす解を考え続けます。

 

■ 人を育てる

 

そして「ひと」です。

 

いくらお金が潤沢にあり、株主構成が完璧で、工場が万全に整備されていたとしても、

それを動かす社員、率いる幹部が育っていなければ会社は成り立ちません。

 

23年前に父がなくなったとき、私の姉(長姉)がこう言いました。

 

「これでお父さんが長年苦労して得た知識も経験も消えてしまった。

正三に伝えることができない。正三も相談することができない」

 

その通りでした。

 

父は23歳で結婚して坂元家と養子縁組し、坂元鋼材に入りました。

それからの40年間、商売人、鉄鋼マン、経営者として実績を積みました。

私たち3人のきょうだいを育ててくれました。

中小企業経営者としても父親としても、さまざまな知見を身に着けました。

 

父不在で経営者になった私にとって、相談したかったことがどれほどあったか。

私の狭い了見で判断した結果、間違ったことも数々でした。

 

そうです。

この判断力こそが、ときに成功に導き、ときに失敗を招きます。

 

バブル崩壊後、数々の企業が破綻しました。

大手証券会社、都市銀行、有名企業などの大型倒産は、

どこかで重大な判断ミスがあったからです。

 

この10数年間、私は私自身の成長のためにさまざまな自己投資を続けてきました。

それは今後ももちろん継続します。

 

しかし会社の永続を考えると、もっと社員一人一人への教育投資の必要性を痛感します。

私がいなくなることを想定し、人材育成にさらに本気で取り組むことを

自分の年齢を考えて心新たにしています。

 

 

 

 


 

 

 

■ 第2象限のなかの第2象限のなかの第2象限

 

タイムマネジメント(時間管理)の考え方でいつもお伝えしている通りです。

 

緊急ではないが重要なこと、すなわち「第2象限」に取り組むこと。

そのなかの第2象限、さらにそのなかの第2象限。

それこそが、私にとっては上記の3分野です。

 

それをやらない理由は、いくらでもあります。

いまこれに着手しなくても、会社は巡航速度で進んでいます。

今期も過去最高益のペースです。

表面的には問題はなさそうです。

 

しかし、この緊急ではないが重要なことに取り組まなければ

会社の近未来はありません。

 

第2象限のなかの第2象限のなかの第2象限。

 

そこに正面から向き合わなくても――

1年は大丈夫なこと

3年は大丈夫なこと

5年は大丈夫なこと

10年は大丈夫なこと

20年は大丈夫なこと

 

さまざまです。

 

 

いま私が挙げた3つのことは、

5年ないし10年は放置していても恐らくは大丈夫でしょう。

 

 

しかし20年を考えると、絶対に取り組まなければならない。

 

「難しいからやろうとしないのではない。やろうとしないから難しくなるのだ」
これは古代ローマの哲人セネカの名言です。

 

まさに、私のことです。

 

私は「先延ばし」の名人です。

夏休みの宿題のように、

切羽詰まらないと真剣に取り組まないという弱い性格の持ち主です。

そんな私ですが、年齢的にもうかうかしていられません。

 

■ 一個人として

 

さて、社員の皆さん一人一人も、自分という人生の経営者です。

 

「自分株式会社」の社長として、

ご自身の人生をどのように運転しますか?

 

どこを目指しますか?

 

誰とともに歩みますか?

 

何を成し遂げたいですか?

 

逆に、こうにだけはなりたくないという未来は何ですか?

 

社員の皆さんにとって、

第2象限のなかの第2象限のなかの第2象限は、なんでしょうか?

 

普段は考えずとも生きていけます。
しかし放置しておくならば、やがてそれらは問題となって顕在化します。

 

そんな目に見えない課題を意識すること。

そして取り組むこと。

 

 

 


 

 

 

私も同様です。

 

家庭人としては、それが子育てだと痛感します。

長女11歳、長男6歳。

この二人の子供を立派な人物に育てること。

すなわち家庭経営であり、人生経営です。

 

53歳でも、まだまだ人生の入口にすぎません。

超長期の終活をやり終えて、あちらに行きます。

 

2022年10月25日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三

 

 

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