【コロナに「感謝」できる日まで】
きょうは24日、給料袋のメッセージを書きました。
コロナで自粛の続く中、「コロナ後」にそなえて粛々とやるべきことをやり続けることの大切さを実感します。
(通算148号)
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社員の皆さん、ご家族の皆さんへ
この4月から高校新卒のA君とB君の2人を新入社員として迎えました
これまで長きにわたった採用活動の中で我々が探し求めた理想のイメージにピタリとはまる2人。
ダイヤモンドの原石です。これからの成長と活躍を期待しています。よろしくお願いします。
■ 歴史的な転換期
折しも世の中はコロナ禍でたいへんな様相です。当初、正直なところ事態がここまで悪化するとは思いませんでした。中国や韓国で疫病が流行り、それが日本にも飛び火してきたかと思うと市中感染、一斉休校、そして緊急事態宣言。まさに社会が急変する歴史的な転換期に入ってしまった。当たり前だった価値観や行動様式が大きく変わりました。
たとえコロナが終息しても社会のありようは「コロナ前」と「コロナ後」に分けられるでしょう。
被害が急拡大していくこの様相を見て、社員のCさんがかつてお祖母さんから聞いたという話に得心しました。
75年前に終わった戦争のことを振り返ってのことです。
「海の向こうで兵隊さんが戦っておられると思っていたら、戦局は徐々に悪化。気が付いたら身の周りが空襲で焼かれていた」
■ 当社「初」の在宅勤務
戦火ならぬ疫病ははまだ拡大の勢いです。先々週末には「出勤者を7割減に」という政府の要請が出ました。これには困りました。真剣に考えてみましたが、我々のような製造業(大型の機械を使って大きな鉄板を加工する業務)としては、工場で人が仕事をするのが必須。オフィス(事務所)にしても据付の専用パソコンを使っての業務で、工場とも緊密な連携が求められます。どちらも「在宅」でできる仕事ではない。
社内で知恵をしぼったところ、社員を「2チーム」に分割するのがやっとでした(出勤者5割減)。これでも、この数年間すすめてきた「多能工化」により1人で多くの業務が出来る社員を育成したからこそ出来る領域です。
現時点でできること、感染防止と生産力の維持を総合的に考えました。広い工場で過密にならないことを考えて、今週の21日から電車通勤の4人を「在宅勤務」にしました。
新入社員の2人も在宅組です。新社会人として新たに出発したばかりですが、いきなりの事態に遭遇して戸惑うことでしょう。みんなで力を合わせて、荒波を乗り越えてゆきましょう。
先月にも書きましたが、政府系金融機関へ借り入れを申し込み、当座の現金を増やしました。当座貸し越し(いつでも借りれる枠)と合わせ、固定費(給料や家賃など)の1年分はキャッシュを積んでいます。事態が収まるまでは粛々と出来ることにフォーカスしてまいりましょう。
■ 「コロナ後」にどうありたいか?
当社にとって初めての在宅勤務となった4人には大きな役割があります。実際のところ、自宅でできる「業務」は極めて限られます。タップリとある時間をどのように使うか。ここが知恵の見せどころです。
また4人だけに限らず、週末は皆が在宅で自粛です。この大きな時間をどう使うか。大事なのは「コロナ後」です。収束の時期は不明ですが、半年後、1年後にどんな自分になっていたいか。そのイメージに向かって、この時間をどう使うかでその後の人生が変わります。
一番怖いのは、この時期を「無価値」に過ごすこと。コロナ中にしていたことが、コロナ後に問われます。個人も、会社も、そこで差が出ます。
在宅勤務の4名には将来の成長のための自己鍛錬を依頼しました。鉄鋼の専門知識を深め、それを仲間に教えることのできるレベルまで高めること。さらに簿記、営業、ビジネスマナーなどの知識習得。対人関係スキル、パソコンスキルの向上などです。新人2人にはいずれ受験するクレーン運転士の勉強も課しました。
学びたいと思っていてもつい後回しになりがちなことが出来る、絶好の機会です。「重要だが緊急ではないこと」(第2象限)を思う存分に出来る貴重な時間です。
■ ZOOMという新しい学びのツール
さらに在宅勤務チームの4人と私で始めたのが、毎日1時間の特別勉強会です。とくに新人2人はせっかく社会人となって入社したのに、在宅で一人というのもさみしい。外部の新人研修も延期された。ならば自前でやりたい。
いまテレビ会議システム「ZOOM」を使って5人でやり取りしています。コロナ騒動で大きく普及したのがこのテレビ会議。まさか自宅にいる社員相手にパソコン越しに勉強会をするなど思いもよりませんでした。しかし慣れてみるとZOOMの便利なこと。4人もすぐに使いこなし、おかげで遠隔地からも朝礼に出席。まさに画期的です。
勉強会の教材には、この「給料袋メッセージ」の過去のテキストを使っています。ウェブ上に私のブログ(日記)があり、そこに過去の文章をたくさん載せています。1日2本を事前に読み込んでもらい、ZOOM越しに意見交換という流れです。今日までに4回の勉強会(8本のテキスト)を終えました。
「若者、恐るべし」 No.138 (2019年8月)
社員のD君(工場長)が工業高校で講演したもの。働く姿勢についての彼の持論。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/443-2/
「努力は足し算、協力は掛け算」 No.143 (2020年1月)
社員の多能工化によって「完全週休2日」が実現、それは採用活動を有利にする狙いでもあった。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/454-2/
「働く幸せ」 No.123 (2018年8月)
2年前の新人採用の失敗を振り返り、そして働くことの意義を考える。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/123-3/
「社長は人を見る目がない = 私の採用論」 No.137 (2019年7月)
採用に失敗し続けた過去から、採用へのこだわりが生まれた当社のヒストリー。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/442-2/
「ひとは2度死ぬ」 No.113 (2017年12月)
45歳で早世した親友(当社の顧客でもあった)を偲んで、命の尊さを考える。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/353-2/
「命の使い途」 No.126 (2018年11月)
社員のお父様、親友、私の父。3人の他界を振り返り、時間(=命)の大切さを考える。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/408-2/
思いの原点 その① = 先代・先々代のご苦労 No.101 (2017年3月)
経営に掛ける思いの原点とは何か、その1つ目は先祖のご苦労、だからこそ永続発展を誓う。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/300-2/
思いの原点 その② = クオリティへのこだわり No.108 (2017年8月)
思いの原点の2つ目は「仕事の質」へのこだわり、それは悔しかった過去のエピソードにある。
http://sakamoto-kouzai.co.jp/blog/323-2/
■ いまこそ理念浸透の好機に
これらの内容を選んだのは、2人の新人にこの会社を理解してもらいたいからです。
会社の成り立ち、歴史、過去の紆余曲折、上手くいかなかった経験、そこから学んだこと、だからこそ大切にしたい考え方。さまざまな過去があって今があります。経営者として私の至らなかったことや、採用で失敗し続けた過去も正直に書いてあります。
数々の問題があり、それを皆の力で少しずつ克服して、いまのよい会社がある。「よい会社」というのが自然にポンとそこにあって、いつまでもよい状態のままで固定されるということなどあり得ない。いくら良くても一瞬で悪くなることもある。皆で「よい会社をつくろう」と不断の努力をすることで、辛うじて維持されるもの(民主主義に似ています)。
それを理解してもらい、ともによい会社にし続ける同志になってもらいたい。その思いから選んだテキストたちです。
新人2人は秀逸な感想をいくつもくれました。とくに自分たちが採用されるまでに至る経緯にはピュアに反応してくれました。
[A君]
僕とB君を採用するまでの負担が大きかったんだということを肝に銘じる。いち早く先輩の技術を吸収して戦力になって、「雇ってよかった」と言ってもらいます。先輩の仕事を自分が出来るようになっていけば、先輩が安心して有給休暇を取れるようになる。早く頑張りたい。
[B君]
これを読んで面接がメッチャ長かった理由が分かりました(面接は2時間)。高校の先生も「そんなに時間が掛かるとは思わなかった」と言っていました。友達に聞いてもそんなに長い面接の会社はなかった。また「どんな社員と働きたいか」という理想像が書かれて、そうなれるかどうかわかりませんが、頑張ってそうなっていこうと思います。
■ コロナに「感謝」できる日まで
4回の勉強会をしてみて思うのは、この自粛期間は「理念浸透の絶好の機会」ということです。世の中が危機感に包まれるいまだからこそ、人生の目的や経営の在り方など、根本になる考え方を深掘りすることができます。大切にしたい価値観を共有して深めること、それに勝る新人研修はありません。
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」――。
マラソンの高橋尚子選手も座右の銘にされているというこの言葉に、このタイミングでとても共感します。
12年前のリーマンショックで苦境に陥った私は、緊急融資を申し込むために信用保証協会の長蛇の列に並びました。そのときに目にしたのが「なにわあきんど塾」のパンフレット。その若手経営者塾のカリキュラムを見て、自分に欠けていたのは経営の学びだと気づきました。それが経営改革のスタートでした。
それから12年間、さまざまな学びを取り入れて試行錯誤し、会社を強くし続けました。
リーマンショックがあったからこそ、いまのよい状態があります。コロナショックを迎えるための準備がなんとか間に合った、そう実感します。リーマンショックに感謝です。あの時につまづいて、気づけて良かった。
アチーブメントの青木仁志社長がいつも口にされています。
「あらゆる逆境には、それと同等か、いやそれ以上の学びの種が入っている」
いずれコロナが収束したとき「コロナに感謝」できるよう、いまの時間を大切に過ごしてまいりましょう。
そして何より、ご安全に。
2020年4月24日
坂元鋼材株式会社 代表取締役 坂元正三
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